30歳代の男性. 慢性経過の肩痛を主訴に受診.
右肩側面〜後方にかけての疼痛が持続し, 特に腕を上げると増悪する.
ROM制限や関節腫脹は認めない. 上腕には軽度の痺れも認めているとのこと.
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上記のような比較的若い患者の肩側面〜後面の疼痛では, QLSSを鑑別に加えることは大事.
QLSSは四辺形間隙症候群といい, しばしば見逃される肩痛の原因.
Quadrilateral Space syndrome(QLSS): 四辺形間隙症候群 (Medicine 2021;100:10(e24976). )
・QLSは上腕骨, 大円筋, 小円筋, 上腕三頭筋長頭で構成される四辺形の間隙で, 間を腋窩神経と後上腕回旋動脈(PCA)が通過する
・稀であるが, 20-40歳台の肩痛の鑑別で重要
・腕を上げるようなスポーツ(バスケットや投球など)がリスク因子となる
・利き手側が多い
・肩の側面, 後面の疼痛を訴えることが多く, 肩を挙上すると増悪する. また夜間に増悪することが多い
・肩の側方や上腕の感覚障害, 痺れを自覚することもある
QLSSの評価にはエコーが有用である可能性がある
・腋窩神経とPCAの横断面積の左右差. 患側の腋窩神経は腫大し, PCAは扁平化している(画像は右側が患側)
・PCAの流速の低下も認められる
対応はNSAIDや安静, 難治性の症例では除圧術などが行われるが, エコー下での神経ブロックも有効であったとの報告もある
・この論文の症例ではエコー下で神経ブロックを2回行い, 症状が消失. 3ヶ月後には神経の腫大も改善した