【病理】
気腫の発生する原因はよくわかっていない。糖尿病患者において組織内の血糖レベルが上昇するとガスを産生しやすい細菌叢が増加するようだが、それだけで説明しきれない。
【リスク】
●60歳以上の女性 (男性との比率は6:1)
●糖尿病 50~80%以上(96%とういう台湾の報告もあり)
→無症候性細菌尿や膀胱炎、腎膿瘍、カンジダ感染が起きやすい
●尿管閉塞(糖尿病なくても単独でリスクとなる)→主な原因は乳頭壊死、稀に尿管結石
【診断】
CT画像にて診断。50~85%の割合で腎実質、膀胱、周囲組織に認める。CTはその後治療方針や予後まで判定可能
【起炎菌】
多くは Escherichia coli(69%)と Klebsiella pneumoniae(29%)。稀にカンジダ
混合感染例もあり( E.coli + GBS または Proteus)
【症状】
重症の急性腎盂腎炎と区別することは不可能。
発熱、悪寒、腹痛、嘔吐、膀胱炎症状(排尿障害、頻尿、尿意切迫感)、気尿症
発症は突然だったり、2~3週間かけてゆっくり進行する場合もある
【血液検査】
●高血糖、白血球上昇、Crn上昇、膿尿
●急性に無尿となることはほとんどない
●54%で菌血症
【治療】
以前は、腎摘出術か抗生剤+開腹ドレナージが一般的だった。最近は、抗生剤投与とガス産生部位+膿瘍部位の経皮的ドレナージもしくは尿管閉塞の解除で経過良好との報告が多い。 あるsystematic review(including 210 patients)では緊急で腎摘出を行った場合に比べて優位に死亡率が減少した(13.5%vs25%)
【予後判定のための分類】
●typeⅠ:液貯留がない、もしくは斑状・層状のガスが存在する腎実質壊死
●typeⅡ:集合管にガスが貯留することによる水腎症 びまん性に炎症性浸潤を起こし膿瘍形成する
→typeⅠは血管内塞栓が存在し、劇症型で突発的、出血性梗塞や壊死を伴い死亡率も高い(69%vs18%)
●class1 :集合管にのみガス(腎盂に深刻な閉塞がある場合)
●class2 :腎実質内にガス(腎外にはなし)
●class3A:腎周囲にガスと膿瘍が進展
●class3B:腎周囲の隣接する臓器(腸腰筋など)までガスと膿瘍が進展
●class4 :両側の気腫性腎盂腎炎、片腎の気腫性腎盂腎炎
【有害事象】
治療に直結するため、2つの分類より、4つのclass分けの方が好ましい。
●class1~2の患者は抗生剤のみで治療された1例を除き死亡なし。経皮ドレナージは全ての患者で効果的だった。
●class3では、28人中6人(21%)が死亡。11人(39%)が経皮ドレナージが不成功、その中で7人が腎摘出され、1人死亡。
●class4では4人中3人経皮ドレナージが失敗し、2人死亡した。
●class3、4では血小板減少、急性腎不全、意識障害、ショックといったリスク因子の有無が有害事象の率と関連している。リスクが0または1の場合は抗生剤と経皮ドレナージで85%治療が成功する。2つ以上リスクがあれば治療奏効率は8%になる。
【推奨アプローチ】
まとまったエビデンスはなく、断片的な報告からclass分類に基づいて下記推奨
●全ての患者は非経口の抗生剤で 抗生剤選択は急性の複雑性尿路感染症に順ずる
●尿路閉塞も膿瘍形成も伴っていないclass1腎盂腎炎では抗生剤単独で
●それ以外のclassⅠや全てのclassⅡは尿路閉塞伴っていればPCD(経皮的ドレナージ)で
●lowriskのclas3Aor3B(lowrisk:急性腎不全、血小板減少、意識障害、shockがないもしくは1つ以下)では早期から抗生剤+尿管閉塞があればPCD。しかし、泌尿器科の中に、class3の全てで早期の腎摘出を勧めるものもいる
●PCDが失敗した場合(3日経過後も臨床症状改善なければ、腎機能続く場合は)全例腎摘出。
●class3Aor3B+2~3以上のriskある場合は抗生剤+即腎摘出術
●claas4(両側腎障害or片腎の感染)では両側にPCD推奨。腎摘出は最後の手段
【気腫性膀胱炎】
●気腫性腎盂腎炎と同様、糖尿病の女性でよく発症
●症状:80%が腹痛発症 50%が膀胱刺激症状
●10人中7人でカテーテル留置後に気尿症がみられた
●検査:尿培養陽性(E.coli、K.pnumoniae、Enterococcus、candida、時々poly)、血尿、膿尿。半数で菌血症
●たいてい非経口抗生剤のみで加療。ただしに血もち加えて膀胱洗浄は必要かもしれない。約10%が外科手術(嚢胞切除)かデブリが必要だった