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2014年8月15日金曜日

急性膵炎 Acute pancreatitis: 治療

急性膵炎の治療について

輸液
膵炎では、体液は後腹膜腔, 腹腔, 腸管, 胸腔に逃げるため, 低循環が生じる. そのため大量補液が必要となり, 最初の24hrで5-10Lの輸液が必要となることもある.
ColloidとNSのどちらが優れているかというStudyは無いが, colloid : NS = 1 : 3とする場合が多い.
輸液管理では, CVP, 尿量, Htを指標として調節することが多い.(特にICU入室患者において)
 CVP: 8-12cmH2O 
 Ht: 30-35%に維持
 尿量 > 0.5ml/kg/hr を目標とする.

輸液の速度は250ml/h程度が良い Chin Med J 2009;122(2):169-173
中国での単一施設のRCT; 重症膵炎発症<72hrの76名を, 10-15ml/kg/hr vs 5-10ml/kg/hrに割り付け.
 補液は “Fluid expansion criteria”を満たすまで継続し, 各Outcomeを比較.
 補液は外液とコロイド(6% hydroxyethylstarch)を使用.  2:1の割合.
 “Fluid expansion criteria” は HR<120, MAP 65-85, UO>1ml/kg/h, Ht ≤35%の2/4を満たしたときに達成と判断.

患者群のBaseline;
アウトカム:
補液ゴールに達成した時間は,
 急速補液群で13.5±6.6hr
 緩徐補液群で24.0±5.4hr. と急速補液群では半日程度でGoalを達成する.
初日の補液量は当然急速群で多いが, 4日までの合計補液量は同等であった.

人工呼吸器管理, ACS合併率, Sepsis合併率, 死亡率は有意に急速輸液群で増悪するという結果.

重症膵炎115名を対象としたRCTでは,
 最初の48hr以内にHt<35%を目指す群と3d以降に達成する群で比較.
 >> 治療開始後3日以降に<35%Htを促す群の方が予後良好との結論. (死亡率, 敗血症合併率) 
Chin Med J 2010;123(13):1639-1644

結論としては,
急性膵炎では大量補液が必要なものの, 速度は5-10ml/kg/h程度(大体250ml/hr)とし, 1日かけてVol statusを改善させてゆくのが良いと考えられる.
速すぎれば余計3rd spaceに漏出し, 状態悪化させる可能性が高い.
指標としてはHtの低下が使用できるかも.

疼痛管理
プロテアーゼ, Tissue Necrosis Inflammatory Mediators
 → 炎症性疼痛 → 内臓痛 
 → T5-T9 腹腔神経叢の直接刺激 → 体性痛. 膵炎では内臓痛と体性痛の双方を伴う.
鎮痛に対しては, NSAIDと中枢抑制性鎮痛薬の併用が推奨される
 モルヒネはOddi括約筋を収縮させるので使用しない方が良い.
 Opiatesの中には嘔気、嘔吐を来たす物があるので注意
胸部硬膜外麻酔は除痛効果は優れ、Opiatesの使用量も減少させる
 腸管運動を抑制し、イレウス発症リスクがあるので注意

膵炎疼痛管理にはソセゴン®, レペタン®が有用.
急性膵炎27例, 慢性膵炎の増悪13例のRCT. Scand J Gastroenterol 2000;35:1319– 1323
 疼痛管理目的に Buprenorphine(レペタン) vs Procaine DIVに割り付け.
 Buprenorphine 0.3mg IV, 以後 2.4mg/dで持続注射 (0.1, 0.2mg/1アンプル)
 Procaine(塩酸プロカイン1g) 2g/dを持続注射(1g/50mlで使用)
 治療は最大72hrまで継続. 鎮痛の必要がなくなれば終了.
Outcome; 鎮痛効果は有意にレペタン持注が効果良好.

副作用は, レペタンのほうがやや鎮静作用が強い. 嘔気は双方とも認められる.

