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2014年8月19日火曜日

肝細胞癌

肝細胞癌 Hepatocellular carcinoma
Clin Biochem Rev 2005;26:65-79

世界で6番目に多い悪性腫瘍, 3番目に多い腫瘍死の原因
 中国, 東アジア, アフリカ中部, 西部で最多発症頻度(>20/100000)
 日本, 南ヨーロッパ, スイス, ブルガリアでは中等頻度(10-20/100000)
 北ヨーロッパ, オーストラリア, ニュージーランドでは低頻度.
男性での発症が多く, 4:1程度(2-8:1, 地域によりバラツキあり)
好発年齢は様々だが, 基本的には40歳以降が多い
HCCの80%がHCV, HBVに起因するもの
 日本国内では, HCCの25%がHBsAg陽性, 76%がHCV抗体陽性.
 他にはAflatoxin, 喫煙, アルコール, 経口避妊薬, ヘモクロマトーシス, Tyrosinaemia, Hypercitrullinaemia, α1-Antitrypsin欠損, Type I, II Glycogenesis, Wilson病などが原因となる.

肝細胞癌の発症頻度
Lancet 2012; 379: 1245–55 Hepatology 2002;36:S84-S92
HCV感染患者のHCC発症率は年間0-1.6%, C型肝硬変では3-5%
 肝硬変患者では年間発症率1-6%と高値
 HCVは大半が肝硬変から肝細胞癌へ進展する一方, HBVでは慢性肝炎からでも肝細胞癌へ進展し得る. → HBVではスクリーニングが特に重要.

国内734名(慢性肝炎, 肝硬変患者)の1-1.1yrフォローでは, (Am J of Gastroenterolo 2000;95:1036-40)
 肝硬変患者では約10%でHCC発症.
 C+Bの混合感染ではRisk高い
Group
N
HCC発症頻度
C型慢性肝炎
295
1.4%
C型肝硬変
27
7.8%
B型肝硬変
268
10.0%
C+B肝硬変
4
22.7%

HBV DNAと肝細胞癌のリスク
HBs-Ag(+), HCV(-)の3653名 (JAMA 2006;295:65-73)
 ALT < 45IU/L(94%), HBe-Ag(-)(85%), 肝硬変(-)(98%)
 11.4yr follow (41779pt-yr), HBV DNA levelと癌発症Riskを評価
DNA Level
蓄積発症率*
HBe-Ag(-)
+ ALT正常
+ 肝硬変(-)
<300/mL
1.30%
1.20%
0.98%
0.74%
300-104/mL
1.37%
1.21%
1.25%
0.89%
104-105/mL
3.57%
3.68%
3.42%
3.15%
105-106/mL
12.17%
9.54%
8.55%
7.96%
>=106/mL
14.89%
17.88%
19.51%
13.50%
*13年間の蓄積
癌発症のRisk Factor
Factor
全患者 HR
男性
2.1[1.3-3.3]
年齢(1yr増加毎)
1.09[1.07-3.3]
肝硬変
9.1[5.9-13.9]
HBV DNA

< 300/mL
1.0 (RS)
300-104/mL
1.1[0.5-2.3]
104-105/mL
2.3[1.1-4.9]
105-106/mL
6.6[3.3-13.1]
>=106/mL
6.1[2.9-12.7]
ウイルス性肝炎以外の肝細胞癌のリスク因子
Meta-analysisより World J Gastroenterol 2010 August 7; 16(29): 3603-3615
Factor
RR


Overweight
1.17[1.02-1.34]
アルコール 25g/d
1.19[1.12-1.27]
肥満
1.89[1.51-2.36]
アルコール 50g/d
1.40[1.25-1.56]
糖尿病
2.50[1.93-3.24]
アルコール 100g/d
1.81[1.50-2.19]
コーヒー(2/d)
0.57[0.49-0.67]
喫煙
3.3[1.2-9.5]
経口避妊薬
1.57[0.96-2.54]


