近年自己免疫性低血糖症という疾患群が定義されたみたい。ちょっとまとめてみよう
Medicine 2009;88: 141-153
といっても、2つの疾患しかない。
Type B Insulin Resistanceと、Insulin Autoimmune Syndrome(IAS)の2つ
前者は別名Anti-insulin receptor antibodiesといって、要はインスリン受容体に作用する自己免疫疾患。
後者は平田病といって、インスリン自己抗体症候群。日本で多いやつ。
先ずは前者から。
インスリン受容体抗体が陽性になり、殆どは高血糖を呈するが、20%前後で低血糖を繰り返すtypeとなる。
IASよりも自己免疫疾患の要素が強く、SLEに合併しやすい。他にはMM, SSc, 皮膚筋炎, overlap, ホジキン, 橋本病, シェーグレン, ITP, 肝硬変で報告例あり。
黒色表皮症を合併する例が90%以上で、腋窩や頸部、鼠径をよく観察すべし。
後者はIAS. 平田病
Diabetol Int (2010) 1:21–25
日本での低血糖において、3番目に多い疾患。現在までに325例の報告がある。欧米では58例のみ。
HLA DR4(+)が96%で陽性となり, 特にDRB1*0406との関連が強い。
発症年齢は20-80台まで様々。ピークは60-69歳。男女差は無いが、若年齢ではバセドー病との関連、MTZとの関連で女性が多い。
通常低血糖は1ヶ月以内に30%が改善。1-3ヶ月で40%が改善する予後良好な疾患。
原因は薬剤性が42%. 他にはRAやMM, MGUS, 肝炎, 肝硬変など。膠原病との関連もあるが、type B insulin resistanceほどではない。
薬剤で有名なのはメチマゾール(MTZ). 他にはα-mercaptopropionyl glycine(MPG), Glutathione(GTT)といった、-SH基を含む薬剤での発症が有名.
他の報告ではTolbutamine, gold thioglucose, IFN-α, Aceglatone, 降圧薬(カプトプリル, ジルチアゼム), NSAID(ロキソニン、ジクロフェナク), Tolperisoneでの報告例あり。
近年 サプリメントであるα-リポ酸での発症例が増加中。やせ薬として出回っている。
薬剤中止でほぼ改善。
低血糖を繰り返す例ではPSLやアザチオプリンなど考慮するが、基本低炭水化物療法で経過観察。勝手に治る。
どちらかというとtype B insulin resistanceの方が厄介。