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2014年7月20日日曜日

アスピリン喘息

アスピリン喘息 Aspirin induced asthma(AIA)

Aspirinは広く使用される薬剤であるが, 一般人口の5-6%はAspirinにより弊害あり.(AIAは0.3-0.6%)
 喘息患者群の20%がAspirinやNSAIDに対して過敏を示す.
 鼻炎, 副鼻腔炎, 喘息を伴う. >> Aspirin Induced Asthma.
 IgEの関連性は少なく, Anaphylactoid反応に類する.
 Arachidonic acid pathwayにおいて, AspirinはCOX作用を阻害し, 5-LO pathwayに傾かせる. 主にCOX-1阻害が関連している.

 LT産生が増加し, 気管支収縮に関与する.
Chest 2000;118:1470-6

AIAはアスピリン使用後30分〜3時間以内に出現する (BMJ 2004;328:434-40)
 COX-1を阻害するNSAID全般でも同様に生じる.
女性:男性 = 2.3:1, 女性の方が重症化する
 家族歴は6%で陽性
 アトピーの合併は多い(1/3で合併)
鼻炎, 結膜炎, 喉頭攣縮, 喘息を伴う
呼吸器外症状: じんま疹, 顔面紅潮, 悪心, 嘔吐, 腹痛がある

喘息の9-20%にASA過敏症が伴う
 重症喘息の1/3にASA過敏が伴う
 Aspirin過敏の存在は喘息の重症化に関与(OR 5.44, 2.47-8.41)

喘息患者の内, 21.1%[13.6-28.6]が経口testにてAIA(+) 
 患者のHistoryのみでは2.7%[1.6-3.8]と低い.
 AIAのHistoryがある喘息患者群でも, 実際経口testで陽性なのは29.5%[18.2-40.8]のみ
 AIAのHistory(-)群では, 9.0%[3.7-14.3]で経口test陽性となる. 
小児例では5%[0-14]と成人と比較して少ない. (BMJ 2004;328:434-40)

AIAの患者では, 他のNSAIDへの交差反応も示す.
 COX-1阻害作用との関連性がある.
 Ibuprofen ≤400mgでは98%[90-100],
 Naproxen ≤100mgでは100%[83-100],
 Diclofenac ≤40mgでは93%[76-100]で交差反応あり.
 
 アセトアミノフェンは7%[0-16]のみ (COX-3阻害作用があるが, 軽度のCOX-1阻害作用もある)
 COX-2阻害薬も交差反応を示すが, 少量ならば投与可能(BMJ 2004;328:434-40)

低用量のアスピリンで喘息が誘発される症例ではアセトアミノフェンへの交差反応率も高い.(BMJ 2004;328:434-40)

ステロイドとの交差反応
 ステロイドは水に不溶の為, 静注製剤の場合, コハク酸エステル, もしくはリン酸エステル化されている.

 AIA患者ではコハク酸エステルに対して交差反応を示すため, コハク酸エステルは投与禁止. 内服ならば関係無し.

コハク酸エステル
リン酸エステル
Hydrocortisone
サクシゾン,
ソルコーテフ
水溶性ハイドロコートン
PSL
水溶性プレドニン
コーデルゾール
m-PSL
ソル・メドロール

Dexamethasone

デカドロン
Betamethasone

リンデロン

AIAでは重症, 急速発症型が多い
致死的な喘息患者220名のProspective study. Eur Respir J 2002;19:846-52

 Rapid-onset Asthma(ROA); 発症≤2hrで急速に進行するtype, それ以外をSlow-onset Asthma(SOA)と定義.
 上記220名中, ROAが20%, SOAは80%.
 ROA, SOAのTrigger;
Trigger
呼吸器感染症
Fume/irritant吸入
NSAID
精神的ストレス
不明
ROA
7%
9%
14%
5%
51%
SOA
38%
1%
3%
2%
47%
P
<0.001
0.003
0.009
NS
NS
前もってNSAID過敏が判明していたのは26% vs 12%(P=0.051) 
ROAの方が, 入院期間, ICU滞在期間が約1-1.5d短く, 人工呼吸器管理期間も約15hr短い.
>> 悪くなるのも早いが, 良くなるのも早い.

