高齢女性のUTI症例.
排尿後残尿量を測定すると200mLと多く, UTIのリスクになった可能性を考慮された.
特に排尿関連症状は認めないが, この残尿量を減らすために治療が必要なのだろうか?
残尿量はUTI再発リスクになりえるのか?
急性尿路感染症状(-)の前立腺の評価目的に受診した成人男性196例(平均年齢60台)において,
(J Urol. 2008 Jul;180(1):182-5. doi: 10.1016/j.juro.2008.03.044.)
・排尿後に無菌操作でカテーテルを挿入し, 残尿量を測定. また採取した尿を培養し, 細菌尿を評価
・尿培養は27%で陽性.
陽性例の残尿量は平均 257mL 範囲 150-560mL
陰性例は平均 74mL 範囲 10-340mL
・残尿量が多いほど細菌尿のリスクは上昇する.
180mL以上の残尿がある場合, 細菌尿を有するPPVは87%, NPVは94.7%
介護施設入所者を前向きに1年間フォローし, 残尿量とUTI発症リスクを評価したCohort.
(J Am Geriatr Soc. 2008 May;56(5):871-4. doi: 10.1111/j.1532-5415.2008.01646.x.)
・150例を対象とし, 排尿後残尿量をエコーにて評価.
男性46例, 女性104例.
平均年齢は男性で81.9歳, 女性で85.3歳.
・65.3%で残尿量<100mL, 34.7%は≥100mLであった.
・1年間のフォローにおいて, UTIを発症したのは34.0%
女性が40.4%, 男性が19.6%と 女性で有意に多い
・残尿量が多いからといって, UTIのリスクが上昇する結果は得られず
閉経後女性におけるUTIリスクを評価した前向きCohort.
(Am J Med. 2004 Dec 15;117(12):903-11. doi: 10.1016/j.amjmed.2004.07.045)
・55-75歳の閉経後女性 1017例を2年間フォローし, 膀胱炎の発症に関連する因子を調査.
・1773 pt-yのフォローにおいて, UTIは138例で発症.(7/100pt-y)
・リスク因子は糖尿病, インスリン使用, エストロゲンクリーム, 腎結石既往, 繰り返すUTIが挙げられる
・排尿後残尿量(US)はリスクにはならず;
<50mLと比較して,
50-100mL: HR 1.1[0.5-2.2]
>100mL: HR 1.6[0.8-3.2]
55-75歳の閉経後女性を対象とした前向きCohort.
(J Am Geriatr Soc. 2011 Aug;59(8):1452-8. doi: 10.1111/j.1532-5415.2011.03511.x.)
・エコーにて排尿後残尿量をBaseline, 1y, 2yにフォローし, 症候性UTIの頻度を比較した.
・残尿量<50mLが79%, 50-99mLが10%, 100-199mLが6%, ≥200mLが5%であった
・残尿量と症状
残尿量と症状, UTIリスク
・残尿量が増えると, 頻尿症状や排尿障害症状は軽度上昇する.
・しかしながらUTIリスクは上昇せず.
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まとめ;
・男性例において, 残尿量>180mLは細菌尿リスクになり得る.
ただし症候性となるかどうか不明確.
・女性例, 特に閉経後や高齢女性において, 残尿量が多いと排尿障害や頻尿症状の軽度のリスク因子とはなり得るが, UTIのリスクを上げるという証拠はない.
女性例における無症候性細菌尿については不明.
・自分のスタンスとしては, 腎後性腎不全や膀胱拡張による他臓器への影響, 尿路症状がない限りはある程度(200mL程度)の残尿は特に介入していません