ただし, あまり有用というエビデンスが無かったが, 2009年にJAMAより腹腔内感染による敗血症性ショック, 重症敗血症患者を対象としたRCTが発表されてから, 同様の患者群やGNR感染症ではさらに選択される様になった.
EUPHAS RCT; (JAMA 2009;301:2445-52)
腹腔内感染によるSeptic shock, Severe sepsis患者64名のRCT.
早期のPolymyxin B Hemoperfusion 2 session(n=34)
vs Conventional therapyのみ(n=30)で比較
患者群は,
消化管穿孔(41), 腸閉塞(13), 複雑性胆嚢炎(7), 腹腔内膿瘍(2), 腹膜炎(1)
Outcome
Baseline ⇒ 72hr後の平均動脈血圧はPMX群で有意に改善を認める
カテコラミン使用量も有意に低下する
Outcome
|
PMX-B
|
Conventional
|
HR
|
院内死亡率
|
41.2%
|
66.7%
|
0.43[0.21-0.90]
|
28D死亡率
|
32.4%
|
53.3%
|
0.36[0.16-0.80]
|
死亡率も有意にPMX−B群で改善するとの結果であった.
ただし,
このStudyはNが小さく, 原因菌も両群によりバラツキが強かった.
Conventional Therapy群での死亡率が高率であり, 通常の治療がどうなのかが不明という問題点もあった.
そんななか,
日本からPropensity matched analysisが発表されたので見てみる.
Postoperative Polymyxin B Hemoperfusion and Mortality in Patients With Abdominal Septic Shock: A Propensity-Matched Analysis. Crit Care Med 2014 online first
日本からのPropensity-matched cohort.
18歳以上で下部消化管穿孔で緊急手術を施行し, 術後にカテコラミンを使用している患者群を対象.
対象は非外傷性の下部消化管穿孔例(虫垂炎を除く)で, 入院時に緊急開腹術を行い, 術後カテコラミン投与を必要とする患者.
Day 0-1での死亡例は除外, また, Day 2以降にPMXを行った患者も除外.
上記を満たす患者 2925名中, Day 0-1に1~2回のPMX B Hemoperfusionを施行したのは642例.
PMX B施行群 vs 非施行群でPropensity score matched analysisを行い, 590ペアを抽出. 両群での死亡率を比較した.
母集団;
アウトカム;
両群とも死亡率は16-17%と有意差無し.
PMX B hemoperfusionの回数別, 開始日別でも死亡率が下がるわけではない.
Sub-group analysisでも, 特にPMX Bで有意に死亡率が下がる群は見いだせず.
ABDOMIX trial: 消化管穿孔による緊急手術を行い術後12h以内に腹膜炎から敗血症性ショックとなった243例
・通常の敗血症治療群 vs PMX群(2回)に割り付け, 比較
・PMX群のほうが死亡リスクが高い傾向(有意差はない)
(Intensive Care Med. 2015 Jun;41(6):975-84.)JAMA 2009のRCTでは有意差があり, 28日死亡率は-20%, NNT 5というバケモノじみた効果を発揮したPMX−B.
国内のPropensity matched cohortでは有意差出ず.
また, ABDOMIX trialでも有意差を認めなかった.
これらの報告では, 根本的な母集団の死亡率が大きく異なる(50% vs 16%, 20-30%)
国内のCohortにおいてPMX-B使用群642名中590名(92%)が抽出されていることから, 別に軽症例のみを抽出したわけではないであろう.
実際消化管穿孔からの敗血症で迅速に手術できた場合, DNARでなければ半分も亡くなるという感覚もない.
根本的な腹部敗血症の死亡率の違い. それは手術治療の国別の違いなのかもしれないし, ドレナージ技術, 医療機関へのアクセス, 診断までの早さにも関係するのかもしれない.
少なくともアクセスや手術までの早さ, 技能については世界においても日本はやはりトップクラスなのは間違いないので, そのような環境下ではPMX-Bの恩恵にあやかる必要性は低いとも考えられるだろうか? その辺はよく分かりません。