ASA exacerbated respiratory disease(AERD)患者459名, ASA過敏の無い喘息患者2848名を比較.
(J Allergy Clin Immunol 2005;116:970-5)
AERDの方が重症

Non-AERD
AERD
P
医師の判断で重症
49%
66%
<0.001
挿管歴 (%)
11%
20%
<0.001
3mo以内の予定外受診(%)
44%
54%
0.001
3mo以内のER受診(%)
13%
18%
0.017
3mo以内の入院(%)
5%
6%
0.068
3mo以内の全身性ステロイド投与(%)
46%
56%
<0.001
高用量の吸入ステロイド使用(%)
26%
34%
<0.001
Leukotriene調整薬の使用(%)
57%
67%
<0.001

AIAの典型的経過 Chest 2000;118:1470-6
初発は10台-30台であることが多く, Viral infectionに関連して発症する.
 ASA, NSAID内服後3hr以内に生じる鼻炎, 結膜充血, 眼瞼浮腫, 頭頸部のScarlet flushing.
 AIA患者の50%は慢性のステロイド投与を必要とする重症喘息.
 30%が吸入ステロイドを要する中等症, 20%が軽症の喘息.
 喘息発作は入院, 挿管管理が必要なほど重症なことが多い. (挿管管理をされる重症喘息の25%がAIA)
臨床所見に応じて, 3 typeに分類される
 Type A; 喘息 ± 鼻炎
 Type B; じんま疹, 血管浮腫
 Type C; Type A + B

500例のAIA患者の自然経過をフォロー (Eur Respir J 2000;16:432-6)
ヨーロッパからの報告, 診断は経口誘発testを使用.
症状の変移;
時期
症状
29.7±12.5yr
鼻炎より発症. 約半数が感冒症状後に発症
2yr
喘息が出現
4yr
ASA, NSAIDに対する過敏反応が出現
60%
で鼻茸を認める.
 初発喘息発作は45%が感染に併発, ASA,NSAIDによる発作は14%.
 アレルゲンの吸入による誘発が11%. 30%はTrigger不明.

初発症状の頻度;
症状
頻度
呼吸苦
88%
鼻閉, 鼻汁
42%
皮膚症状
20%
結膜所見
15%
血管浮腫
8%
Anaphylactoid shock
6%
 患者の15%が自分にASA, NSAID過敏があることに気づいていなかった.

男女の差; 男女比は1:2.3と女性に多い. (Eur Respir J 2000;16:432-6)
 女性の方が男性よりも3年早く発症し, 喘息は重症となりやすい.

Total
女性
男性
P
N
500
348
152

鼻炎初発年齢
29.7(12.5)
28.8(12.0)
31.8(13.3)
0.02
喘息初発年齢
31.9(13.5)
31.4(13.0)
33.2(14.6)
NS
鼻茸初発年齢
35.2(12.13)
34.8(12.0)
35.9(12.4)
NS
ASA過敏初発年齢
35.2(12.5)
34.4(12.3)
37.3(12.5)
0.02
鼻炎発症率(%)
82.4
81.3
84.9
NS
鼻茸発症率(%)
60.4
56
70.4
0.003
家族歴(+)(%)
5.8%
6.9%
3.3%
NS
経口ステロイド投与率
51.4%
54.6%
44.1%
0.03
喘息による入院数
0.6(1.4)
0.8(1.6)
0.3(1.0)
0.006
喘息によるER受診数
1.3(2.7)
1.7(3.0)
0.6(1.3)
0.001
AIAの診断
History: 服用後の気管攣縮以外にも, 蕁麻疹, 鼻炎, 血管浮腫, アナフィラキシー, SJS, 間質性腎炎, など, 薬剤特異的なものも重要.
 喘息患者で, 副鼻腔炎(-), 胸部XP所見正常ならば, AIAである可能性は低い.
 また, 明確にIgE由来の気道病変が証明されていればAIAの可能性は低いと考えられる(AIAはAnaphylactoid)
 Historyで疑い症例の場合は, ASA 吸入テスト, 経口内服テスト → FEV1の変化を見る
 AIA10名の内, ASA吸入テストで7名が陽性.
 残り3名は吸入テストで陰性, 経口内服テストで陽性であった. 
(J Investig Allergol Clin Immunol 2009;19:446-52)
 皮内テストは無意味.

