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2015年9月14日月曜日

アミオダロンによる甲状腺障害

アミオダロンはその長い半減期から様々な副作用を呈する.
 有名なのは甲状腺機能異常, 肝障害, 皮膚色素障害, 肺障害, 眼障害(視神経含む)
(Endokrynol Pol 2015; 66 (2): 176–196) 

アミオダロンによる肺障害, 視神経障害は別項を参照
 アミオダロンの肺障害
 アミオダロンの視神経障害(すみません手抜きです)

アミオダロンの副作用としては甲状腺機能異常が最も多い
アミオダロンによる副作用を呈した 2216例中に占める割合
(Br J Clin Pharmacol 2008;66:82-87)

アミオダロンによる甲状腺機能障害
(参考としたReview: The American Journal of Medicine (2005) 118, 706-714)

アミオダロンにはヨードが多量に含まれている
・200mg錠中に75mgの有機ヨード(ヨウ素)を含む
・薬剤の代謝にて, 1日に血中へ放出されるヨウ素は6mg程度で, これは必要量の20−40倍の量.
・アミオダロンの半減期は100日と長いため, 蓄積する可能性も高い

アミオダロンによる甲状腺障害は, 甲状腺機能低下症, 甲状腺中毒症双方ある.
・含まれたヨードの過剰摂取によるものと,
・薬剤そのものが甲状腺組織を障害する機序の2つある.

Wolff-Chaikoff効果は, 大量のヨード摂取で一過性に抑制された甲状腺ホルモンが, その後元に戻る現象.

先天性心疾患患者でアミオダロンを使用している日本人成人症例 131例のフォローでは,
44ヶ月のフォローにおいて, 甲状腺機能亢進症は18%, 甲状腺機能低下症は12%で認められた.
・投与開始〜発症までの期間は,
 甲状腺機能亢進症で39ヶ月[18−110]
 甲状腺機能低下症で10ヶ月[3−80] (Circ J 2015; 79: 1828 – 1834) 

アミオダロンの甲状腺への作用

・T4の細胞内移行を阻害
・T4→T3への変換を阻害
・組織におけるT3受容体の感受性を低下させる作用
・下垂体におけるT4→T3の変換を阻害する.

アミオダロンの甲状腺ホルモン数値への影響
・薬剤開始後 ~3ヶ月と3ヶ月以降でホルモン数値のパターンは異なる.
 急性期, 慢性期双方とも, FT4は上昇し, T3は低下する. TSHは急性期のみ上昇する.
・変動値は急性期のほうが顕著.

アミオダロン使用中の甲状腺機能スクリーニング
・アミオダロンを開始する前に甲状腺機能はチェックする
 TSH, FT4, FT3と抗TPO抗体も評価.
 抗TPO抗体は甲状腺機能低下症のリスク因子となる.
・開始後3ヶ月程度で甲状腺機能はフォローし,
 その際の値を「アミオダロン投与下の基礎値」として把握. (前述のような変化が生じているはず)
・その後は3−6ヶ月毎にフォローしてゆく.

アミオダロンによる甲状腺機能低下症
AIH: amiodarone-induced hypothyrodism
・アミオダロンに含まれるヨードの過剰摂取により生じるAIHはヨード摂取が多い地域で多く, 頻度は5−22%と幅がある.
・自己免疫性甲状腺炎によるAIHもある.
 特に橋本病などの基礎疾患がある場合は, 甲状腺機能が正常でもアミオダロン開始によりAIHを発症するリスクが高くなる.

AIHのリスク因子
・TPO抗体陽性ではRR 7.3, 女性例ではRR 7.9とAIHのリスクとなる.
・また, 基礎のTSH値が高いほどAIHのリスクは上昇する.
・投与量と発症リスクには関連性は見いだせず

AIHはアミオダロン開始後 6−12ヶ月で生じる事が多い
 臨床症状や経過は通常の甲状腺機能低下症患者と同じ
 粘液水腫性昏睡も症例報告はある.
 甲状腺腫はAIHでは稀

AIHの対応, 治療も通常の甲状腺機能低下症と同じ
・アミオダロンが中止できない場合はチロキシンを使用する.
・中止可能な場合, 投薬中止する事で2−4ヶ月で改善する可能性あり
 改善するまでチロキシンを併用し, その後減量する.
・TPO抗体陽性例などでは, 改善後もフォローが必要

