以前, といっても2015年に書いたのはコチラ
当時SPRINT trialが発表され,
それまでは目標血圧は130~140程度でよいのではないか,
それ以上 下げると腎障害のリスクや, 高齢者では転倒や失神が増えるのでは,
とされていたところ,
このStudyにより, しっかりと下げることが血管アウトカムの改善につながる, というセンセーショナルな話題が広がった記憶がある.
それでも, やはり下げすぎることの不安もあり, 大きくは流れは変わっていないように思える.
可能ならばIntensiveに下げよう, という感じで.
そもそも薬剤が多い, 副作用リスクが高い高齢者では正直血圧をIntensiveに管理するのは難しいことが多い現状もある.
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今回, 高齢者における血圧目標値を比較した中国からの大規模RCTが発表された.
(DOI: 10.1056/NEJMoa2111437)
STEP: 高齢者における血圧の目標値を評価したRCT
中国におけるRCT. 60-80歳の高血圧患者を対象とし, 目標血圧sBP 110-120台mmHg vs 130-140台mmHgに割り付け心血管イベントリスクを比較.
・患者は60-80歳の高血圧患者で, 3回のスクリーニング受診でsBP 140-190mmHgを認めた患者, または降圧薬を開始する予定がある患者群を対象とした.
・脳卒中の既往がある患者は除外
母集団
・年齢は60台が主
・腎障害は2%台
・DM合併が2割弱 HLは1/3程度 心血管疾患は6%強
・FRS≥15%は2/3
両群の血圧の変化
アウトカム
・フォロー中央期間は3.34%
・心血管イベント(脳卒中含む)は3.5% vs 4.6%で, 有意にIntensive treatment群で低い結果.
・アウトカム詳細別でみると, Stroke, ACS, 非代償性心不全のリスク低下が認められる.
合併症, 腎臓アウトカム
・低血圧(sBP<110)リスクはIntensiveで上昇するが, フラつきは差を認めない.
骨折や失神の頻度も低く, 有意差なし
・腎障害リスクの上昇も認めない
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・高齢のアジア人を対象としたRCTでも, Intensiveに降圧治療を行うことで血管アウトカムの改善が得られる結果であり, それによる合併症や腎機能障害リスクは認めないという結果.
・ただし高齢といっても, その大半が60歳台であり, 一般内科の立場からはまだまだ若い部類
・元気な人では年齢にかかわらず, やはり一度は120台を目指してしっかり降圧を試す, というのは大事なこと.
その結果Polypharmacyや合併症があるならば, 再考するのがよいか