急性膵炎患者107名のopen-label RCT Digestion 2004;69:5–9
 Procaine 2g/24hr持続注射 vs Pentazocine 30mg IV q6hrに割り付け.
 Procaine(塩酸プロカイン1g
®), Pentazocine(ソセゴン, ペンタジン15,30mg)
Pain scoreの変化では, 有意にPentazocineの方が鎮痛作用が強い.
また, レスキューとしてPentazocineを使用するが, 経過中のPentazocine使用量の総量は, 両群でほぼ変わらない値.

(Procaine群ではレスキューとしての使用量が多く, 全体としてPentazocineの使用量は同等)

疼痛管理としてはレペタン®, ソセゴン®は効果良好と考えられる.
レペタンは0.2mgアンプルを12Aも使用する必要がある一方,
ソセゴンでは15mgアンプルならば1日に8A, 30mgアンプルならば4Aで済む点から使用しやすい.

個人的には, ソセゴンを15mg q6hで使用しつつ, レスキューとして15mgを1日4回まで使用可という指示を出すことが多い.
その後疼痛に応じて, 15mg q8h, q12hと感覚をのばし, 中止する方法をとると旨く行くことが多い.

栄養管理
可能ならば経腸栄養を行う.
 腸管栄養を継続する事で、細菌叢構成の維持, 細菌感染の予防につながるといった見解が強い (BMJ 2004;328:1407-1413)
 感染性合併症; 10.4% vs 28.2%, RR0.45[0.26-0.78]
 非感染性合併症; RR0.61[0.31-1.22]
 死亡率; RR0.66[0.32-1.37]
 在院短縮(日); -2.9日[1.6-4.3日]
 外科手技必要性; RR0.48[0.22-1.0]

また, 経腸栄養ではCRPの減少, 肺合併症の減少が報告されている
 経腸管栄養は継続し、足りない栄養をIVにて補うカタチが良いと考えられる.
 経口が無理ならば最初はTube feedingから開始する.

NG tube vs NJ(Nasojejunal) tube
 NGでも膵臓刺激効果は無い. 挿入しやすい分, NGが好まれる.

経口, 経腸栄養
 開始に伴う疼痛は21%で認められる
 疼痛の再発は経口摂取開始後、1-2日で一番多い(半数)
どの様にして始めるか?
 消化しやすい食事より開始する (オススメはエレンタール, NGより)
 疼痛が消失した患者から開始する
 開始時期の一定した見解は無い, 血液検査でフォローしながら慎重に開始
 LIP, CRPが減少してからという意見もある
 脂肪制限食より開始, 徐々にカロリーUP
 20-30mL/hrで開始し, 数日で100mL/hr (25-35kcal/kg/day)まで増やす.

感染症予防
感染性膵壊死の死亡率は70-80%
腸管からの感染が殆ど
 E.coli, Klebsiella, Staph, Pseudomonasが多い
 非吸収性の抗菌薬、Neomycinにて感染減少の報告がある
軽症膵炎には使用しない: 耐性菌の出現リスクとなる
膵壊死を認めた場合は使用すべき
 膵壊死の25-72%で感染を合併
 発症2-4週で膵壊死の感染が起こりやすい
 アミノグリコシドの膵移行性は悪い
 膵壊死に対して早期に抗菌薬使用することで予後改善
抗菌薬使用患者の20%で真菌感染の報告
 Meta-analysisでは抗生剤使用の有無で真菌感染率は有意差無し
 抗生剤(+) vs (-) で4.9% vs 6.7%(P=0.99)
(Ann Surg 2006;243:154-68)

Imipenemの投与は感染性合併症(ライン, 肺, 尿路, 膵壊死)を予防し得る (Surg Gynecol Obstet 1993;176:480-3)
セフロキシム(第二世代セフェム)の投与は感染症(30 vs 54%), 死亡率(3% vs 23%)を改善する
シプロフロキサシン + メトロニダゾールはプラセボと比較しても有意差なし (Proc Am Thorac Soc 2004;1:289-90)

