付随運動であるDystoniaとChoreaの1/4は二次性であり, その原因として神経変性疾患, 遺伝性代謝異常, 後天性の全身疾患がある.
Chorea: 不規則に繰り返される短くやや速い不随意運動であり, 炎症性疾患や自己免疫性疾患関連でいうと, A群溶連菌感染症後, リウマチ熱や, 抗リン脂質抗体症候群の1症状として連想される.
診断のMinor criteriaにも含まれるものの, 正直あまりお目にかかるものではなく, ついつい忘れがちなChorea.
忘れないためにも一度調べておくことにした.
(J Neurol Neurosurg Psychiatry 1998;65:436–445)
Choreaは被殻〜淡蒼球内部の間接経路の機能低下,
Dystoniaは同部位の直接経路の機能過亢進が関連.
・双方とも運動前野, 運動皮質への視床投射を適切に抑制できず, 不随意運動を生じる.
・尾状核や被殻の病変では, 淡蒼球外側の抑制をきたし, Choreaに関連 視床下部〜淡蒼球内部の障害も関連している
ChoreaやDystoniaの後天性の全身疾患で多いものは低酸素/虚血性疾患と薬剤性.
頻度は下がるが, 他に感染症, 自己免疫性疾患, 代謝性疾患も原因となる
毒素/薬剤によるChoreaとDystoniaの原因
感染症によるChorea, Dystoniaの原因
・A群溶連菌後のChoreaの報告はしばしばある (リウマチ熱の1症候にもChoreaが含まれる)
A群溶連菌感染やリウマチ熱による一過性のChoreaをSydenham’s choreaと呼び, 小児で報告がある. 連鎖球菌Type 6 M蛋白に対する抗体が関連している.
代謝性疾患によるChorea, Dystoniaの原因
・電解質異常, 血糖異常, 甲状腺機能亢進症が原因となりえる成人発症の自己免疫性Chorea
(Neurology" 2013;80:1133–1144)
・傍腫瘍性や, 自己免疫性脳症に関連するChoreaもあり.
Mayo clinicにおける36例の報告では, 非傍腫瘍性が22例, 傍腫瘍性が14例.
・発症年齢は67歳[18-87], 女性例が58%, 傍腫瘍性ではより高齢, 男性例が多い
・傍腫瘍性Choreaの自己抗体は
CRMP-5が5例, ANNA-1が3例 , ANNA-2が1例
他にVGCC, GAD65が2例
抗体陰性やANAのみなどもあり
・特発性の背景疾患としては,
SLE(5, うち3例はAPLSと合併), APLS(5, うち3例はAPLSと合併),
SS(3), ITP(3), 甲状腺機能低下症(1)/亢進症(2)がある
SLEやAPLSに伴うChorea
・APLS 1000例の解析では, Choreaの頻度は1.3%のみ.
小児発症のAPLSでは14%, 成人発症では1%と, 小児例での合併が大半.
(OR 17.8[4.3-69.8]) (ARTHRITIS & RHEUMATISM Vol. 46, No. 4, April 2002, pp 1019–1027)
・SLEにおいて, Choreaは最も多い行動障害の1つであるが, その頻度は1-4%と少ない.
・Choreaを伴うAPS症例50例の解析では, このうちPrimary APSは15例のみで, 35例はSLE, lupus-like syndromeとAPSの合併例であった.
(Medicine (Baltimore). 1997 May;76(3):203-12.)