STSにはVDRL(venereal disease research laboratory)とRPR(rapid plasma reagin)があり
TP抗原検査にはEIA, TPHA(T pallidum hemagglutination assay), TPPA(T pallidum particle agglutination test), FTA-ABS(fluorescent Treponemal antibody with absorption test)がある.
STSは梅毒感染におけるカルジオリピンーレシチンに対する抗体の産生を検出する検査で, 感染後2-4週で陽性化する. ただし偽陽性(生物学的偽陽性)が問題となる.
・生物学的偽陽性の原因として有名なのが抗リン脂質抗体症候群
他には急性ウイルス感染症(EBV, 肝炎, 麻疹など), マイコプラズマ感染症, クラミジア感染症, 予防接種, 妊娠など.
TP抗原検査は梅毒に特異的な抗原を評価する検査であり, 特異性が高いが, STSよりも2-3週間遅れて陽性となる.
>> したがって, STS 陽性, TP抗原検査 陰性 では感染早期か, 生物学的偽陽性を考慮する.
生物学的偽陽性の頻度, 背景疾患にはどのようなものがあるか?
ジャマイカにおける19067例の血液サンプルを用いた解析では
(Genito urin Med 1990;66:76-78 )
・生物学的偽陽性は一般人口の0.59%, 妊娠女性の0.72%(有意差なし)
・SLE患者の11.8%で認められた.
日本国内の人間ドッグのデータでは生物学的偽陽性は0.18%
(健康医学 1993;8:67-70)
オーストラリアの大学病院において, 300000例の血液サンプルを評価した報告
(International Journal of STD & AIDS 2005; 16: 722–726)
・VDRLの生物学的偽陽性は736例で認められた(0.24%).
・女性で有意に多く(0.27% vs 0.20%), さらに60歳以上がリスクとなる(0.34% vs 0.25)
・HIV陽性患者では特にリスクが高い(2.1% vs 0.24%)
・定量での評価では, >1:32では真の陽性を示唆する(この報告では1:1-2は除外)
中国における63765例の血液サンプルでの評価では,
(International Immunopharmacology 20 (2014) 331–336)
・生物学的偽陽性率は0.32%(206例)で認められた.
・女性例, ≥80歳, 16-35歳で有意に多く認められる.
背景疾患のカテゴリ
・妊娠, 出産に関連した患者での生物学的偽陽性が多い.
・また, 血液や免疫に関連する疾患でも多い
背景疾患の頻度
・悪性腫瘍, 頭位分娩, じんま疹, 皮膚炎, 脳梗塞, SLEなど
様々な背景疾患がある