中耳炎は小児で多い疾患であり, 成人発症は少ない.
成人例の中耳炎は, 全体の<20%程度と言われている.
・成人で発症する場合, 二次性に耳管狭窄を生じる病態や 悪性腫瘍の関連, 自己免疫性疾患の関連を考慮する.
・成人(特に高齢者)の難治性中耳炎ではANCA関連血管炎に伴う中耳炎(OMAAV)が有名だったりする (参考: http://hospitalist-gim.blogspot.com/2017/01/anca.html)
18歳以上で滲出性中耳炎を発症した167例を前向きにフォロー.
(Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 1994;120:517-527)
・年齢は18-81歳, 平均年齢は41.5±15歳.
男性例が99例, 女性例が68例
・Habitual sniffing(習慣性鼻すすり)は除外
滲出性中耳炎のタイプ
N(F/M) | 年齢(範囲) | ||
急性滲出性中耳炎 | 79(36/44) | 34歳(18-67) | 片側49, 両側30 |
慢性滲出性中耳炎 | 33(15/18) | 47歳(35-81) | 3ヶ月以上で定義. 片側19, 両側14 |
喫煙誘発性鼻咽頭リンパ過形成 | 8(0/8) | 41歳(25-47) | |
成人発症アデノイド過形成 | 7(2/5) | 52歳(40-65) | |
外傷後鼓室内血腫 | 7(1/6) | 29歳(20-44) |
・他, 気圧外傷や外科治療後, 放射線療法後,
NGチューブ留置, 経鼻Airway/挿管,
アレルギー性アスペルギルス, 流行性耳下腺炎, 伝染性単核球症,
喉頭周囲膿瘍, 悪性リンパ種, Schwannoma, ANCA関連血管炎などが
其々1-3例で報告.
・成人発症でも半数異常は急性, 慢性滲出性中耳炎であり, 二次性の要素はそこまで多くはない.
ただし, 発症年齢は3-50歳程度であり, 高齢者での中耳炎は注意が必要と考えられる.
3224例の急性中耳炎患者のうち, 15歳以上の症例500例を前向きにフォローし, 小児発症例と比較した報告
(J Am Board Fam Pract 1993;6:333-339)
・年齢別では1-14歳発症が84.4%.
15-24歳発症が6.1%,
25-44歳発症が6.9%,
45歳以上が2.6%
・症状の比較:
成人発症では, 扁桃切除歴(+)が3割.
難聴や咽頭痛といった症状頻度も高い
発熱は1/3程度しか認めない
・改善率は, 小児例では84%.
15-24歳では80.6%,
25-44歳では75.9%
また, 近年 好酸球性中耳炎の報告も増加.
報告例のMetaより, 特徴をまとめると以下の通り;
・50歳前後の中年で, 喘息や鼻ポリープを伴うことが多い.
・診断は滲出性中耳炎や慢性中耳炎で, 好酸球有意の液体貯留を認め, さらに以下の2項目を満たす;
気管支喘息, 鼻ポリープ, 粘性の中耳液体貯留, 通常の治療への反応が不良
・治療は鼓室内ステロイド投与, チューブの挿入, 全身性ステロイド, 喘息に準じた生物製剤の使用など
・慢性化, 再発性の経過もある.
(Acta Otolaryngol. 2021 Jun;141(6):579-587. doi: 10.1080/00016489.2021.1901985.)