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2015年9月2日水曜日

心房細動の有無に関わらない、心不全患者におけるCHA2DS2-VAScスコアと血栓症リスク

Assessment of the CHA2DS2-VASc Score in Predicting Ischemic Stroke, Thromboembolism, and Death in Patients With Heart Failure With and Without Atrial Fibrillation. JAMA 2015

Af(-)の心不全患者, Af(+)の心不全患者におけるCHA2DS2-VAScスコアと血栓症, 死亡リスクをDanish registries(N=42987)で評価

その結果, スコアと各イベントのリスク(%)
(%)

1(HFのみ)
2
3
4
5
6
脳梗塞
Af(-)
0.4[0.3-0.6]
0.4[0.3-0.6]
0.6[0.5-0.8]
1.0[0.9-1.2]
1.3[1.2-1.5]
2.6[2.4-3.0]

Af(+)
1.5[0.7-2.9]
1.0[0.6-1.8]
1.1[0.8-1.5]
1.7[1.4-2.1]
2.2[1.8-2.7]
3.6[3.0-4.4]
塞栓症
Af(-)
1.6[1.3-1.9]
2.0[1.8-2.3]
2.6[2.4-2.8]
3.5[3.3-3.8]
4.5[4.2-4.8]
7.5[7.0-8.1]

Af(+)
3.3[2.1-5.2]
2.9[2.0-4.1]
3.0[2.4-3.7]
3.4[2.9-3.9]
4.7[4.1-5.5]
6.9[6.0-8.0]
死亡
Af(-)
2.1[1.8-2.4]
2.4[2.1-2.6]
5.7[5.4-6.0]
8.7[8.4-9.1]
9.8[9.3-10.3]
12.9[12.2-13.6]

Af(+)
2.0[1.1-3.6]
4.2[3.2-5.6]
9.5[8.4-10.7]
13.8[12.8-14.9]
15.0[13.8-16.3]
18.9[17.4-20.5]


Af(-)の心不全でも、CHA2DS2-VAScスコアにおうじて血栓症リスクは上昇する。
Afにおける抗凝固薬はCHA2DS2−VASc ≥1-2で適応となるため、そう考えるとAf(-)の心不全でもスコア≥4では抗凝固薬を考慮すべきなのか?
 しかしながら、CHA2DS2-VAScスコアが上昇するに従い、HAS−BLEDも上昇することがわかっている(The American Journal of Medicine (2014) 127, 979-986)ため、出血リスクと抗凝固効果を慎重に評価して考慮する必要がある。

洞調律の心不全患者に対するワーファリンの効果を評価したRCTはいくつかあり、
最も大規模なものはWARCEF trial

LVEF≤35%の心不全で洞調律の2305名のDB-RCT. (N Engl J Med. 2012 May 17;366(20):1859-69.)
 ワーファリン(INR 2-3.5) vs ASA 325mg/dに割り付け, 〜6年間フォローし, 脳梗塞, 脳出血, 死亡リスクを評価.
 心不全の原因は主にMIと虚血性心疾患によるもので90%以上.
 部位, 壁運動については未記載. 平均EFは25%.

Outcome;
Outcome
Warfarin
Aspirin
HR
死亡
6.63/100pt-y
6.52
1.01[0.85-1.20]
脳梗塞
0.72
1.36
0.52[0.33-0.82]
脳出血
0.12
0.05
2.22[0.43-11.66]
頭蓋内出血
0.15
0.17
0.86[0.29-2.85]
消化管出血
0.94
0.45
2.10[1.19-3.70]
他のMajor bleeding
0.57
0.2
2.88[1.30-6.94]
Minor bleeding
11.6
7.34
1.56[1.34-1.81]
死亡リスクは有意差なく
脳梗塞は 年間0.5%程度低下、NNT 200
一方で出血リスクは増大し、Major bleedingのNNHは23 とHarmの方が大きい印象。

Meta-analysisでも
 死亡リスク: OR 1.01[0.86-1.19]
 脳梗塞リスク: OR 0.49[0.32-0.74]
 心筋梗塞リスク: OR 1.00[0.59-1.68]
 Major Bleedingリスク: OR 2.01[1.39-2.89],
 頭蓋内出血リスク: OR 2.18[0.75-6.30]
5RCTs, N=3663

これらの結果からも、洞調律の心不全患者で抗凝固療法を行うのは、
脳梗塞予防効果はあるものの、出血リスクの方が害が大きい可能性がある。

例えばCHA2DS2-VASc ≥4点での評価、や条件を絞って再度評価してみれば
Benefitの方が大きくなる可能性もあるが、
現時点ではどの指標とするかはわからない。今後に期待。