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2017年3月22日水曜日

術後患者の低酸素血症ではIntensive recruitmentをした方が良い

(Effect of Intensive vs Moderate Alveolar Recruitment Strategies Added to Lung-Protective Ventilation on Postoperative Pulmonary Complications. A Randomized Clinical Trial. JAMA) より

ブラジルにおける単一施設でのRCT.
・待機的心臓血管手術(CABGや弁置換)後にICUで低酸素血症(P/F<250, PEEP ≥5)となった患者群を対象
・<18歳や>80歳, 慢性肺疾患の既往, 心臓外科手術の既往, 神経筋疾患, 平均肺動脈圧>35mmHg, LVEF<35%, BMI<20,>40, 緊急手術例, ノルアドレナリン>2µg/kg/min使用例, 治療抵抗性の低血圧, 不整脈がある場合, 気胸合併例は除外.

これら患者群をICUにおいて, 以下の呼吸器設定で管理
・VTは6mL/kg(予想体重), FiO2 0.6, PEEP 5cmH2Oとし, 
 その後Intensive strategy群 vs Moderate strategy群に割り付けた

共通: リクルートメントの方法は以下のとおり
 ①Low-flow pressure-volume curveを評価
 ②PEEP 5から, 2cmH2O/秒の速度で, 30cmH2Oまで上げて維持.
  維持時間はそれぞれの群を参照
  その後同じ速度で徐々に戻してゆく
 ③リクルート開始4時間後に再度Pressure-vol curveを測定. 測定は初期の設定を5分間継続後に行う.

・リクルートメントは血行動態が安定した患者で施行

各群の方法:
Intensive strategy群: リクルートメントで②を60秒間維持する.
・これを60秒開けて3回繰り返す.
・リクルートメント維持時の呼吸器設定: PEEP 30, PCでPS 15, RR 15, 吸気時間1.5秒, FiO2 0.4
・インターバルでの設定: PEEP 13, VT 6mL/kg, FiO2 0.6となるようにVC, PCを設定, 吸気時間1秒, 呼吸数はCO2 35-45に維持するように設定.

Moderate strategy群: リクルートメントで②を30秒間維持する.
・これを60秒開けて3回繰り返す.
・リクルートメント維持時の呼吸器設定はCPAPモードで20cmH2O, FiO2 0.6
・インターバルでの設定: PEEP 8, VT 6mL/kg, FiO2 0.6ととなるようにVC, PCを設定, 吸気時間1秒, 呼吸数はCO2 35-45に維持するように設定.

リクルートメント施行 4時間後に再度リクルートメントを施行し, また各施設の方法でWeaningも進める
・WeaningはPSを5cmH2Oとなるまで低下させる方法.
 PEEPは動かさず, 各群で抜管まで固定する.
・抜管後以下を満たす場合はNIVでCPAP 10cmH2O以上, PS 5-10cmH2Oを使用する
  酸素投与下でSpO2 ≤90%
  5L/分以上の酸素投与が必要
  呼吸数が30回以上

母集団データ

アウトカム

・Intensive strategyにおいて, 肺合併症の重症度は有意に低下.
 ICU滞在期間や入院期間も有意に短縮される.
・院内死亡やBarotraumaは有意差なし.
・他に, 酸素投与の必要性, 挿管期間, 抜管後のNIV使用率も有意に低下する結果.
・肺炎や創部感染症, 出血などは有意差認めず.

リクルートメント前後のPressure-volカーブ
・Intensive strategy群では有意な肺コンプライアンス改善が認められている.
・低酸素リスクも少ない.