大変読みやすくて, 一気にまとめられたのでアップしときます by高岸
溺水 Drowningとは?
WHO 2002年の定義では, 浸水に伴う呼吸障害のこと.
以前使用されていた “Near drowning” “Dry, wet drowning” “Secondary drowning”などの用語は紛らわしいので使わない.
溺水時の人間の反応
浸水時に口腔内に入った水は通常飲み込むか, 吐き出す.
その後呼吸を止めるが, 呼吸欲求が徐々に増加.
その欲求に勝てなくなると呼吸 ⇒ 水を誤嚥 ⇒ 咳嗽.
その際に喉頭痙攣もおこることがあるが, 中枢の低酸素が生じ, 間もなく咳嗽や痙攣は消失. 意識も消失.
そのまま水を誤嚥し続け, その内呼吸も止まる.
脈拍は当初は頻脈だが, 低酸素で徐脈となり, PEA→Asystoleへ.
この経過は数秒から数分で生じるが, 低体温の要素が加わると数分から数時間かかることもある.
救助された溺水患者で問題となること
誤嚥した水分は肺胞サーファクタントの機能障害を来す.
基本的に真水も海水も障害度合いは変わらないが, 海水の方が浸透圧が高いため, 肺胞, 毛細血管内皮を障害し, 水分, 血漿, 電解質の漏出が生じる.
水の中の救命
溺水を救助した際, 意識(+)ならばそのまま陸へ.
意識(-)ならば水中での救助が生命予後を改善させる.
ただし, 素人がやってもダメ. トレーニングされたスタッフによる, 水面での人工呼吸程度の救助のみ可能. 心マは当然できないため, 2-3回の人工呼吸でも改善無い場合, 心拍再開ない場合はすぐに陸へ急ぐ.
溺水患者の頚損頻度は0.5%のみ.
従って飛び込みや外傷などの頸部損傷が疑われる場合以外は基本固定は必要なし.
陸での救命
陸に揚げたら, なるべく水平の場所に寝かす.
(海岸線に水平がBetter. もちろん水がかからない場所)
救命はBLSと同様だが, 溺水患者ではAirway, Breathingの障害がメインであり, 現在のCABよりはABCの方を優先.(CAB; Circulation-airway-breathing, ABC; Airway-Breathing)
初回の呼吸は5回. その後から30:2で継続.
初回の呼吸は5回 (European Resuscitation Council)
溺水患者では肺は虚脱しているため,初回に5回呼吸吹き込みの方が良いとERCは推奨. また, Compression-only CPRは×
Full-stomachが結構問題となる
呼吸のみ補助必要な溺水患者の65%, CPRが必要な溺水患者の86%で胃内容の逆流を認める.
腹部の圧迫や, 頭部を下げるような体位は×.
嘔吐にすぐに対応できる準備, 心構えが大事.
溺水〜救助までの時間と神経学的予後
病院内での対応
初期に酸素化が保たれていても, 頻呼吸ならば要注意.
高流量酸素投与が推奨(Grade 3以上; 後述)
また, 疲弊, 増悪が認められれば早期に挿管, 呼吸器管理を.
肺水腫が絡むため, PEEPは大事.
呼吸器設定は一般的なLung-protective ventilationを基本に, 代謝性アシドーシスにはRR調節, PS調節で対応.
ちなみに, 溺水に関連する肺炎の原因菌 CID 1997;25:896-907
Organism
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発症までの期間
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淡水
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海水
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淀んだ水
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備考
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嫌気性
Gram-negative |
Aeromonas spp
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24hr以内
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+++
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+
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+
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Aeromonas hydrophilaが最多
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Burkholderia pseudomallei
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2wk以内
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++
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+
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北緯20度~南緯20度, 東南アジア
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Chromobacterium violaceum
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>1mo
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++
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++
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熱帯地域, フロリダ
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Francisella philomiragia
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5d以内
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?
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++
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海水で多い
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Klebsiella pneumoniae
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4d以内
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+
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Legionella spp
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4d以内, 6wkの報告
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+
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Neisseria mucosa
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24hr以内
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+
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Pseudomonas aeruginosa
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5d以内
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+
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?
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++
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Shewanella putrefaciens
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4d以内
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+
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海水中に常在
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Vibrio spp
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4d以内
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?
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+
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海水中に常在
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好気性
Gram-positive |
Streptococcus pneumoniae
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24hr以内
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++
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+
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Staphylococcus aureus
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?
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?
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?
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|||
真菌
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Aspergillus spp
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7d以内
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?
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+
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+
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Pseudallescheria boydii
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>1mo
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?
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?
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+++
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予防については割愛. その辺は家庭医の先生に任せますわ。