HOAは四肢遠位部の皮膚や骨組織に異常な増殖を生じる病態
・主な臨床的な特徴としては, 指先の特異的な球状の変化: バチ指
管状骨の骨膜増殖, 滑液の貯留があげられる.
・肺癌やチアノーゼ性心疾患, 肝硬変などの内科疾患に続発して生じることが多い(9割以上)が, 特に原因のない原発性HOA(1割未満)もある
(Best Practice & Research Clinical Rheumatology 34 (2020) 101507)
(RadioGraphics 2017; 37:157–175)・33-73%で家族歴が陽性で, 男女比が7-9:1と男性に多い
・肥大性胃腸症や頭蓋縫合不全, Fe-Metal escutcheonを持つ男性などとの 関連性が報告されている
・原発性では広範囲の皮膚肥厚を伴うことが多く, 顔の輪郭が不整となったり, 皮膚の隆起を生じることがある
・また, 多汗症や脂漏性皮膚炎, ざ瘡といった腺分泌障害も伴いやすい
(Best Practice & Research Clinical Rheumatology 34 (2020) 101507)(RadioGraphics 2017; 37:157–175)
二次性HOA: 全体の95-97%
・二次性, 続発性HOAはさらに全身型と局所型に分類する
・90%が悪性腫瘍と関係があるとされている
・局所型は一部のみ, または1〜2肢に限定しているもので, 動脈瘤など局所的な内皮障害に由来する
また, 動脈管開存症で肺高血圧が合併している場合, HOAはチアノーゼとなった手足に限局する. 動脈グラフト感染や動静脈瘻の場合も局所的に生じ得る
(RadioGraphics 2017; 37:157–175)
機序と 解剖からの HOAの原因
HOAの機序
・心不全や肺血管の異常により血小板が凝集し, 巨核球が末梢で活性化し, 内皮のVEGFの発現を促す
・VEGFの局所的な発現が増加すると間葉系の増殖が誘導される
(Acta Clin Belg. 2016 Jun;71(3):123-30.)HOAの症状
・無症候性〜指先の疼痛, 骨痛などある
疼痛は下肢の方が多い.
身体所見ではバチ指が最も多い.
・四肢の筋組織が薄い部位では肥厚した骨組織を触れることもある
・骨膜の増殖は圧痛を伴うこともある
・関節腫大は大関節で多く, 膝や手関節でよく認められる
・関節液は炎症性ではなく, 細胞数は<500/mm3程度.
骨膜病変に対する交感神経の反応である可能性が高い
・HOAでは左右, 全身性に認められることが多い.
局所の血流障害ではその部位のみ認められることはある
(Best Practice & Research Clinical Rheumatology 34 (2020) 101507)
HOAの診断
・臨床所見と画像所見の組み合わせが重要.
バチ指の存在と管状骨の骨膜症の画像所見.
・悪性腫瘍患者では, 有痛性関節症がバチ指に先行して生じることがあり,
その場合反応性関節炎と判断されていることがあり, 注意が必要
・HOA診断に重要なポイントは,
痛みが関節だけではなく, 隣接する骨も疼痛がある
リウマトイド因子が通常陰性
滑液が非炎症性である点
(Best Practice & Research Clinical Rheumatology 34 (2020) 101507)
HOAの画像所見
骨膜症:
・管状骨の軸に沿って出現し, 初期では骨端部は保たれる
原発性HOAでは骨端部も含む骨端症(骨端線を超える)が多く認められる
・骨膜症で意識すべきポイントは3つ
罹患骨の数
骨の中の罹患部位
骨膜周囲の房(毛羽立ち)
・軽症では罹患部位は少なく, 通常 脛骨と腓骨が多い.
骨膜は骨幹部に限定され, 線状の単層構造を示す.
・中等症では骨膜症は骨端に及び, 層状や多層状に見える
・進行するとさらに範囲は拡大し, 骨膜症は不整に毛羽立つように見える.
・重症度は原発性, 続発性に関わらず, 罹患期間に応じて決まるとされる
(RadioGraphics 2017; 37:157–175)
関節病変
・関節腔の狭小化, びらん, 関節周囲の骨量減少を伴わない滑液包を認める
・HOAの多くが初期では関節炎を主訴とするため, 関節のみではなく, 周囲の骨膜症を見落とさないことが重要
画像の例 (RadioGraphics 2017; 37:157–175)
・原発性HOAの症例. 両側性の骨膜症・25歳の肺膿瘍による続発性HOA 両側性の脛骨, 腓骨の骨膜症を認めるHOAの鑑別で重要な疾患
・甲状腺尖端症: バセドウ病の一部で手足の小節骨で骨膜増殖を呈する.
外眼筋や前頭葉粘液水腫との併発が多い
・POEMS症候群: 皮膚の肥厚, バチ指などHOAに類似する所見を認めうる
・ボリコナゾール骨膜炎: 非対称性で鎖骨, 肋骨, 肩甲骨, 寛骨臼, 手などに骨膜炎を生じることがある.
(Best Practice & Research Clinical Rheumatology 34 (2020) 101507)(RadioGraphics 2017; 37:157–175 )
HOAの診療フロー
(Acta Clin Belg. 2016 Jun;71(3):123-30.)HOAの治療
・無症候性ならば治療は不要. 背景疾患の検索と対応が基本
・疼痛を伴う場合はNSAIDを使用する.
・骨折性骨痛を伴うHOA患者において, ビスホスフォネートの静脈注射が有効とする報告が増えている
破骨細胞による骨吸収を抑制するだけではなく, VEGF阻害作用が関係している可能性がある.
・背景疾患が明らかな場合, 肺腫瘍の切除や心奇形の治療, 感染性心内膜炎の治療により, HOAが劇的に改善することもある