成人Still病の診断はしばしば難しい. 特に悪性リンパ腫(とりわけ血管内リンパ腫やT cell系リンパ腫)との鑑別が難しいことがある.
成人Still病において, IL-18が異常に高値となる報告が多く, これがそれらとの鑑別につかえるのだろうか, 調べてみた.
・ちなみにIL-18はSRLで自費検査だが測定可能.
以前調べた時は結果出るまで3週間くらい待った...
AOSDとIL-18
IL-18: AOSDではIL-18が異常高値となる
・IL-18はMφより産生され, IL-12と同様にIFN-γ産生を誘導する
活動性のAOSD 16, RA 21, SS 21, SLE 20, 健常人21例においてIL-18を評価
(International Journal of Inflammation Volume 2012, Article ID 156890)
・AOSDでは数千と異常に上昇し, 活動性に相関する.
・他の自己免疫性疾患でも上昇するが, AOSDでは上昇が著しい.
・他の疾患ではRAでは高値となりやすい
AOSD, RA, SLE患者のIL-18
(Rheumatology 2011;50:776-780)
・同様にAOSDでは数千に上昇. 2桁のこともあるが, 病勢に影響されているか
・RAやSLEでも一部で1000を超えるが, 平均は300程度. 健常人は100台(<200程度)
AOSDとの鑑別で問題になりやすい, リンパ腫ではどうか?
DLBCL症例におけるIL-18
(FutureSci.OA(2019)5(9),FSO414)
・単位は同じpg/mLであるが, 測定方法により差はあるかもしれない.IL-18は2桁程度, 高くても200程度と上昇は目立たない.
CTCL患者(cutaneous T cell lymphoma)では,
(Br J Dermatol. 2001 Oct;145(4):674-6. doi: 10.1046/j.1365-2133.2001.04420.x.)
・IL-18値は721±490pg/mL, 範囲 316-1462
・健常人Controlでは173±79pg/mL, 範囲 87-271
ENKTL患者114例におけるIL-18 (extranodal natural killer/T-cell lymphoma)
(Leuk Lymphoma. 2019 Feb;60(2):317-325)
・病期が進行しているほど高くなり, HLH合併例では特に高値となる
・HLH合併(-)では 高くても<500程度
・IL-18高値は予後不良因子になる
NK/T cell系のリンパ腫ではB cell系リンパ腫よりも高値となりがちであり,
これは腫瘍細胞自体がIL-18の産生に関連している.
(Leuk Lymphoma. 2019 Feb;60(2):317-325.)NHL症例をIL-18値別に3群に分けて比較
(Acta Haematol 2000;104:220–222)
・G1は>2000pg/mL , G2は1000-1999pg/mL , G3は<1000pg/mL
・G1の予後は著しく悪い(3.5M), G2は10.5M
血球貪食症候群 HLHにおけるIL-18
・IL-18はHLHでも異常高値となる
真菌感染症(1), 細菌感染症(4), ウイルス感染症(8) NHL(3), 転移性腫瘍(1), 原因不明(3)によるHLH患者のIL-18
(Blood. 2005;106:3483-3489)
HLH 9例のIL-18
(British Journal of Haematology, 1999, 106, 182±189)
・家族性が2例, EBVが5例, 不明が3例, Anaplastic large cell lymphomaが1例
・IM; 伝染性単核症
HLH, IM(Infectious mononucleosis), 健常人のIL-18
(Leuk Lymphoma. 2001 Jun;42(1-2):21-8. doi: 10.3109/10428190109097673.)
・HLHでもIL-18は数千と異常高値となる. 病勢にも比例する.
・AOSDの動態に類似している
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・AOSDではIL-18は活動期には>1000pg/mLの異常高値となる.
・鑑別で問題となるリンパ腫ではそこまで上昇する例は少ない. NK/T cell系リンパ腫では上昇する可能性はあるが, それでも1000pg/mLを超えない.
・HLHではAOSD同様, >1000pg/mLの異常高値となる. HLHではその背景疾患や原因は問わない.
リンパ腫でもHLHを合併すれば異常高値となる.
・これらから,
HPHを合併してからIL-18を測定してもAOSDの鑑別には使えない
診断に迷う, 不安な場合は, 初診時に評価しておくことで,
もしその後, 増悪し, HLHを併発した際にその情報がKeyとなることはありえるかもしれない.
・重症化してから, 焦って評価しても, あまり有用な情報にはならないかも
(結果でるまで時間かかるし)