PMRと高齢発症のRA(EORA)の鑑別点において, PETやMRIにおける関節周囲の信号パターンの違いや, 分布, 棘突起への集積の有無が挙げられるというデータがある
高齢発症の関節リウマチとリウマチ性多発筋痛症
(Biomed Pap Med Fac Univ Palacky Olomouc Czech Repub. 2015 Dec; 159(4):629-636.)
・関節外の集積として, 下位頸椎, 腰椎の棘突起への集積は特徴的で, 頻度も高い.
この棘突起の集積だが, 棘突起間滑液包炎を生じているため生じる.
棘突起間滑液包は解剖図で示すとこのような位置づけになる
(Ann Rheum Dis 2008;67:758–761. doi:10.1136/ard.2007.084723)ちなみにエコーでも検出されることがあるとのこと.
(Joint Bone Spine 80 (2013) 341–347)棘突起間滑液包炎はPMRに特異的な所見といえるか?
・Pubmedで ”Interspinous bursitis”で調べると, 論文は29編
その大半がPMR関連で, 他にアスリートで発症した頚椎や腰椎のInterspinous bursitisやBaastrup病, Septic Interspinous bursitis, Crowned dens syndromeによる報告がある程度
無治療のPMR 12例, FMS 5例, 頸椎変形性関節症 2例, 頚部痛を伴うSpA 6例で頸椎MRIを評価し, 棘突起間滑液包炎を評価
・棘突起間滑液包炎はPMRでは全例陽性.
FMSでは3/5, SpAでは2/6(乾癬性関節炎), 頸椎骨関節炎では1/2で陽性
・MRI grade ≥2はよりPMR症例で多い(83.3% vs 30.7%)
(0-3で評価. 0は集積なし, 1は軽度. 滑液法が確認できる程度)
(Ann Rheum Dis 2008;67:758–761. doi:10.1136/ard.2007.084723)
肩, 骨盤痛を伴う無治療PMR 10例, SpA 7例(PsA 4, IBD 1, AS 2), 脊椎変形性関節症 2例, 腰痛(+)RA 2例において腰椎MRIを評価
・PMRの9/10, Control群の5/11で棘突起間滑液包炎(+)
Control群ではPsA 2, IBD 1, 脊椎変形性関節症 2例
・Grade ≥2の所見は, PMRで60%, Control群で9%のみとPMRで特に多い
(Clinical and Experimental Rheumatology 2013; 31: 526-531.)
EORA vs PMRのエントリーで載せた論文では, RAでも同部位の集積はあるが,
集積の程度はPMRと比較すると弱い.
(Mod Rheumatol, 2015; 25(4): 546–551)補足: Baastrup Disease
・腰椎の棘突起間滑液包炎をBaastrup Diseaseと呼ぶ
・1825年にMayerが, 1929年にBrailsfordが, 1933年にBaastrupが, 腰椎の棘突起の隣接面とその間の軟部組織に病的変化が生じ, 腰痛と関連していることを記述している.
・画像上は隣接する腰椎棘突起の接触(Kissing spine)と, その付着面の硬化, 肥大, 平坦化が認められる.
・腰椎の過度な前湾による機械的な圧迫が関連していると考えられている.
・棘突起間滑液包が前方に進展し, 脊髄内嚢胞が生じると脊柱管狭窄や神経因性跛行を引き起こすことがある. L4-5が最も多い
・腰椎MRIを評価した539例の所見を後ろ向きに評価すると, 腰椎棘突起間滑液包炎の所見は8.2%で認められた. 加齢や椎間板変性, 脊柱管狭窄との関連が強い.
(Spine 2008;33:E211–E215)(Cureus 9(7): e1449. DOI 10.7759/cureus.1449)
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棘突起間滑液包炎の報告はあまり多くはない.
報告からはPMRが大部分を占めている.
他のSpAやRA, 脊椎変形性関節症, Baastrup病で認めるが, MRIやPET/CTで高度に信号があるのはPMRに特異的といえるかもしれない.