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2017年3月14日火曜日

挿管後のチューブの位置確認

気管挿管後はチューブが正しく気管内に留置されているかを確認することは重要.
食道挿管は死亡や低酸素リスクとなるため, 迅速に評価, 対応する必要がある.

評価方法には, 聴診, ETCO2モニター, エコーが有用であり,
複数の方法を併用して評価することが基本.

ER医により院外で挿管された345例において, 聴診による位置確認 → Capnometry → Capnographyによる位置確認を施行した前向きStudy.
(Intensive Care Med. 2002 Jun;28(6):701-4.)
・患者は心停止が71%, 外傷 18%, 非外傷性昏睡 5%, 肺水腫 2%, 喘息/COPD 1%, 他 3%
・食道挿管は9例(2.7%)で認められた.
 心停止患者では4例/246, 非心停止患者では3例/99

心停止患者における各所見の感度, 特異度
・食道挿管4例中, 1例は聴診で見逃される.
・Capnographyは感度, 特異度共に良好

非心停止患者における感度, 特異度
食道挿管 3例中, 1例は聴診で見逃される結果.
Capnographyは感度, 特異度共に良好

日本からの報告: ERで挿管された患者 137例を対象とした前向きStudy.
(Resuscitation 56 (2003) 153 -157)
・挿管後EDD(Esophageal detector device), ETCO2モニター, 聴診で位置確認を行い食道挿管を評価した.
・患者は心停止が81例.

・食道挿管は13例であった.
 心停止患者で9例
 非心停止患者で4例

EDD, ETCO2モニター, 聴診の感度, 特異度

・心停止群では, 聴診, EDDで其々1例食道挿管を見逃す結果
・ETCO2では見逃しは無し.
・心停止患者でのETCO2とEDDは感度は低い.

ETCO2モニターによるチューブの位置確認を評価した2001年までのMeta-analysisでは,
(The Journal of Emergency Medicine, Vol. 20, No. 3, pp. 223–229, 2001)

・ETCO2モニターは感度 93%[92-94], 特異度 97%[93-99]でチューブ位置を評価可能.
 >> 偽陽性(気道内にあるチューブを食道内と判別する割合)が7%
  偽陰性(食道内にあるチューブを気道内と判別する割合)が3%ある

ETCO2モニターによる偽陽性, 偽陰性の原因

ETCO2モニターは挿管チューブ確認には良い検査であるが, それ単独で評価するのは避けるべき.
複数の方法を併用する.


エコーによる挿管確認
・肺エコーによるLung slidingの評価や, 頸部エコーによる気道, 食道の描出は挿管チューブの位置確認に有用.

肺エコーによる評価: 115例の挿管患者において, 挿管後の確認として肺エコーを使用
(Resuscitation 83 (2012) 307–312)
・評価はLung slidingの確認.
・肺エコーの挿管確認の感度, 特異度

・感度は良好であり, Lung slidingがあれば, 挿管は問題ないと判断できる.
・心停止では自発呼吸が無い為, 特異性も高い.

頸部エコー(Trachealエコー)による評価方法: 4 Step法
(West J Emerg Med. 2014;15(7)834-839.)
1) 頸部を伸展させて甲状軟骨下部にプローブを当てる

甲状腺と気管が描出される

2) そのまま左にスライド

・甲状腺の後ろに食道がある

3) 食道から空気のアーチファクトを引く場合は食道挿管疑い

4) さらに描出したまま気管チューブを動かし, スライディングを確認する

注意: 10%の患者では右側に食道がある
・気管でスライディングがなく, 左側で食道が認めない場合は右側を探す

この4 Step法の感度, 特異度は以下のとおり

感度
特異度
全体
96.4%[80.0-99.8]
100%[86.7-100]
痩せている患者
100%[71.7-100]
100%[77.1-100]
肥満患者
93.3%[66.0-99.7]
100%[74.7-100]

エコーによる気管チューブの位置確認を評価したMeta
(Resuscitation 90 (2015) 97–103)

・エコー検査は感度 93%[86-96], 特異度 97%[95-98]で食道挿管を評価可能
・特に頸部エコー(Tracheal US)は心臓マッサージの邪魔にもならず, CPAでは良いかも.
・Tracheal USのみでは感度92%[84-97], 特異度97%[95-98]

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気管挿管チューブの確認は複数の方法を併用する.
有用なのはETCO2モニターやエコー.
 ETCO2モニターやTrachealエコー(4 Step法)はCPA患者における心臓マッサージを邪魔しないため, 行いやすい検査かもしれない.
 ただし片肺挿管の検出には肺エコーや聴診を.