壊死性膵炎では, 膵壊死のみではドレナージの適応にはならない
・感染の合併がないならば症候性でもドレナージは行わない
・感染かどうかの判断には画像検査、FNAを使用する
・画像でガス所見があれば感染症
・Fine needle aspirationは感染の有無を評価するために行う.
・FNAで採取した検体は直接鏡検と培養に提出
・FNAは感染が疑われた場合に行うべき処置
(Curr Opin Crit Care 2014, 20:189 – 195)
ドレナージは感染性壊死組織がWalled-offとなる4wk以降に行うと合併症が少なくやりやすい.
・内科的治療で改善傾向があるならばそのまま押して, Walled−offを待ってドレナージを考慮する方法もある.
・増悪傾向がある場合は待たないほうが無難.
(Pancreas. 2012 Nov;41(8):1176-94)
壊死性膵炎では上記のような対応となるが,
ドレナージのタイミングとアウトカムへの影響を比較したRCTが発表されたので紹介
(N Engl J Med 2021;385:1372-81.)
POINTER: 早期ドレナージ群 vs 晩期群を比較したRCT.
・壊死性膵炎患者で, 膵周囲, 膵組織の感染が確認, または疑われた患者を対象.
・感染の定義は,
発症14日以内では, 穿刺吸引によるグラム染色 or 培養が陽性, 造影CTで膵臓, 膵周囲の壊死組織内にガスが認められること.
14日以後ではICU患者では臓器不全が持続していること, 通常病棟では2項目の炎症指標(発熱≥38.5, CRP上昇, WBCの上昇)が3日連続して持続していることとした.
・急性膵炎発症から35日以上経過した症例や, 壊死性膵炎の既往がある患者は除外された.
上記患者群を,
早期ドレナージ群(感染が確認されて24h以内)
vs 晩期群(Walled-off necrosisが形成された後に施行)
・WONはFluidの大部分, 全体に隔壁が形成された状態.
・双方で抗菌薬, 全身管理は継続する
・全身状態が増悪傾向にある患者では, 全体の隔壁形成を待たずに処置を行う.
・割り付け時点で隔壁形成が完成していた患者で, 晩期群に割り付けされた場合, 抗菌薬で治療を行い, 状態が増悪した場合や改善がない場合にドレナージを行った
・ドレナージは画像ガイド下, 内視鏡的ドレナージが1st line 72h以内に改善しない場合, 大径に置き換える. ドレナージが臨床的に失敗した場合, 侵襲が少ない壊死組織除去術(Videoscopic-assited retroperitoneal debridement, endoscopic trasluminal necrosectomyなど)から行う.
母集団
アウトカム
・包括的な合併症Index (重症度に重みづけしたスコア) は, 両群で有意差なし
・死亡リスクや新規臓器障害も有意差なし
・外分泌機能, 内分泌機能も同等
・ドレナージ施行率や, 壊死組織除去術施行率は有意に晩期群のほうが少ない.
・晩期群では4割処置なしで改善する
・ Interventionの数も有意に低下
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感染性の壊死性膵炎では, WONを待ってからドレナージを行うことで,
ドレナージ自体の必要性もおよそ4割低下し, 処置の必要性も減少する.
死亡リスクや膵機能予後は双方で有意差なし.