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2014年7月28日月曜日

仮性膵嚢胞

仮性膵嚢胞 Pancreatic pseudocyst
World J Gastroenterol 2009;15:38-47
Gastrointestinal endoscopy 2004;59:873-9
Gastrointestinal endoscopy 2004;60:105-13
JOP 2004;5:8-24, 64-70


膵管上皮組織ではない, 線維性の被膜を持つ嚢胞病変
 膵管自体とは連絡を持つ場合も, 持たない場合もある
 急性壊死性膵炎後, 膵管の閉塞, 慢性膵炎, 外傷が原因となる

仮性膵嚢胞患者では59-78%がアルコール摂取者
357名の仮性膵嚢胞患者の原因解析では,(Arch Surg 1990;125:759-63)
 アルコール 70%
 胆管病変 8%
 鈍的外傷 5%
 穿通性外傷 1%
 術後合併症 0.3%
 Idiopathic 16% (その大半がアルコールと考えられる)
慢性の仮性膵嚢胞では, アルコール性膵炎が関与している例が85-94%と高い.

急性膵炎に由来するものでは胆道系疾患の関与がやや多くなる傾向.

 急性膵炎後は膵臓にFluid collectionをよく認めるが, 通常4-6wkでFluid collectionを認め, 嚢胞壁がハッキリしている場合を仮性膵嚢胞と定義する. 
 内容物は膵分泌液 + 壊死組織が主.
 慢性膵炎に合併する膵嚢胞の機序は不明な部分が多いが, 膵管の閉塞 + 基礎疾患の増悪が関与するとされる.

仮性膵嚢胞の頻度は0.5-1.0/100 000 adult/yrと稀な疾患
 86名の急性膵炎の解析では, 7%で仮性膵嚢胞を合併 (Am J Surg 1988;156:159-62)
 926名の非アルコール性急性膵炎患者では, 膵臓のFluid collectionは9%で認めたが, 膵炎後6wkでは5%まで低下. (Dig Dis Sci 1999;44:1669-73)
 128名の急性膵炎(大半がアルコール性)では, 37%に膵臓のFluid collection. 最終的には12%に症候性の仮性膵嚢胞(+) (Am Surg 1990;56:796-9)
 急性膵炎では壊死組織が広範囲ほど仮性膵嚢胞形成Riskも高く, <25% vs >=25%で膵嚢胞形成率は10% vs 56%.
 慢性膵炎では30-40%に仮性膵嚢胞を伴う.
 多発性の仮性膵嚢胞は3-18%で認められる. 慢性膵炎で多い. 単発性は90%.

急性膵炎から仮性膵嚢胞合併リスク. J Clin Gastroenterol 2011;45:159–163

仮性膵嚢胞の分類 World J Gastroenterol 2005;11:729-32
D’Egidio and Schein (1991)の分類; 原因で分類
Type

原因
膵管構造
Type I
Acute “post-necrotic”
急性膵炎後
膵管構造は正常で嚢胞との交通性無し(6-20%)
Type II
Post-necrotic
Acute on chronic pancreatitis
膵管は断絶あるも, 狭窄無し. 交通性あり
Type III
“Retention”
慢性膵炎
膵管は狭窄あり, 嚢胞との交通性あり(37-72%)
Type
N
Size(cm)
膵管狭窄
膵管交通
I
37
7.2(2-23)
0/12
1/12
II
24
4.4(2-12)
0/15
7/15
III
12
10.5(5-25)
8/8
7/8

Nealon and Walserの分類
Type

Type I
膵管正常, 嚢胞との交通性無し
Type II
膵管正常, 嚢胞との交通性あり
Type III
膵管の狭窄のみあり, 嚢胞との交通性無し
Type IV
膵管の狭窄のみあり, 嚢胞との交通性あり
Type V
膵管の途絶あり
Type VI
慢性膵炎あり, 嚢胞との交通性無し
Type VII
慢性膵炎あり, 嚢胞との交通性あり

