メトフォルミンは内服後24hでその90%が腎臓より排泄される(半減期4時間程度).
排泄率はGFR 60-90では23-33%低下, GFR 30-60では74-78%低下することがわかっており, 慢性腎疾患患者では投与を避けるように添付文章にはある.
(JAMA. 2014;312(24):2668-2675 )
国内ではMetforminは
・“中等度”以上の腎機能障害と重度の肝障害で投与禁忌.
・この中等度とは国内臨床検査の除外項目である男性でCre≥1.3mg/dL, 女性で≥1.2mg/dLとしている(参照であり, 明言はしていない)
海外ではいままでは男性でCr ≥1.5, 女性で≥1.4で禁忌としていた.
しかしながら, 慢性腎疾患患者を対象とした報告が出てきており, 2016年にFDAはMetforminの禁忌をCr値ではなく, eGFRで定義し直した.
・具体的には<30mL/min/1.73m2では投与しないように勧告し直したことで, 従来では禁忌に当たる患者の一部も使用可能となっている.
(Ann Intern Med. 2017;166:191-200.)より,
CKD, CHF, 慢性肝疾患患者対するMetforminの使用を評価したSystematic review.
・CKD(eGFR<60mL/min/1.73m2), CHF, 慢性肝疾患患者で糖尿病を合併している患者群を対象し, Metforminを含む治療群 vs 含まない治療群で死亡リスク, 副作用などを比較しているStudyを抽出.
・CKD患者を対象とした6 trials, CHF患者を対象とした11 trials, CLD患者を対象とした3 trialをReviewした
CKD患者における評価
・CKD患者(eGFR 30-60mL/min/1.73m2)でのMetforminの使用は有意に死亡リスクを軽減する結果.
・心血管系副作用は有意差ないか, ごく軽度の心不全再入院リスク低下効果が期待できる(HR 0.91[0.84-0.99])
・低血糖リスクはSU剤やインスリンよりも低い(OR 6.0[3.8-9.5], 7.9[5.0-12.4])
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慢性腎疾患を合併した糖尿病患者でも, メトフォルミンによる予後改善効果は期待できる.
添付文章にはあくまでも参考としてCr値のカットオフが記載されている(小賢しいが)ので、eGFRで判断してもそう責められることはない。。。かもしれない(が、よく分からない。後ろから撃ってくる同業者もいるだろうし。。。)
個人的にはJAMA 2014のReviewで推奨されている方法はリーズナブルで気に入っており, 紹介する;
慢性腎疾患患者では,
・eGFR 45-60であり, 安定していれば腎機能に注意しつつメトフォルミンを使用する方法もあり.
・腎機能が不安定, 増悪傾向があれば避けるべきである.
・メトフォルミン使用中の患者が, 徐々に腎機能が増悪し, それがDMや原疾患によるものと考えられるならばeGFR 30−45程度でも使用は継続可能. ただし減量は必要.
・eGFR <30では使用しない.
(JAMA. 2014;312(24):2668-2675 )