AIHの診療の流れ

アミオダロンによる甲状腺中毒症
AIT: amiodarone-induced thyrotoxicosis

AITにはtype 1 AITとtype 2 AITに分類される. 
・type 1はヨード過剰摂取により生じるAITであり,
・type 2は薬剤による甲状腺組織の破壊により生じるAIT.

type1 AITはヨード摂取が少ない地域で多く, 頻度は2−9.6%程度.
 Nontoxic goiterや無症候性のバセドウ病が背景にある患者でヨード過剰摂取が引き金となりAITを発症する.

type 2 AITは特に甲状腺に基礎疾患のない患者でも生じる
 破壊性甲状腺炎による甲状腺中毒症となる.

・type 1はヨード摂取量が少ない地域で多い一方
・type 2はヨード摂取量が多い地域で多い.

日本国内におけるアミオダロン使用患者 225例のうち5.8%でAITと診断. その全てがType 2であった.
・AITのリスク因子は年齢のみ. HR 0.93[0.89-0.96]
 若年ほどリスクが高い. (International Journal of Endocrinology Volume 2014, Article ID 534904)

type 1も2も臨床症状, 経過は同じ.
・アミオダロンはβ阻害作用があるため, 頻脈や動悸の頻度は低い
 甲状腺眼症も通常合併はしない
・type 2も発熱や疼痛の頻度は低い.
・type 1では2よりも甲状腺腺腫や腫大を伴う頻度が高い.
・アミオダロン使用中の患者で, 心房細動を繰り返す場合はAITの可能性を考慮する.

type 1とtype 2の比較.
・両者では治療方針も異なるため, 鑑別には注意が必要. (一方では薬剤の中止, 他方ではPSLやリチウムの使用)
・type 2は薬剤開始後 長期経過して生じる


200例のAITの解析. 
Type 1が42例, type 2が158例.
・AIT 1の方が甲状腺容積は大きく, 抗TPO抗体も陽性となる.
・AIT 2では甲状腺容積は正常で抗TPO抗体は陰性. 甲状腺ホルモンはより高くなる.
薬剤開始〜発症までの期間は
 AIT 1で 9.9±11.8ヶ月
 AIT 2で 28.7±16.1ヶ月
(European Journal of Endocrinology 2014;171:363-368)

AITの治療
Type 1 AITの治療
・アミオダロンの中断が推奨されるが, 中断不可能な場合は抗甲状腺薬の使用を考慮する.
・アミオダロンにはβ阻害作用, T4→T3変換阻害作用があり, 中止する事が甲状腺中毒症の症状の増悪リスクとなる可能性もある.
・中断できても半減期が長いため, その間は抗甲状腺薬が必要となる可能性もある.

type 1 AITに対する抗甲状腺薬
・経験的にMethimazole 40-80mg/dやPTU 400−800mg/dと高用量が用いられる.
・甲状腺内に多量に蓄積したヨードにより, 薬剤の作用が低下するため. 副作用にも十分注意が必要.

2−3ヶ月投与しても甲状腺ホルモンが正常化しない場合
・過塩素酸カリウムを使用. これは甲状腺へのヨード取り込みを阻害する.
 投与量は 200−1000mg/dを数週〜数カ月投与
 副作用は再生不良性貧血など. 日本国内では製剤なし.

取り込みは低下しているものの, 小線源治療も選択肢となる

Type 2 AITの治療
・軽度の甲状腺炎(FT4, FT3の軽度上昇のみ)ならば経過観察のみで自然に改善する可能性が高い.
・type 1と異なり, アミオダロンの中断は必須ではなく, PSLの使用にてアミオダロン投与下でも改善する可能性がある.
 PSLは40−60mg/日を使用し, 早期に改善を示す(1週以内).
 PSLはそのまま1−2週間維持し, その後減量する
 減量速度が早いと再燃する可能性がある.

Type 1と2の混在したMixed AITもありその場合片方の治療のみでは改善が不十分となる.

AIT診療の流れ
(J Clin Endocrinol Metab 95: 2529–2535, 2010) 

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