アルコール性肝硬変での肝細胞癌のリスク
デンマークで1993-2005年にアルコール性肝硬変と診断された8482名のCohort study.
Ann Intern Med. 2012;156:841-847.
 HBV, HCV陽性患者は除外.
 HCCの発症率は, 肝硬変診断から1年以降の発症と定義. (肝硬変診断時にHCC+例を除くため)
 死亡率も肝硬変診断後1年以降からの死亡を評価.
アルコール性肝硬変患者のHCC発症リスクは5年で1%.
それよりもそのような患者群では5年死亡率は44% !
 HCC診断された169名中, 死亡したのは151名.
 HCC診断〜死亡までの期間は, 限局性のHCCでは97d[29-388], 非限局性HCCでは37d[10-137].

アルコール性肝硬変患者ではHCC自体が予後に関係する事は少ない.
そのような状態こそがもう末期の証拠と捉えられる.

肝細胞癌のスクリーニング
Surveillance推奨群 BMJ 2009;339:b5039
対象
以下の患者でHBV感染(+)の場合
 Asian-Pacific men >40yr
 Asian-Pacific women >50yr
 Those with cirrosis
 Those with a family history of hepatocellular carcinoma
 Africans over 20 years
以下の原因の肝硬変患者
 HCV
 アルコール性肝障害
 Genetic haemochromatosis
 Primary biliary cirrhosis
以下の原因の肝硬変患者.
(
スクリーニングによる利益は不明だが, HCC Riskあり)
 α1 antitrypsin欠損症
 NASH
 自己免疫性肝炎
 スクリーニングは半年毎
 エコー, AFP測定がCost-effective
 USは感度94%と良好だが, 早期では63%と低い
HCVで肝硬変(-)群ではスクリーニングの必要無し.
 HCVでは肝硬変からの肝癌発症が殆ど

エコーが出来る場合はAFPでスクリーニングを行う必要は無し
(AFP測定にてエコーで見逃したHCCを発見することは無理)
 AFPはCutoff 20mcg/LでSn 60%, Sp 90.6%

>2cmのMassでは基本Biopsyは必要なし
 US, CT, MRIでHCCに特徴的ならば診断可能
 AFP >200mcg/L + 画像所見にてBiopsy無しで確定可能.
1-2cmのMassでは
 画像所見にてHCCに特徴的とは言えない場合, Biopsyが推奨.
 BiopsyによるTumor seedingのRiskは2.7%
<1cmのMassでは
 3-6mo毎にエコーフォローを行う
 2yr変化なければそのまま通常のスクリーニングに戻る.
N Engl J Med 2011;365:1118-27.

HCV慢性肝炎患者に対するHCCスクリーニングの利点
HCV患者におけるスクリーニングのSystematic Review Hepatology 2002;36:S84-S92
 2回/yrのAFP + US Screening
 56moのフォローにてScreening群で6.7%, Control群で5.5%でHCC(+)
 単一腫瘤, <3cmの早期で発見できたのは75% vs 16%と, 2回/yrのScreening群では早期発見率が高い.
 Screening群でHCCが発見された24名中, 11名は発見時AFP陰性であった.

ただし慢性肝障害患者を対象としたスクリーニングのMeta-analysisでは, 慢性肝障害患者における定期的なHCCスクリーニングの異議は未だEvidence不足と結論づけている.
 スクリーニングは早期HCCの検出頻度は増加させるが, 予後への関わりは不明瞭のまま.
 またスクリーニング自体による悪影響の評価不十分.
Ann Intern Med. 2014;161:261-269. 

肝細胞癌の検査
腫瘍マーカー World J Gastroenterol 2009;15:1301-14
国内でよく使用されるのはAFPとPIVKA-II
α-Fetoprotein; 胎児の肝臓で生成される70kDaのGlycoprotein.
 慢性肝疾患において, 高度に分化した肝細胞が生成する他, 肝細胞癌, 胚性癌腫, 胃癌, 肺癌で上昇を認める.
 
