β-D-Glucanも診断には有用な検査の一つ.
β-D-GlucanのPCP診断に対する感度, 特異度を評価したMeta
・β-D-Glucanは感度91%[88-93], 特異度 75%[68-81]でPCPを示唆する結果.
HIV陽性患者では感度 92%, 特異度 78%
HIV陰性患者では感度 85%, 特異度 73%
(J Thorac Dis 2015;7(12):2214-2225)
ただし, β-D-Glucanは試薬, 検査キットが国により異なり, 海外のデータをそのまま国内に持ち込むことは難しいため, 注意.
日本からの報告では, β-D-Glucan >31.1pg/mLでは, Sn 92.3%, Sp 86.1%でPCPを示唆する報告がある(CHEST 2007; 131:1173–1180)
また, HIV患者におけるPCPと非HIV患者におけるPCPではβ-D-Glucanの値は1桁違う
(Inter Med 2009;48:195-202)
さらに, コロナイゼーションかどうかも数値によってある程度予測がつく
日本国内からの報告; PCP診断目的にBALを施行した166例より, Definite PCP, Probable PCP, Colonization, Negativeに分類し, 各群におけるβ-D-Glucanの値を評価.
(J Infect Chemother 20 (2014) 678-681)
・Definite PCPでは224.9pg/mLと他よりも有意に高い結果.
・50前後ではColonizationの可能性もある点に注意.
100を越えればColonizationの可能性はかなり低い.
治療後のβ-D-Glucanの推移はどうなるか?
PCP患者で, 治療中に複数回β-D-Glucan(BG)をフォローされた18例の経過と, 予後, 数値の変動を評価.
(Clin Microbiol Infect 2011; 17: 1118–1122)
・上記患者群の初期BGは2353pg/mL[790-3710]
・治療開始後速やかにBGが低下する患者が8例 (Group 1)
BGが上昇する患者が6例 (Group 2)
BGが複雑に変動する患者が4例 (Group 3)
・また, 治療反応性を以下の3つに分類
軽症のPCPで初回治療に良好に反応(A) 10例
重症のPCPで初回治療に良好に反応(B) 4例
治療不応性, 治療失敗例で予後不良(C) 4例
・BGの推移と治療反応性の関連は以下のとおり
|
A
|
B
|
C
|
Group 1
|
7(88%)
|
|
1例*
|
Group 2
|
2
|
1
|
3
|
Group 3
|
1
|
3
|
|
*もともと背景に重症肺疾患があり, Day 12でのBALでは原虫陰性化を確認したため, 他の原因による死亡と判断
BGの推移, 経過の例:
日本国内からの報告: HIV陽性のPCP患者17例の後向き解析
(Intern Med 50: 1397-1401, 2011)
・治療開始後BG値は低下する傾向にあるが, 5/17は臨床症状, 所見は改善傾向にあるのにもかかわらず, 2-4wkの時点で軽度上昇を認めている.
・正常化するのは4wkで3/17(17.6%), 6wkで7/17(41%)
侵襲性アスペルギルス症, 侵襲性カンジダ症, PCP症例において, 治療後のBGの変化と予後の関係を評価
(Clin Microbiol Infect 2012; 18: E122–E127)
・患者は上記疾患のクライテリアを満たし, 且つ初期のBG ≥80pg/mL, 治療が開始された患者群を対象
各疾患とBGの変化
|
初期BG
|
治療後1wkの変化
(変化範囲) |
|
侵襲性アスペルギルス症
|
>500pg/mL[169->500]
|
0[-53~0]
(-160~+347) |
@6wkでは82%でBG上昇のまま
@12wkでは60%でBG上昇のまま |
侵襲性カンジダ症
|
212pg/mL[119->500]
|
0[-12~+65]
(-243~+365) |
@6wkでは70%でBG上昇のまま
@12wkでは63%でBG上昇のまま |
PCP
|
>500pg/mL[410->500]
|
-17[-82~0]
(-205~+343) |
@6wkでは71%でBG上昇のまま
@12wkでは67%でBG上昇のまま |
・PCPは治療後1wkでBGが低下しやすい傾向.
・PCPにおいて, 初期BG, 1wkでのBG低下, 2wkでのBG低下は6wk死亡, 臨床アウトカムを予測する指標とはならない結果であった.
------------------------------
・PCPにおいて, β-D-Glucan高値は診断を示唆する情報の一つとなる.
・治療開始後のβ-D-Glucanのフォローについてはエビデンス不十分であるが, 治療反応性や病状との相関性はある程度期待できる.
使う状況として考えられるのは以下のとおり:
・初期にBALが困難で菌体の証明, PCRで診断が確定できない患者の場合,
Empiricalに治療を開始し, β-D-Glucanが低下してくればやはりPCPであったと考える.
・PCPで治療を開始したが, 病状が改善しない, 増悪する場合,
β-D-Glucanが低下していれば他の呼吸器疾患, 感染症の合併も考慮する
β-D-Glucanが横ばい, 上昇していれば他の抗PCP薬剤への変更も考慮する
・β-D-Glucanが上昇していても臨床的によくなっていれば気にしなくて良い(というか, この場合フォローする必要性がない)
という感じか