下部尿管にはα1A, α1D受容体が存在するため,
下部尿管結石症患者において, ハルナールは排石率を改善させる可能性がある.
下部尿管結石症に対するタムスロシン, ニフェジピンの効果を比較した2007年のMeta
(Ann Emerg Med. 2007;50:552-63 (α-Antagonist, CCBのMeta))
・Tamsulosin; ハルナール®
結石Φ >5mm[3-18]の下部尿管結石に対する排石率改善効果は
RR 1.59[1.44-1.75], NNT 3.3[2.1-4.5]
Controlに比べて2-6日の排石短縮期間
平均 <14日で排石を認めている(2.7-14.2D)
副作用は4%, 脱落したのは0.2%
副作用; ふらつき, 頭痛, 嘔気, 嘔吐, 無力症, 一過性低血圧
・Nifedipine; アダラート®
結石Φ >5mm, 部位は下部尿管が最多, 一部 中部, 上部尿管の結石に対する肺席立改善効果は
RR 1.50[1.34-1.68], NNT 3.9[3.2-4.6]
平均排石期間は < 28日(5-20D)
副作用は15.2%, 脱落したのは2.9%
副作用; 嘔気, 嘔吐, 無力症, 胸やけ, 頭痛, 嗜眠, 多幸感, 低血圧
と, 副作用の観点からもタムスロシンは良い排石促進剤と言える.
ただし, 保険適用はない.
ところが, その後のRCTでは効果はあまりないという結論になっている
下部尿管結石77名に対するTamsulosinのRCT
(Am Emerg Med 2009;54:432-9)
・結石のSizeは3.6mm[3.4-3.9],
・Tamsulosin 10日間 vs Placeboで比較
・14日目の時点で結石排泄できていたのは77.1% vs 64.9% (AD 12%[-8.4%~32.8])と, 有意差無し
・他, 落石までの期間, 疼痛期間も両者で有意差無し.
2-7mmの下部尿路結石でERを受診した129名のDB−RCT, multicenter.
(Arch Intern Med 2010;170:2021-7)
・Tamsulosin 0.4mg/d vs Placeboに割り付け, 42日間 or 結石が排泄されるまでフォロー.
・結石径は平均2.9-3.2mm
・42日目における自然排石率は, 77.0% vs 70.5% (p=0.41)と有意差無し.
・結石の大きさ別, 男女別, 投与開始〜の期間別で比較しても有意差無し.
尿管結石症 1167例を対象としたDB−RCT.
(Lancet. 2015 Jul 25;386(9991):341-9.)
・結石はCTで確認. 径≤10mmの尿管結石
径≤5mmが74-75%, 結石の部位は上部 23-25%, 中部 10-11%, 下部 64-66%
・Tamsulosin 400µg/d vs Nifedipine 30mg/d vs Placeboに割つけ ~4wk継続し, 排石率を比較.
アウトカム
Tamsulosin, Nifedipine双方とも排石率の改善効果は認めず
石の大きさ, 部位別の評価でも有意差無し
タムスロシンでは結石径>5mmの群で有意差はないが, 結石率が良好な可能性があるか?
また遠位尿管の結石で排石率が良好な可能性(有意差なし).
403例の遠位尿管結石(≤10mm)患者を対象としたDB-RCT
[Ann Emerg Med. 2016;67:86-95.]
・タムスロシン 0.4mg vs Placeboに割り付け, 4wk継続し, 4wk後の腹部CTにおける排石率を比較・結石の大きさは, タムスロシン群で平均 4.0mm, Placebo群で3.7mm
アウトカム:
・4wk後の排石率は, 87% vs 81.9%, AD 5.0%[-3.0~13.0]と有意差なし.
・ただし, 結石の大きさ 5-10mm群で解析すると, 有意にタムスロシンで排石率は良好(83.3% vs 61.0%, 22.4%[3.1-41.6])
ESWL(extracorporeal shock wave lithotripsy)後の腎, 尿管結石に対するα阻害薬の効果を評価した7 trialsのメタアナリシス (BJU Int. 2010 Jul;106(2):256-61.)
・タムスロシンは有意に結石排石率の改善効果(ARD 16%[5-27])を示す。
・0.4mg使用群の比較ではARD 19%[10-29]
有意差はないものの、排石までの時間も短縮傾向がある(MD -8.24[-19.54~3.07])
・Funnel plotではバイアスはありそう
数%~10%程度の差かもしれない
これらの結果から, 個人的な印象を述べますと
様々なRCTでは効果がないと言われていますが, ≥5mmの結石ならばある程度の効果は見込める可能性がある.
・結石径<5mmの尿管結石ではタムスロシンの効果はプラセボと変わらない.
・結石径 5-10mmで、且つ下部尿管の結石ならば試す価値はある
(ただし薬剤投与による副作用には注意.)
・投与するならば1ヶ月程度を目処とする.
という感じでしょうか.
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2017年時点でのMetaが発表されましたので追記
(Ann Emerg Med. 2017 Mar;69(3):353-361.e3.)
・10mm未満の結石では, タムスロシンは有意に排石率改善効果を示す.
・特に5-10mmの大きな結石ではRD 22%[12-33], NNT 5と効果は良好
・一方で<5mmの小結石ではRD -0.3%[-4%~3%]と有意差なし.
・使用する場合は0.4mg/dを21-28日間
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大体上記の印象と同じでちょっと安心