(Clinical Infectious Diseases® 2022;74(8):1442–9)
黄色ブドウ球菌菌血症(SAB)の10-20%で心内膜炎を合併するため, SAB症例では心エコー(特に経食道)による評価は重要である.
・ IEの合併を予測する, 除外するスコアとして, POSITIVE, PREDICT, VIRSTAスコアがある.
・どのスコアも血液培養の陽性が含まれているが,
POSITIVEでは陽性までの時間
他2つは治療開始後フォローの陽性が含まれる.
・また, 心疾患の既往やデバイス, 塞栓症状, 感染の状況が重要
感染の状況: IV drug use, 院内や施設内感染.
オランダの7施設において, 成人例のSAB症例を前向きにフォローし, 上記3つのスコアとIEリスクを評価.
・複数回のSABを繰り返している患者は, 初回の1回のみを導入
48h以内に死亡した症例は除外された
・SAB患者は90日間フォローされ, IE合併を判断
2017年〜2019年に対象SAB 637例を診断. このうち77%(491例)で同意をとり導入.
・さらに14例は48時間以内に死亡し, 477例で評価された.
・IEの合併は87例で診断(18.2%)
63例は2 major, 24例は1 major + ≥3 minorを満たす
外科的, 病理で確定された症例は17例
Native valve 53例, 人口弁 20例, 埋め込み型デバイス 14例
各スコアの感度, 特異度
・カットオフはPOSITVE >4, PREDICT ≥2, VIRSTA ≥3
・特異度はどの指標も不十分.
感度はVIRSTAが最も良好で, この患者群におけるNPVは99.3%
他の指標ではNPV 92.5%, 94.5%と5%以上でIEを逃す
・PREDICT Day 1は早期にTEEを行う患者群を抽出する指標として使用可能. PPV 66.7%.
まとめるとSABにおいて,
・心臓内デバイスがある場合
塞栓症状/所見,
感染播種(髄膜炎)がある場合
心疾患やIE既往がある場合 は早期にTEEを行うべき
・院内や施設発症のSAB, IV drug useでのSABでは, 血液培養の陽性のタイミングや治療開始後の持続的血液培養陽性(48-72h)での結果を見てTEEを考慮.
・そういったリスクがない場合(特にVIRSTA <3)では, IEリスクは低く, TTEで代用, また菌血症としての治療が考慮される. (TEEが可能な施設や患者の状態がゆるせばTEEが優先されるでしょうが)