穿刺すると滲出性, リンパ球優位, ADA 80U/Lと高値であり, 結核性を疑った.
胸水より抗酸菌染色陽性(ガフキー1号)であったが, 培養, PCR結果はMycobacterium intracellulareであった.
Q1. NTMによる胸膜炎, 胸水貯留はどの程度あるのか?
Q2. また, その場合も胸水中ADAは高値となり得るのか?
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A1.)
BMC Infectious Diseases 2011, 11:113 より,
Virginia Hospitalにおける2001-9年に診断したMycobacteria感染症 494例の解析
TB以上にMAC症, NTM検出の方が余裕で多い.
NTMとTBの比較を見ると,
胸水貯留はNTMの5%のみである一方, TBでは61%と, NTMによる肺感染症における胸水貯留の頻度は少ない(5%程度)と考えられる.
A2.)
NTMによる胸膜炎, 胸水貯留の場合, 胸水中ADAは上昇するのかどうか.
ADA; Adenosine deaminaseは,
細胞内感染菌が存在する際に, T-cellを始めとしたリンパ細胞が分泌する物質. 従って, ADAとはT-cellの活性度を示すマーカーと言える.
ADAにはADA1,2があり, ADA2はMonocyte特性があり, 結核ではADA2が増加する.
従って, TBだろうがNTMであろうが, 細胞内感染を来すならば上昇して当然とも言える.
ただし, 上記の通りNTMによる胸膜炎の報告は少なく, まとまった文献も無かった.
いくつかのCase reportを漁ってみると,
日本国内において胸水貯留の精査を行った435例のRetrospective study.
この435例中, 2例がNTMによる胸水貯留例であり, その2例では双方ともADA>36U/Lであったとの記載があった(具体的な数値は不明).
(Acta Med. Okayama, 2011 Vol. 65, No. 4, pp. 259-263)
他の症例報告ではM. aviumでは上昇していない例も報告されている.
(73歳男性の胸水貯留例ではADA 19.5IU/L, M. avium陽性となった)
(Inter Med 47: 1727-1731, 2008)
M. intracellulareによる胸膜炎では, ADA 142, 146IU/Lと上昇している報告例
(Tuberc Respir Dis 2013;74:124-128)(Inter Med 2006;45:1007-1010)
M. kansasiiによる胸膜炎では, ADAは上昇しているという症例報告が多い(46.4~101.7IU/L)
(Kekkaku 1993;68:527-531, Kekkaku 2004;79:397, Transplant Infectious Disease 2012;14:E50-55)
M. abscessusの症例報告も上昇; 79.7IU/L
(Journal of Infection and chemotherapy 2013;19:964-968)
症例報告程度では何とも言えないが, 理論上も, 報告でも上昇することが多いと言えそう
M. aviumでは上昇していない報告も散見されるが, それはM. intracellulareと比較して炎症が軽度のためなのかもしれない.
(Chest 2012;142:1482-1488; M. aviumとintracellulareの患者群の比較のStudy. 炎症マーカー等はintracellulareの方が有意に高かった)