仮性膵嚢胞の臨床所見
無症候~致命的まで幅広い
 Acute complication; 出血(脾動脈瘤), 感染症, 破裂
 Chronic complication; 胃幽門側閉塞, 胆管閉塞, 門脈血栓, 胃静脈瘤
 臨床症状も非特異的であり, 腹痛, 食欲低下, 腹部腫瘤など.
 嚢胞感染 ⇒ Sepsis, 閉塞性黄疸も稀だがあり得る.
 腹部圧痛の感度は高く, 腹膜刺激症状は嚢胞破裂 or 感染を示唆する
血液検査も非特異的であり, 除外, 診断には不向き
 AMY, LIPは通常上昇するが, 正常範囲であることも多い
 閉塞あればBil上昇, 他アルコール摂取による影響も認められる.
 USの感度は75-90%だが, 必ずDopplerにて確認 ⇒ 動脈瘤との鑑別
 CT, MRIの感度は良好だが, 他の嚢胞性病変との鑑別は困難.
鑑別には嚢胞穿刺し, 内容液を評価することが必須である.
 (嚢胞壁 >3mm, 隔壁形成は悪性腫瘍を示唆する所見であるが)
仮性膵嚢胞の鑑別疾患
膵疾患
膵外疾患
急性, 慢性膵炎
消化管潰瘍, 胃癌
膵壊死, 膿瘍
急性胆嚢炎, 胆石症
膵腺癌
腹部大動脈瘤
Pancreatic cystic neoplasms
腸管虚血
Pancreatic artery pseudoaneurysm
卵巣嚢胞,

腸閉塞

AMI, 肺炎
膵嚢胞性病変では, 仮性膵嚢胞が80%を占める

Pancreatic Cystic Neoplasms NEJM 2004;351:1218-26  World J Gastroenterol 2009;15:38-47
Type
男女差
年齢(Peak)
%
部位
悪性度, 経過
SCA
女性
70s
32-39%
局在無し
切除にて治癒可能. 悪性は稀
MCN
女性
50s
10-45%
体尾部
切除にて治癒可能. 悪性の場合は予後不良
IPMN
男女差無し
60-70s
21-33%
膵頭部
悪性の場合は予後不良. それ以外は良好
SPN
女性
40s
<10%
局在無し
悪性度は低く, 切除にて治癒可.
CEN
男女差無し
50-60s
<10%

Solid neuroendocrine neoplasmと同様
DACCD
やや男性
60-70s
<1%

Solid adenocarcinomaと同様. 予後不良
ACCA
男性
60-70s
<1%

Solid typeと同様. DACCDよりはやや良好だが, 悪い
SCA; Serous cystadenoma, MCN; Mucinous cystic neoplasm, 
IPMN; Intraductal papillary mucinous neoplasm, SPN; Solid pseudopapillary neoplasm
CEN; Cystic endocrine neoplasm, DACCD; Ductal adenocarcinoma with cystic degeneration
ACCA; Acinar-cell cystadenocarcinoma
SPNは頻度は少ないが, 若い女性に多い腫瘍.
切除にて治癒可能であり, 見逃し厳禁な病気と心得よ.

