Portal vein thrombosis, mesenteric venous thrombosis
NEJM 2001;345:1683-8
Hepatobiliary Pancreat Dis Int 2005;4:515-8
J Hepatol 2000;32:865-71
Hepatobiliary Pancreat Dis Int 2005;4:515-8
J Hepatol 2000;32:865-71
門脈, 腸間膜静脈の解剖から NEJM 2001;345:1683-8
腸管膜静脈の分布は, SMA, IMAと同様の分布.
SMVは小腸~横行結腸, IMVは横行結腸~の静脈を合流し, 脾静脈とともに門脈系を形成する.
Mesenteric Venous Thrombosis NEJM 2001;345:1683-8
Primary, Secondaryがあり,
近年, 凝固異常症の診断が進むにつれ, Primaryは減少.
現在は腸管膜静脈血栓症の3/4が原因を認めるSecondaryに分類.
現在は腸管膜静脈血栓症の3/4が原因を認めるSecondaryに分類.
多い原因としては, 凝固異常症, 悪性腫瘍, 腹腔内感染, 術後など.
若い女性でのMVTでは9-18%がピルに由来するとされる.
若い女性でのMVTでは9-18%がピルに由来するとされる.
原因一覧;
Prothrombotic state |
血液疾患 |
術後 |
ATIII 欠乏症 |
真性多血症 |
腹部外科手術後 |
Protein C 欠乏症, Protein S 欠乏症 |
本態性血小板増加症 |
脾摘後 |
Factor V Leiden, G20210A変異 |
発作性血色素性貧血 |
食道静脈瘤硬化術後 |
抗リン脂質抗体症候群 |
炎症性疾患 |
肝硬変, PVH, 他 |
高ホモシスチン血症 |
膵炎 |
鈍的腹部外傷 |
経口避妊薬使用 |
腹膜炎, 腹腔内敗血症 |
Decompression sickness |
妊娠 |
炎症性腸疾患 |
|
悪性腫瘍 |
憩室炎 |
|
MVTの発症は様々; 急性~慢性まであり得る
症状もSudden onsetから, 数週間かけて発症するタイプまで様々.
急性MVTは腹膜炎や, 腸管虚血に付随するものが多く, 亜急性は腹痛は強いが, 虚血を来すことは稀.
慢性では症状を来さないことが多い.
慢性では症状を来さないことが多い.
腹痛は正中線上でColickyであることが多く, 75%の患者が来院の48hr前より症状を自覚.
他には悪心, 嘔吐, 食欲低下, 下痢は良く認められる症状.
特に食後に増悪することが多く, 潰瘍病変と誤診されることもある
特に食後に増悪することが多く, 潰瘍病変と誤診されることもある
血便, 黒色便, 吐血は約15%で認められる. 便潜血は50%で陽性.
急性MVTの1/3-2/3で腹膜炎を併発する.
腸管内のFluid貯留によるHypovolemiaを併発することもあり.
慢性腸間膜静脈血栓症
急性, 亜急性と異なり, 無症候性でしばしば, CT, USにより偶発的に認められる.
門脈を含んでいる場合, 食道静脈瘤や腹水を認める.
膵癌, 膵炎による閉塞との鑑別が重要.
治療は対症療法. 主に静脈瘤からの出血, 腹水のコントロールとなる
急性腸間膜静脈血栓症(MVT) vs 急性腸間膜動脈血栓症(MAT)
特徴 |
Venous thrombosis |
Arterial thrombosis |
Risk Factors |
Prothrombotic state 炎症性腸疾患, 腹部悪性腫瘍 |
動脈硬化症, 弁膜症 不整脈 |
腹痛 |
徐々に発症 |
突然発症 |
Tests |
|
|
腹部XP |
非特異的 |
非特異的 |
CT |
感度90% |
感度60% |
Mesenteric angiography |
診断には不必要 |
Helpful |
Inferior Mesenteric vessel |
Uncommon |
Common |
手術所見 |
|
|
MAの拍動 |
認める. 晩期では消失 |
消失 |
腸管虚血~正常組織移行部 |
徐々に移行 |
境界は明瞭 |
治療 |
|
|
Thrombolysis |
有用ではない |
有用 |
Long-term anticoagulation |
Indicated |
Indicated |
合併症 |
短腸, 静脈瘤 |
短腸 |
MVTの治療
治療の中心は抗凝固療法 + 手術療法
腹膜炎併発例, 腸管壊死併発例では手術により切除が必要.
それ以外は基本外科手術の適応は無し.
それ以外は基本外科手術の適応は無し.
診断後早期にHeparin導入が必須であり, 生存率の上昇, 再発率の低下効果が証明されている.
