全身性の疼痛でPMRと診断, 治療されていたが, 徐々に炎症反応コントロールがつかなくなり, 皮膚病変を生じはじめた高齢女性.
皮膚は体幹は皮膚硬化や色素沈着を伴い, 四肢末梢は隆起性の掻痒感を伴う丘疹, また固い白色〜透明感を伴う小結節であり, 広範囲に拡大.
PMRではないだろう, ということで精査すると, IgGλ型のM蛋白血症が認められた
さて, POEMSやMM, ALアミロイドーシスなど, M蛋白を認める疾患ではどのような皮疹となるのか?
というようなClinical Question.
参考にしたReview
(JEADV 2017, 31, 45–52)
(Blood Cancer Journal (2022)12:58 ; https://doi.org/10.1038/s41408-022-00661-1)
M蛋白血症に伴う皮膚病変は主に腫瘍性形質細胞の浸潤と, M蛋白自体の皮膚沈着, またそれによる免疫や炎症反応により生じる.
・疾患としてはPOEMS症候群, AL amyloidosis, Schnitzler syndrome, Scleromyxedema, TEMPI症候群で認められることが多い.
・皮膚病変の性質や原疾患から4つのグループに分類される
G I: 腫瘍性形質細胞疾患によるもの; 細胞浸潤, 腫瘍性M蛋白の沈着
G II: 非腫瘍性疾患によるもの; M蛋白の沈着, 自己抗体やサイトカインによる炎症, 機序が不明確なものも含まれる.
G III: 症例報告レベルのM蛋白疾患に合併した皮膚病変
G IV: M蛋白に関連するが, 特異的なものではない; 薬剤や過粘稠による出血, 感染症なども含まれる.
主に問題となるのがG I, G II
疾患/病態(Group I) | 皮膚所見 |
POEMS | 色素沈着, 先端チアノーゼ, 多毛, 毛細血管拡張, 皮膚肥厚体幹や四肢近位部の赤紫色の皮疹も認められる. |
WM | 四肢伸側面の小さな真珠光沢を有する丘疹 |
AL amyloidosis | 早期では刺激部位の紫斑 眼窩周囲, 顔面の紫斑 ドーム状, 蝋状, 半透明の外観を持つ丘疹 |
Cryoglobulinemia(M蛋白関連ではType 1) | 炎症性皮疹, 丘疹, 出血性痂皮, 先端チアノーゼ, 網様皮斑 |
Plasmacytoma(皮膚形質細胞種) | 赤色, 紫色, 非圧痛性結節で, しばしばびまん性の紅斑を伴う |
・POEMSでは強皮症様の皮膚変化となるのがポイント. レイノー現象も認められ, 初期に強皮症と間違えられることもある. CIDP様の末梢神経障害やTP/Alb解離に注意する.
・WMでは真珠光沢を有する丘疹. 水疱, びらん.
・AL amyloidosisでは色々な皮膚病変がある. 血管への沈着による紫斑は早期に認めらる. 第X因子の欠乏による眼窩周囲の紫斑はアミロイドーシスに有名な所見の1つ.
他には強皮症様の皮膚変化や丘疹, 蝋状の皮膚など様々. 爪の変化もある.
巨舌の確認も忘れずに.
Group IIにおける疾患と皮疹
疾患/病態(Group II) | 皮膚所見 |
Schnitzler症候群 | 慢性蕁麻疹様皮疹(薔薇色, 赤色の紅斑, 軽度隆起した丘疹) |
Necrobiotic Xanthogranuloma | 固い黄色, オレンジ色の丘疹, 斑, 結節を特徴とする非ランゲルハンス組織細胞症. IgG-κのM蛋白との関連が強い |
Plane Xanthoma | 眼窩周囲, 頭部, 頸部, 体幹, 肩, 四肢などのびまん性の平面黄色腫 |
Scleromyxedema | 強皮症に類似した皮膚病変で, 皮膚のムチン沈着が認められる M蛋白は90%で認められ, 主にIgGλ型 |
Scleredema | 溶連菌感染やM蛋白性疾患に伴う稀な硬化性皮膚疾患. |
・Group IIは結構稀な病気が多い
・高脂血症以外に黄色腫が生じる疾患としてM蛋白関連は覚えておくと良いかもしれない
黄色腫はどのタイプも眼窩周囲で多い(60%). 次いで体幹(48%)や手足(46%)で認められる.(Blood. 2011;118(14):3777-3784)
・また皮膚が硬化することも多く, 強皮症やモルフィア, 好酸球性筋膜炎との鑑別の際にも重要