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2022年5月25日水曜日

ちょっと変わったLeukemoid Reaction(白血病反応)

 症例: 高齢男性. 亜急性経過での体動時痛, 倦怠感を主訴に受診.

 血液検査にてWBC 5万台, Neu 65%, Eo 30%と著明な好中球と好酸球増多を認めた.

 末梢血に芽球は認めず, 骨髄穿刺でもAMLや骨髄増殖性疾患を疑う所見は乏しい.

 XPにて肺に5cm程度のMassを認め, 肺悪性腫瘍に伴うLeukemoid reactionを疑った.

 でも, Neu上昇はわかるが, Eoも上昇するというのは。。。?


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Leukemoid Reaction(LR): 白血病反応

(Int J Lab Hematol. 2020 Apr;42(2):134-139.)(Cancer 2009;115:3919–23)

・白血病ではないが, 末梢血WBC 40000-50000/µL以上となる病態.

・成熟した好中球の増加で特徴づけられ, CMLやCNLなどの骨髄増殖性疾患が除外される.

・主に悪性腫瘍に伴うものが多く(G-CSF産生腫瘍など),
 他に感染症(粟粒結核, CDAD, 細菌感染), 薬剤(GC, MINO, G-CSF), 毒素(エチレングリコール), 急性出血や溶血による報告がある

・悪性腫瘍では肺癌と腎癌での報告が多いが, さまざまな部位の腫瘍で報告例がある. また腫瘍診断の数年前(報告では最大4年)から認められることがある.


ブラジルの3次施設において, WBC>50000/µLを満たす症例を評価

(Int J Lab Hematol. 2020 Apr;42(2):134-139.)

・2016-2018年に267例認められ, このうち6割が血液増殖性腫瘍疾患.


 残りの4割(105例)を白血病反応と判断し, 原因を評価した.

・感染症が59例, 悪性腫瘍が17例, その他が29例であった.


感染症は最も多い原因.


・細菌感染症が多く, 敗血症に対して
ステロイドが使用された例が30%.

・悪性腫瘍では肺, 膵臓, 胃癌が多い

・その他ではGrowth factor, HLH
出血などがある.

血液検査

・どの原因でもNeuの著名な上昇が主となり,
他の血球の増多は認めない


非血液性固形腫瘍でWBC>40000/µLを満たす758名のRetrospective trial
原因頻度を評価.

(Cancer 2009;115:3919–23)

・Hematopoietic growth factorが10d以内に使用されたものが522例(69%).


 感染症によるものが112例(15%).


 High-dose corticosteroid ± 血管収縮薬使用例が38例(5%).


 残り, 10%が傍腫瘍症候群に伴うLeukemoid reactionであった.

感染症の内訳;


傍腫瘍症候群としてのLeukemoid reaction. 77例の解析


・腫瘍自体が産生G-CSF, GM-CSF,
 IL-1α, IL-6などが関与しているとされる.

・96%がNeu上昇がメイン.
またLR合併例は基本的に予後不良.

・発熱は38度を超えないのが普通.

・腫瘍の原発巣は,
 NSCLC(13), 肉腫(11), 原発不明癌(6)
, 皮膚(6), 膵癌(4), 膀胱癌(4), 乳癌(3), 胆道(3),
口咽頭(3), 腎(2), 腹膜中皮腫(2), 子宮内膜(2),
胃食道(2), 甲状腺(2), 骨, 陰茎, 末梢神経鞘,
上顎洞, 舌, 胃, 肝, 頸部, 卵巣 各1例.



傍腫瘍性LRのLiterature review 179例の解析

(Pathology - Research and Practice 217 (2021) 153295)

・平均WBCは60703(範囲12200-300000)/µL


 96%は好中球のみの増多. 

 3%(5例)がNeu+Eoの上昇, 

 1%(2例)がNeu+Mo


 Neu+Mo+Eoが1例のみ.

 
Mo単独やEo単独, Baが上昇するタイプのLRの報告は認められない.

・G-CSFが測定された症例は99例. 平均値は257[33-1640]pg/mL
. 

 測定された症例の95%で上昇が認められた.
 

 73%が>100pg/mLを満たす.


 組織のG-CSF染色は80例で行い,
 94%で陽性.


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Leukemoid ReactionのほとんどがNeuの上昇を認める.

今症例のようなNeu+EoのLeukemoid Reactionはかなり稀であるが, 報告はあり.

傍腫瘍性では2021年のReviewからは5例のみとの報告である.

どのような症例報告か見てみよう.


Neutrophilic-Eosinophilic Leukemoid Reactionの症例報告

・65歳男性, 喫煙者, 肺扁平上皮癌.
 

 WBC 37200/µL(Neu 38%, Eo 37%, Ly 4%), PLT, Hb正常
 

 → その後 WBC 90500(Neu 28%, Eo 34%, Ly 2%, Mo 11%)

・68歳男性, 肺腺癌
 WBC 369000/µL(Neu 43%, Eo 31%, Ly 9%, Mo 6%), PLT, Hb正常

 この2例では, 胸水中のGM-CSFが測定され,
それぞれ 3.8ng/mL, 1.0ng/mLと検出されている(ELISA)

 
他の疾患12例で同様に胸水中GM-CSFを測定したところ, 
検出されたのは1例のみ(Leukemia, GM-CSF 0.2ng/mL). その症例はWBC<100と低値で, 好酸球増多も認めない.

(Cancer 1992;69:1342-1346)


・41歳女性, 左膝の腫瘤と疼痛. 高悪性度紡錘形細胞肉種
 

 WBC 126000/µL, Neu 45%, Eo 48%と上昇あり, 切除後正常化.
 

 その後肺に転移が認められ, その際再度Neu, Eoの上昇を認めた.
 

 血液中IL-5は正常. GM-CSFは208.8pg/mL(正常<4.8)と上昇

(Journal of Medical Case Reports 2010, 4:335)

・57歳女性. 肺の転移性腺癌, 胸膜, 肝臓, 骨転移. 骨盤癌腫症


 WBC 87300/µL, Neu 54%, Eo 31.0%. 


 GM-CSF分泌腺癌であることが判明

(Clin Case Rep. 2019 Nov 27;8(1):9-12.)

・61歳男性. 肺非小細胞癌


 WBC 77400/µL, Eo 30-40%. 血清GM-CSFは385pg/mLと上昇.


 一方でIL-3やIL-5の上昇は認められず.


 胸水より採取された腫瘍細胞と好酸球の亜集団よりGM-CSFの産生が証明された.

(Lung Cancer 76 (2012) 493–495)


日本からの報告

・71歳男性, 転移性の胸壁腫瘍. 組織は分類不能(Large cell type)


 WBC 18100/µL(経過中のMax 48300), Neu 53.5%, Eo 31.5%(Max 37.5%)


 血清G-CSFは正常範囲(3.6pg/mL), GM-CSFは112pg/mL(正常<2.0)

(Jpn J Clin OncoI 1998;28(9)559-562)

・72歳男性, 甲状腺癌


 WBC 36200/µL, Neu 65%, Eo 26%.


 G-CSF 150pg/mL, GM-CSF 459pg/mLと双方上昇


 IL-3, IL-5は正常範囲

(Internal Medicine 1996;35:815-820)


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実際探してみると, 5例ではなく7例. 日本国内から2例(医中誌調べたらもっとあるかも)

そのほぼ全例でGM-CSFの関連が示されている.

傍腫瘍性LRではG-CSFが産生され, Neuが上昇することが多いが, GM-CSF産生腫瘍の場合にはこのNeu-Eo LRとなる例があると考えられる.