ASA経口内服テスト
中止基準
 FEV1が20%低下
 症状の出現
 Max Dose 500-650mgまで到達
プロトコール

ASA投与量
時間
Day1
Day2
Day3
7am
Placebo
30mg
100-150mg
10am
Placebo
45-60mg
150-325mg
1pm
Placebo
60-100mg
650mg
FEV1 > 70%にて行なう。(気管支拡張剤ありで)
FEV1変化 > 20%で陽性と判断

ASA吸入テスト経口テストと同等のSpecificity
Sensitivityは劣る(呼吸器外症状の分)
発作の程度も軽度であり, β刺激薬吸入にて容易に対応可能

ASA発作時の治療
 喘息治療ガイドラインに順ずる
 ステロイドを使用することが多い (リンデロンを使用)
 プレドニン, ソルメドロールは避ける.
 使用するならばリンデロン, デカドロンを緩徐にDIV(1hr)
 Nasal Polyposis, 鼻炎, 副鼻腔炎は発症に関わり, ADLを著しく障害する
 Polypectomy, ステロイド外用薬の使用などが必要
 脱感作療法も考慮する

ASAの治療
 これも通常の喘息治療と同様.
 抗ロイコトリエン拮抗薬が有効.
 2種類あり, 5-LO阻害薬(zileuton), cysteinyl LT阻害薬がある.
 cysteinyl LT阻害薬は
  Zafirlukast; アコレート
  Montelukast; シングレア, キプレス
  Pranlukast; オノン を用いる.
 Aspirin脱感作療法
  脱感作療法の成功率は高く, Aspirin投与が必要な患者では行う.

Aspirinの代替薬
Acetaminophen
 COX3ブロッカーだが、COX-1阻害作用も軽度にある
 150-600mgの使用にてAIA患者の6.5%[0-16.4]に喘息発作(+)
 1000, 1500mgでは24, 32% → AIA患者においては1000mg以上の投与は×
前述の通り, 低用量のアスピリンで誘発される例ほどアセトアミノフェンへの交差反応率も高い.
アセトアミノフェンによる発作はアスピリンよりもより短期間で済む

Meloxicam(モービック)
 COX-2阻害 > COX-1阻害作用

選択的COX-2 blocker
 Celecoxib(セレコックス)
 RCTでは喘息誘発例は無いとされるが, Nが少なく結論付けるのはまだ早い印象。頻度は減る。
 血管浮腫, アナフィラキシスなどのRiskは依然高い。

Aspirinの脱感作療法 
Ann Allergy Asthma Immunol 112 (2014) 13-17 
Ann Allergy Asthma Immunol. 2010;105:130–135.
ASA 20-40mgより開始する.
 AIAや鼻炎症状は45mg以上で出現することが多い.
 内服後30-60分経過観察をするが, 低用量の場合3h程度経過して出現することも多いので注意.
経口ASA 脱感作療法のレジメ.(左側)
抗ヒスタミンは中止し, 他の喘息薬はSABA以外は継続.
脱感作の2wk前から抗ロイコトリエン拮抗薬を使用.

Ketrolacの鼻スプレーを用いた方法もある.
 生理食塩水で12.6mg/mLとなるように希釈し, 鼻スプレー容器で1回100µL噴霧できるようにする(1.26mg/spray)
 その後表の様(右側)に使用し, 徐々にDoseを増やす.
 より安全で, 短期間で可能.

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