手術を行う場合, 消化管出血を合併している場合もHeparinが優先.
Heparinによる再開通率は良好で, 25/27で再開通を認めた (悪性腫瘍,(-) 肝硬変(-)のPVT 27名) (Hepatology 2000;32:466-70)
補助療法として, NGチューブによる減圧, 絶飲食.
抗生剤は腸管壊死, 腹膜炎が無ければ必要なし.
腸管壊死が無いことが確認されれば, WarfarinをStartし, 6mo-1yr継続.
急性MVTの死亡率は20-50%と高値
基礎疾患, 年齢により異なる
手術による短腸症候群, 静脈瘤などの後遺症もあり.
再発率が高く, 60%に及ぶとのStudyもあり. (PVTでは6-40%で再発するとの報告.)
初発後, 30日以内の再発率が最も高い。
PVTの10年生存率は38-60%で死亡原因の大半は基礎疾患によるもの.
静脈瘤からの出血による死亡は肝硬変よりも少なく, 5%程度.
PVT患者の消化管出血Riskは17%/pt-yrと言われている.
PVT患者の消化管出血Riskは17%/pt-yrと言われている.
Portal Vein Thrombosis Am J Med 2010;123:111-9
非肝硬変患者の門脈圧亢進症の5-10%を占める原因
肝硬変に伴うものが最多, 0.6-64.1%で合併する
他の原因はMVTと同様, 血栓傾向, 悪性腫瘍, 感染症など.
他の原因はMVTと同様, 血栓傾向, 悪性腫瘍, 感染症など.
代償期肝硬変患者の0.6-16%で認める.
非代償期, 肝細胞癌患者ではさらに増加し, 35%との報告あり.
Autopsyにて, 0.05-0.5%でPVTを認めており, 見逃されやすい疾患.
悪性腫瘍に伴うものは21-24%を占め, 肝硬変に次いで多い原因.
(肝細胞癌, 膵癌が特に多い)
(肝細胞癌, 膵癌が特に多い)
血液腫瘍もRiskとなり後天性PVTの10-12%の原因を占める.
8-15%が特発性であり, 約50%の症例で原因を特定できない.
小児例(6wk~)~成人例と幅広い年齢層に起こる
先天性の血管奇形, 走行異常に伴うものが小児では多い.
PVTの原因
肝硬変 + PVT患者の70%に何らかの先天性凝固障害を認めるとの報告があるが, それらの精査に関してはControversial.
現時点では, 肝硬変患者のPVTでは, 凝固異常症の検索は推奨されない.
原因として大きく 局所(炎症, 腫瘍など)と全身性(凝固)が挙げられる
左: 局所要因, 右: 全身性要因
感染症 |
炎症性 |
悪性腫瘍 |
先天性 |
後天性 |
腎盂腎炎 |
憩室炎 |
肝細胞癌 |
Factor V Leiden |
遠位の悪性腫瘍 |
臍炎 |
膵炎 |
胃癌 |
Prothrombin遺伝子変異 |
経口避妊薬 |
Bacteroides fragilis* |
胆嚢炎, 胆管炎 |
膵癌 |
Protein C, S欠乏 |
妊娠 |
Sepsis |
虫垂炎 |
リンパ腫 |
AT III欠乏 |
MDS 真性多血症 本態性血小板増多症など |
TB lymphadenitis |
消化性潰瘍 |
胆管癌 |
|
|
|
腹部鈍的外傷 |
|
|
|
|
手術合併症 |
|
|
抗リン脂質抗体症候群 |
|
IBD |
|
|
高ホモシスチン血症 |
|
|
|
|
発作性血色素性尿症 |
Focus不明のBacteroides fragilis菌血症では, 一過性のProthrombotic anticardiolipin antibodyを認め, PVTの原因となることが報告されている.
腹腔内臓器の悪性腫瘍(-), 肝硬変(-)のPVH患者36名, Hepatic vein thrombosis患者32名を評価 (Hepatology 2000;31:587-91)
基礎疾患を評価
|
PVT(%) |
HVT(%) |
Prothrombotic disorder |
72% |
87% |
①Primary myeloproliferative disrder |
22.2[9-36] |
31.2[15-47] |
②Prothrombotic coagulation disorder |
41.47[26-58] |
33.3[18-51] |
①+② |
8.3[0.7-17] |
21.8[8-36] |
Prothrombotic coagulation disorderの内訳
|
PVT(%) |
HVT(%) |
抗リン脂質抗体症候群 |
11.1[0.8-21] |
18.7[5-32] |
G1691A factor V gene異常 |
2.8[0-8] |
21.8[8-36] |
G20210A factor II gene異常 |
13.9[3-25] |
6.2[0-14] |
T677T MTHFR gene 異常 |
11.1[0.8-21] |
12.5[1-24] |
Protein S 欠乏 |
20.4[11-44] |
0 |
Protein C 欠乏 |
0 |
6.2[0-14] |
ATIII 欠乏 |
4.5[0-8] |
0 |
急性, 慢性Portal Vein Thrombosis
症状出現から<60d, 門脈圧亢進症状(-), 側副血行路(-) ⇒ 急性
閉塞部位に側副血行路を認める場合, 慢性PVTと呼ぶ
慢性PVTの場合, 大半の患者に門脈圧亢進症状を認める.