嚢胞液の評価 NEJM 2004;351:1218-26 JOP 2006;7:502-7
Marker
Serous
Cystadenoma

Mucinous
Cystic
Neoplasm

Intraductal
Papillary
Mucinous
Neoplasm

Solid
Pseudopapillary
Neoplasm

Cystic
Endocrine
Neoplasm

Ductal
Adenocarcinoma
with Cystic
Degeneration

Acinar-cell
Cystadeno-
Carcinoma

Pseudocyst
CEA
Low
High
High
Low
Unknown
Unknown
Unknown
Variable
CA72-4
Low
High
High
Unknown
Unknown
Unknown
Unknown
Variable
CA19-9
Variable
Variable
Variable
Unknown
Unknown
Unknown
Unknown
High
CA125
Low
Variable
Low
Unknown
Unknown
Unknown
Unknown
Low
CA15-3
Low
High
Low
Unknown
Unknown
Unknown
Unknown
Low
AMY
Low
Low
High
Low
Low
Unknown
High
High
Cutoff
Sn(%)
Sp(%)
Outcome
CA19-9 >50000U/mL
75%
90%
Mucinaous tumors vs 他の嚢胞性病変
CEA <5ng/mL
100%
86%
Serous cystadenoma vs 他の嚢胞性病変
AMY >5000U/mL
94%
74%
Pseudocysts vs 他の嚢胞性病変
細胞診の陽性率は SCA 25%, MCA 40%, MCAC 67%
培養の陽性率は20-50%程度
Pseudocystでも, 長期間膵腺組織との交通が無い場合, AMY, LIPが不活化され, 低値を示す場合があるので注意すること.

仮性膵嚢胞の治療
殆どの仮性膵嚢胞は内科的治療でOK…?
 絶飲食, 補液, TPNがメインの治療
 20-70%が自然寛解するとされているが, 仮性膵嚢胞の定義, 原因, 期間, フォローなど様々.
 Biasも強く, 結論はまだ出ていない.
Study
N
早期寛解
晩期寛解
合併症率
Am J Surg 1979;137:135-41
93
42%

<6wk; 20%
7-12wk; 46%
>13wk; 75%

Surgery 1992;111:123-30
68

28%
9%
Surg Gynecol Obstet 1990;170:411-7
75

60%
3%
Dig Dis Sci 1999;44:1669-73
83
14%
29%
23%
Ann Surg 1985;202:720-4
42
7%
0%
10%
 壊死性膵炎に由来するもの, 慢性膵炎に由来するもの, 径が大きいものは自然寛解し難い傾向がある.
 急性膵炎由来で, <4cmの嚢胞は3mo以内に自然寛解する可能性が高い

ドレナージ, 切除適応
適応基準はあいまい
 嚢胞径や, 期間で適応を決めるとの記載もあるが, Evidenceは不十分であり, 一定した基準は無い.
 嚢胞に合併症(出血, 感染, 破裂など)を生じた場合, 症候性の場合は手術治療, ドレナージの適応となることは確実.
Pseudocystのドレナージ適応に嚢胞径, 期間は入っていない
 (Gastrointestinal Disease: An Endoscopic Approach, CD-ROM, 2nd ed.)

合併症がある場合は緊急的な治療の適応となる
(Gastrointestinal Disease: An Endoscopic Approach, CD-ROM, 2nd ed.)

合併症
Splenic complications
 仮性嚢胞内への出血,
 脾梗塞⇒Sepsis
 脾静脈血栓症
 左上腹部痛, 圧痛を認めることが多く, CT, USで診断する.

Rupture
 消化管内, 腹腔内, 血管内へのRuptureが考えられ, 予後も異なる
 消化管内へのRuptureは無症候であり, 黒色便, 吐血を認める
 腹腔内へのRuptureでは腹膜炎, 出血性Shockを合併
⇒緊急処置が必要となることが多い.

Hemorrhage
 仮性嚢胞に近接する血管の融解が原因であり, 特に前兆もなく突然発症するため, 死亡率も高い.
 IVRでの止血が必要
Hemosuccus PancreaticusはVater膨大部を経て消化管に漏れる出血のことを呼び, 腹腔動脈瘤などと膵管の穿通が原因となる.
(Ann Surg 1985;202:75-9)

Infection
 特発性, ドレナージ後の合併症として生じる.
 外科的ドレナージが重要だが, 内視鏡的ドレナージ例も増加.

Biliary complications
 膵頭部の嚢胞による胆管圧迫, 閉塞が原因

Portal hypertention
 嚢胞による門脈の圧迫

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