肝細胞癌に対するSn 39-65%, Sp76-94%
 >400ng/mLではより巨大なHCCを示唆
 >1000では血管浸潤を示唆 (61% vs 32% in =<1000)
AFPの3分画
AFPにはAFP-L1, 2, 3の3分画存在
AFP-L1; non-LCA-bound fraction:  非悪性腫瘍性慢性肝疾患ではL1上昇を認める.
AFP-L3; Lens culinaris-reactive AFP: HCC患者で上昇を示し, <3cmのHCCでは1/3で上昇を認める.
Cutoffは10-15%.
Cutoff 15%とした場合, Sn 75-97%, Sp 90-92%と良好.
Mass<2cmではCutoff 10%とすると良好な結果が得られる.

PIVKA-II(DCP)
Des-gamma carboxyprothrombin(DCP)
 DCPはHCC患者, Vit-K欠乏患者, Warfarin内服患者で上昇するProtein
 Prothrombin前駆体のCarboxylationが阻害されることで生じる.
 Cutoff 40mAU/mLでSn 48-62%, Sp 81-98%

AFP, AFP-L3, PIVKA-IIの3つのマーカーが国内では使用可能.
 PIVKA-IIはHCCと肝硬変の鑑別に最も有用(Sn 86%, Sp 93%)
 ただし, PIVKA-IIはHCCの大きさに依存するため,  小型のHCCではAFPの方が有用.
Test*
Cutoff
Sn(%)
Sp(%)
AFP
200ng/mL
13.8%
97.4%

20ng/mL
62.1%
78.3%
PIVKA-II
100mAU/mL
24.1%
98.7%

60mAU/mL
41.4%
90.9%
AFP+PIVKA-II
40ng/mL, 80mAU/mL
65.5%
84.5%
World J Gastroenterol 2009;15:1301-14 *Am J of Gastroenterolo 2000;95:1036-40

その他のマーカー
Marker
説明
Cutoff
Sn(%)
Sp(%)
CA125
男性12U/mL, 女性55U/mL
92%
48.5%
α-I-fucosidase(AFU)
哺乳類のLycocomeに存在
LC, HCC
で活性増加
870nmol/mL
81.7%
70.7%
Glypican-3(GPC3)
細胞表面のGlycoprotein
GPC3 mRNA
HCC,
胎児, 胎盤にのみ認める
GPC3染色陽性
83.3%
96%
Scc antigen(SCCA)

0.37ng/mL
84%
49%
Golgi protein 73(GP73)

10U
69%
75%
Hepatocyte growth factor(HGF)
HCCの予後因子として有用
1.0ng/mLPoor survivalを示唆
Transforming growth factor-β1(TGF-β1)

1.2mcg/L
89.5%
94%
Vascular endothelial growth factor(VEGF)
HCCの予後因子として有用
245pg/mLPoor survivalを示唆
World J Gastroenterol 2009;15:1301-14 Clin Biochem Rev 2005;26:65-79

エコーによるHCC検査 World J Gastroenterol 2009;15:1301-14 
腹部エコー
 エコーの像は非特異的であり, 肝硬変患者において>1cmのMassがあればHCCとして精査すべき (Sn 65-80%, Sp >90%)
Color Doppler US
 門脈の血栓 or 腫瘍性閉塞の検出に有用(HCC患者において)
 Sn 92%, Sp 100%
Contrast enhanced US(CEUS)
 造影剤(ソナゾイド®)を使用することで, Massの特性(血流)を判定.
 肝動脈相(10-20s), 門脈相(投与後~120s), 実質相(4-6min)で評価.
 造影CTと同等の感度87%を示し, さらに腫瘍の大きさにより感度の低下を認めない利点がある.