側副血行路は “Portal cavernoma”と呼ぶ.
拡張した側副血行路により胆管狭窄, 閉塞を来たすこともあり(Portal Cholangiopathy)
PVTの臨床症状
無症候性~致命的な吐血まで様々
静脈瘤からの出血が最も多い症状.
他には脾腫より生じるPLT低下, 腹痛, 門脈圧亢進から生じる腹水, 食欲低下, 倦怠感などが挙げられる.
急性と慢性では症状異なり, 急性の血栓症ではSudden onsetの右上腹部痛を認めることが多い.
側副血行路の発達と共に症状は軽快する.
側副血行路の発達と共に症状は軽快する.
小児期のPVTでは発達障害を合併するため, Shunt術が必要.
PVT, PVHT(Portal vein hypertension)があっても, 肝酵素上昇を来すことは稀
門脈は肝血流の75%を担うが, 狭窄, 閉塞があるとすぐに肝動脈が拡張し, 肝血流を保つ
又, 閉鎖部位の側副血行路の発達が速く, 早期(数日中)に代償される.
上記2つの作用により, 肝血流は保たれるが, PVHTは急速に進行.
PVTの診断
有用なのは造影CT検査で90%で診断可能.
SMVの拡張, 血管壁の肥厚と造影効果あり.
門脈 ⇒ 肝臓の部位に側副血行路が発達
回腸の壁肥厚, 腹水を認めている
門脈 ⇒ 肝臓の部位に側副血行路が発達
回腸の壁肥厚, 腹水を認めている
エコーでも血栓の描出は可能.
Labは非特異的.
腹部XPも50-70%で異常を認めるが, 腸管虚血に特異的なのは5%程度
PVTのManagement
肝硬変 + PVTのManagement
慢性的な抗凝固療法の必要性に関しては未だEvidence無し
肝硬変患者では食道静脈瘤からの出血Riskもあり検討が必要.
肝硬変(-)患者の急性PVT Management
上記患者群への治療目的は主に2つ
>> 門脈圧亢進症の予防
>> 腸管膜静脈血栓症への進展の予防
(MVTから腸管虚血, 腸管梗塞へ進展する可能性あり)
>> 門脈圧亢進症の予防
>> 腸管膜静脈血栓症への進展の予防
(MVTから腸管虚血, 腸管梗塞へ進展する可能性あり)
UFH, LMWH, Warfarinが選択されることが多いが, 未だRCTは無し.
抗凝固療法の期間も, 6moから一生涯まで様々. PVTの原因疾患による.
(全身性要因がある場合は禁忌がなければ一生涯の治療が必要)
(全身性要因がある場合は禁忌がなければ一生涯の治療が必要)
フォローは治療開始後6moにDoppler USにて行うことが勧められる
完全開通は50%, 一部開通は40%, 閉鎖持続は10%程度.
肝硬変(-)患者の慢性PVTのManagement
治療の目的は
>> 胃食道静脈瘤の出現, 増悪, 出血の予防
>> 血栓症の進展の予防, MVT合併の予防
>> 胃食道静脈瘤の出現, 増悪, 出血の予防
>> 血栓症の進展の予防, MVT合併の予防
静脈瘤からの出血Risk, 治療のBenefitを慎重に検討する必要がある.
肝外門脈閉塞の85-90%に食道静脈瘤を認め, 30%に胃静脈瘤を合併.
出血予防目的のβ阻害薬, 内視鏡的静脈瘤治療も推奨される.
一般的なPVTの生存率は
1年生存率 80-95%
3年生存率 75-90%
10年生存率 38-60%
1年生存率 80-95%
3年生存率 75-90%
10年生存率 38-60%
死亡原因の大半は基礎疾患によるもの.
静脈瘤からの出血による死亡は肝硬変よりも少なく, 5%程度.
PVT患者の消化管出血Riskは17%/pt-yrと言われている.
PVT患者の消化管出血Riskは17%/pt-yrと言われている.