結核性胸膜炎では胸水中のADAが上昇(≥40 U/L)することは有名.
一方で, 肺炎随伴性胸水や膿胸, そして非特異的胸膜炎やリウマチ性胸膜炎でもADAは上昇し, たまに鑑別に困ることがある.
その時に, 胸水中のLDH/ADAの比が鑑別につかえるかも, しれない.
(J Clin Microbiol. 2018 Jul 26;56(8):e00258-18.)
ニュージーランドの施設において, 1637例の胸水検体を評価.
・結核性胸膜炎は57例
・各病態における胸水ADA, LDH, LDH/ADA比
胸水ADAはTBでは高値となるものの, 感染症や悪性腫瘍でも高値となる例がある.
・胸水ADAが上昇(≥15, または≥30 U/L)の患者において, LDH/ADAをチェック. <15では結核性の可能性が強まる.
南アフリカ, ケープタウンの施設において, 結核性胸膜炎が疑われた患者群を前向きに抽出.
(Respiration. 2021;100(1):59-63.)
・結核性胸膜炎と確定診断された160例と他の診断であった68例の胸水LDH/ADA比を評価. 比較した報告.
・非結核例では悪性腫瘍. 非特異的胸膜炎, 肺炎随伴性など.
・ADAは結核性胸膜炎と肺炎随伴性で高値となりがち.
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胸水ADAの上昇, 且つLDHがそこまで上昇していない, というのが結核性胸膜炎のポイント
同様にADAが上昇する感染関連の胸膜炎との鑑別はこの点で可能そうではある.
個人的には, 非特異的胸膜炎 → 後にIgG4胸膜炎であった症例において, 結核性胸膜炎と類似した胸水所見を示した経験がある.
実はこの疾患でもLDH/ADA比は低値となるので, 鑑別点にはなり難い.
また, RA関連胸水でも鑑別に迷ったことがある.
RA関連胸水でもADAは上昇するが, 膿胸に似ており, LDHも著明に上昇する.
したがって, これとの鑑別はできるかな, という印象はある.
こういった胸水マーカーのStudyでは, 膠原病関連は母集団に含まれていないことが多く,
免疫抑制が治療となる膠原病での胸水貯留鑑別の道はまだまだ遠い.