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2014年7月25日金曜日

脾摘後, 脾機能低下患者への対応

脾摘後, 脾機能低下患者への対応

脾臓の役割 Am J of med 2008;121:371-5
 脾臓はリンパ系の臓器にもかかわらず, リンパ組織からの連絡がない, 血流のみ流入
脾臓の役割は大きく4つ
 Filtration function
 Immunologic function
 Reservoir function
 Hematopoietic function
脾臓の構造; 赤髄, 白髄, 中間層に分かれる. Lancet. 2011 Jul 2;378(9785):86-97.
赤髄は血液を多く含むスポンジ状の構造
白髄は脾動脈からの分枝の周囲で, T cell, その周囲にB cellが収束.
 B cellの収束域は濃く染まり, Mantle zoneと呼ばれ, 小型の増殖したB cellが集まり, 中心の明るい部分をGerminal centreと呼び, B cellの選別を行う領域.

Marginal zoneでは, Memory B cellを多く含まれる.
 マクロファージ, 線維芽細胞を含むperifollicular areaと接する部位.
 血流が赤脾髄に流入し, 静脈洞に入ると血流速度が緩徐となり, その間に損傷したRBC, 細菌がマクロファージにより除去される.
 細菌貪食にはオプソニン化が重要であり, オプソニン化された最近は脾臓, 肝臓で除去される.
 Encapsulated bacteriaはオプソニン化されにくく, その様な細菌は脾臓でのみ貪食される(肺炎球菌など)
 脾臓のMarginal zoneに存在するIgM memory B cellにより, 直接 or 補体を介して細菌に結合. 破壊する作用が脾臓にはある.

脾摘の感染症への影響
脾臓の免疫系への作用
 IgM産生
 Non-opsonized Bacteriaの除去
 Tuftsinの活性化(マクロファージ活性化因子)
 Properdin産生(補体の終末成分の活性化に関与)
脾摘後は肺炎球菌, 髄膜炎菌, HIB感染リスクは健常人の50倍
 肺炎球菌が50-90%を占め, 次にHIB, 髄膜炎菌.
 Salmonella spも脾機能低下に関連し, 骨髄炎を来すことがある.
 他に関連する細菌は, E coli, P aeruginosa, Capnocytophaga canimorsus(犬咬傷), C. cynodegmi, Enterococcus sp, Bacteroides sp, Bartonella sp等.
 Babesia, Bordetella holmesii, Malariaもリスク上昇.

脾摘後の感染症の死亡率は50-70%. 死亡の大半が24hr以内.
 その大半が肺炎球菌によるもの. 劇症の経過をたどる.
 脾摘後の致死的感染症の頻度は小児例で0.29/100pt-y, 成人例で0.10-0.13/100pt-y.
 脾摘後2年間が最もリスクが高い

脾摘以外にも脾機能低下を来す疾患は多数ある Lancet. 2011 Jul 2;378(9785):86-97.
脾機能低下を来す疾患群:
脾機能低下を高頻度で来す疾患
アルコール性肝障害は脾機能低下を合併する頻度が高い.

脾機能低下の診断
脾機能低下の評価はラジオアイソトープのフィルタリングの評価,赤血球の形態評価により行われる.
 核医学検査は費用が高く, 日常的にはRBCの形態評価が頻用される.

脾機能低下時のRBC形態評価
Howell-Jolly小体; RBC with nuclear remnants
 感度, 特異度は不明. 無脾症には有用だが, 軽度の脾機能低下では感度低い

RBC with characteristic membrane pits 
 Phase-interference microscopyで評価可能. (微分干渉顕微鏡)
 脾機能低下に相関してpitted RBCは増加.
 脾機能低下検査に最も有用であり, 多くの文献がこの方法をGold standardとして用いている.

無脾患者への対応 N Engl J Med 2014;371:349-56.