CT, MRIによるHCC検査
Multiphasic helical CT
 4相でCT評価; 造影前, 動脈相(25s), 門脈相(70s), 遅相(300s)
 肝細胞癌に対するSn 80%, Sp 96%
 腫瘍の大きさに左右され, Mass >2cmではSn100%だが, 1-2cmでは93%, <1cmでは60%まで低下
 造影USと造影CTを比較したStudyでは,
 造影US; Sn 91.1%, Sp 87.2%
 造影CT; Sn 80.4%, Sp 97.9% とほぼ変わらない結果.

Multidetector helical CT(MDCT)
 Early(18-28s), Late(35-45s) arterial phaseを評価する撮影方法
 HCCに対しての感度が良好. (97.5-97.6%)
 造影MRIと同等(vs 90.7-94.7%)だが,  HCC=<1cmに関してはMDCTの方が高感度(90-95% vs 70-85%)
MRI
 HCCはT2で高信号, T1では様々な信号パターンを示す.
 造影ではCT同様, 早期相で高信号 → 等信号 → 低信号の経過.

肝細胞癌の診断
肝細胞癌の診断は病理学的診断がGold Standardではあるが, 非侵襲的な診断方法として,
肝硬変患者において, 以下を満たす場合に診断可能
EASL consensus 2001
Radiological criteria
2種類の画像検査で>2cmMassを認め, Hypervascularである場合.
Combined criteria
1種類の画像検査で>2cmMassを認め, AFP>400ng/mLを満たす
AASLD criteria 2006
Focal lesion=< 2cm, 2種類の画像検査で認め, 動脈相で濃染, 静脈相でWashoutを認める
Focal lesion >2cm, 1種類の画像検査で認め, 動脈相で濃染, 静脈相でWashoutを認める

ちなみにHCCの針生検により, HCCが播種する確率は,
 8つのTrialのMeta-analysisの評価では, 全体で2.7%[1.8-4.0], 1年間のリスクは0.9%/yr[0.6-1.3]
Gut 2008;57:1592–1596.

肝細胞癌に対する治療 N Engl J Med 2011;365:1118-27.
手術治療;
 肝硬変(-)の早期HCCで適応となる. → 主にB型肝炎によるHCC.
 肝硬変(+)ならば, 腫瘍サイズ<3cm, 門脈圧亢進(-), Bil正常範囲ならば適応
 5年再発リスクは70%. これは基礎疾患によるもの.
Radiofrequency ablation; 
 腫瘍径2-3cmのHCCで適応.
 外科手術, 移植不能例でも施行可能.
Transarterial chemoembolization and radioembolization(TACE); 
 肝機能が保たれているHCCで適応.
 肝硬変があっても, Child-Pugh A程度ならば施行可能.
 血管浸潤や遠隔転移は適応外.
 肝移植のneoadjuvant therapyとしても施行される.
 術後50%で腹痛, 発熱を併発(肝梗塞による症状)
Targeted molecular therapy; 
 Sorafenib; smallmolecule multikinase inhibitorがHCCに有効との報告あり.

Lancet 2012; 379: 1245–55

Sorafenib(ネクサバール®)
Multikinase inhibitor; VEGF, PDGF, Raf, c-Kitを阻害する
 増殖, 血管新生, 腫瘍進展を抑制し, 予後を改善させる.
602名のPhase 3, DB-RCTでは,
 Sorafenib群の平均生存期間は10.7m[9.4-13.3].
 Placebo群では7.9m[6.8-9.1], HR 0.69[0.55-0.87]
この薬剤, 200mg錠で5426円. 800mg/dで月65万円...
費用に見合う効果があるのかどうか...?
現在1500名以上を対象としたphase 4 trialが進行中 (GIDEON trial; J Clin Oncol 2011;29:4001)

肝細胞癌の予後 BMJ 2009;339:b5039
無症候性の患者では1,2,3yr生存率は80%, 65%, 50%
Child-Pugh class Aで単一のHCCならば5年生存率は80%
切除不能例では予後不良. 1, 2yr生存率は10-72%, 8-50%
無症候性, 多発性のHCCで血管, 肝外浸潤(-)では平均生存期間は16mo

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