献本御礼
器質か心因か 尾久 守侑先生
この本は器質性疾患と心因性疾患の鑑別をテーマとした内容ではない。
むしろクリアカットに分類するのではなく, 双方の要素をどう考えて, 病態や症状を理解するかということを説明している.
心因反応は器質的疾患でも生じるため、両者の鑑別にこだわると片手落ちとなる.
特に心因性疾患だ、と判断してしまうと、その背景の器質的疾患を見逃す可能性もある。
またその逆で、器質的疾患に合併した心因反応を蔑ろにすると、患者の治療もうまくいかないことが多い.
特に第3章の心因反応の方程式 の項は秀逸
心因反応の大きさを評価する方程式に
= 患者のもともとの脆弱性 + 身体因の脳への侵襲 + 心因 の要素を考慮する、という内容であり、症例Baseで様々な教訓的な症例が簡単に解説されている。
思わず、あるある! とうなづいてしまう症例から、
へーーこんなものがあるのか! と勉強になるものまで。
一般内科外来や救急外来対応をしている医師ならば、必ず経験したことがあるエピソードも多い。
この点では、是非研修医にも読んでもらいたい。ただ、研修医にこの点の妙がわかるかどうか、、、ちょっと早いのかも。でも読んで欲しいなぁ。
また内科外来をする一般内科医も、専門医も一回は目を通して欲しいと思う。
世界が広がります。
自分が読んでいて、一番興奮したところは、
どの薬剤を使用しても、副作用を訴えてすぐに中断してしまう患者の一節
「著しいノセボ反応がどの薬剤に対しても起こってやめてしまう場合は、そもそも患者さんが身体疾患ではないと思っている、または向精神薬で治療するというモデルを無意識で受容できていないと考えるべきである」
これはハッと気付かされた。これだけでも読んで良かったと思えた部分である。
これ、確かに多いんです。もはや、「この人、絶対副作用くるわー」ってわかるくらいの嗅覚は鍛えられました。その嗅覚は上記のような患者さんの雰囲気を感じていたのだと、気付かされました。