ワクチン接種

 肺炎球菌, Hib, N. meningitidisに対するワクチンは推奨されている.
 投与タイミングは前回のワクチン接種時期による.
肺炎球菌ワクチン
 肺炎球菌予防にはPCV13の投与とその後8wk空けてPPSV23の投与が推奨
 PPSV23単独投与よりもより抗体産生が高まる.
 (PPSV23を2回投与すると, 2回目の効果が落ちるため, PCV13を投与)
 脾摘前後2wkでのPPSV23投与では効果が弱まるとの報告もあり, 避ける.
Hibワクチン

 Hib感染は成人や高学年小児では少ないため, 全例にHibワクチンを接種するのではなく, 投与されたことが無い例に限定してもよいかもしれない.
髄膜炎菌ワクチン
 quadrivalent meningococcal polysaccharide vaccineが使用される
 2回投与
インフルエンザワクチン
 インフルエンザは細菌感染のリスクを上昇させるため, 毎年のインフルエンザワクチンは推奨される.
予防的抗生剤

経口ペニシリンが推奨される.
脾摘後の予防的抗生剤を考慮すべき患者群は以下の通り;
 5歳未満の小児例,
 脾摘後1-2年以内の成人, 小児例
 脾摘後敗血症の既往がある症例
 脾摘後で犬に噛まれた患者.
予防的抗生剤のEvidenceがあるのは鎌状赤血球症の小児例のみであり, 具体的な適応クライテリアは無いのが現状.

無脾患者の発熱への対応

 発熱が劇症感染症の初期症状であることも多く, なるべく早く抗生剤を使用することが大事.
 培養を採取した後に, 発熱出現から2時間以内の抗生剤投与が推奨されている.
 抗生剤はCTRX ± VCMが推奨.
 CTRXは肺炎球菌, Hib, 髄膜炎菌を含む広いカバーが可能.

 すぐに受診出来ない場合はAMPC, LVFXの内服を. (患者教育の後にお守りでもたせておくのも有りかもしれない.)

脾摘について
脾臓摘出後の感染, 免疫不全も判明してきており, 現在は脾摘は推奨されない.

 外傷、脾損傷でも極力行わない.
 外傷では, 1000mlの出血, 4U以上のMAP輸血, 進行する出血がある場合は脾摘の適応となる.
 サラセミアでも部分摘出の方が全摘よりも感染リスクが少ない.

脾臓摘出時に組織が一部残存, 他組織への付着が起こり, その後Splenosisと呼ばれる組織が増生することがある.
 Splenosisにより脾機能が改善する例もあり, 今後脾摘時は人工的なSplenosisを起こす処置もでるかもしれない.

Splenosis Southern Medical Journal 2007;100:589-93
異所性の脾臓組織は2つの機序により生じる
 Accessory Spleens; 胎生期に後胃間膜から発生する異所性の脾組織.
  通常6カ所以下と少なく, 脾動脈からの血流を受ける.
 Splenosis; 脾組織の自己移植. 外傷性, 医原性の脾破裂後に生じる.
  様々な部位に生じ得る. 100カ所以上認められ, 脾動脈に関係なく, 周囲の血管から血流を受ける.
 Splenosisは通常無症候であるが, 発見時には悪性腫瘍との鑑別が重要となる

Splenosisの頻度は不明.
 一部では外傷性脾破裂の65%で認めるとの報告もあり.
 胸腔内でのSplenosisは18%と低い. 大体が横隔膜破裂を伴っている例.
 特発性のSplenosisは非常に稀で18例程度の報告しかない.
Splenosis, Accessory spleensの脾機能は正常
 従って, 脾摘後でも脾機能温存が期待できるかもしれない.
 一部では脾摘時に故意にSplenosisを起こす方法も研究されている.
 しかしながら摘出〜Splenosisまでの期間は, 腹腔内, 骨盤内のSplenosisでは平均10年[5mo-32y], 胸腔内では平均21年[3-45y]と長時間かかる.

Splenosisの診断はシンチグラム.
 特にTc-99m heat-damaged erythrocyte, Indium 111-labeled plateletsが感度, 特異度ともに良好.

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