発症120hr以内の壊死性膵炎患者, 重症膵炎患者100名RCT
(Ann Surg 2007;245:674-83)(Multicenter, DB, RCT, ITT)
 造影CTにて>=30%の壊死組織を認める
 造影不可能例では, 多臓器不全, CRP>12, 単純CT所見で評価.
 Meropenem 1g q8hr for 7-21d vs Placeboに割り付け, 最低35dフォロー
Outcome; FNA, 外科的生検で診断した, 膵, 膵周囲感染症
 膵, 膵周囲感染症の頻度 18% vs 12% (p=0.401)
 Onset~感染までの期間 21d[5-35] vs 21d[11-25]
 手術適応となった例 26% vs 20% (p=0.476)
 膵, 以外の感染頻度 32% vs 48% (p<0.20)
 死亡率 20% vs 18% (p=0.799)
抗生剤投与 or Notで感染頻度に差は認められなかった.

推奨される抗生剤;
 ImipenemとMeropenemの効果は同等であり, カルバペネム系抗生剤が推奨される?
(Ann Surg 2006;243:154-68)
 壊死性膵炎患者でのみ抗生剤は推奨される.

Probioticsの投与は感染率, 死亡率に影響を及ぼさない
298名の重症膵炎のRCT; Probiotics vs Placebo for 28d.
 感染症合併率は30% vs 28%, RR 1.06[0.75-1.51]
 死亡率は16% vs 6%, RR 2.53[1.22-5.25] (Lancet 2008;371:651-9)
死亡率が上昇する結果だが, 他のRCTでは有意差無く, 結論がでるまでは投与すべきではない.

タンパク分解酵素阻害薬
議論が分かれるところ. 個人的には使用していません.
蛋白分解酵素阻害薬を使いたいと言う場合のために
メシル酸ガベキセート; プロビトール100mg, 500mg
 20-39mg/kg/dayが投与量, 重症膵炎では大量投与のみ効果を示す可能性があるため、MAXで100mg/50mLで溶解
メシル酸ナファモスタット; フサン10mg, 50mg
 50mg x5 + 5%TZ 250mLに溶解, 動注で24hr
ウリナスタチン; ミラクリッド25000, 50000, 100000U
 25000-50000Uを500mLに溶解し、1-2hrでDIV. 1-3回/day. DICなら2倍量

蛋白分解酵素阻害薬のエビデンス
仮性膵嚢胞, 膿瘍, 外科適応例の減少には寄与しない
重症, 中等症膵炎において死亡率の低下を若干認める程度
Risk difference; -0.07[-0.13 to -0.01] 
(European J of Gastroenterol Hepatol 2004;16:1287-93)

メシル酸ガベキセートの2 RCTの評価では, 手術適応例 (p=0.46), 死亡率 (p=0.46)は有意差なく, 重度の急性膵炎でも用いることは推奨されない(Level A) (Ann Surg 2006;243:154-68)

動注療法のエビデンス 
重症膵炎<72hrの78名のRCT. 動注療法 vs 非動注療法で比較 Pancreas 2010;39: 863-867
 動注療法群(Nafamostat mesylase 240mg/d, Imipenem 1g/dを動注を5日間, その後Imipenem 0.5g q8hrでDIVを9日間)
 非動注療法(Imipenem 0.5g q8hrを14日間継続)
 動注療法群のほうが有意に手術例, 死亡率を軽減させるという結果.
ただし, これには異議が多く, 母集団の差が結構ある. また, 動注療法群では脱落率が21%と高く, Study自体に難ありとの見方もある.

日本国内のRetrospective propensity-score matched cohort. Critical Care 2013, 17:R214
 17415例の急性膵炎症例で, 287例で動注療法を施行(1.6%)
 その内207名でPropensity-score matched pairを作成し, 両群を比較.
母集団データ

アウトカム; 院内死亡率は有意差無し.
動注療法群の方がより長期間の入院, 多くの費用が必要となる.
また, 挿入することによる合併症の心配も多い.

タンパク分解酵素阻害薬や動注療法に関しては, 行う施設と行わない施設で分かれるが, 有用性については未だ結論を得ていない状態.
Abdominal compartment syndromeのエントリーでも書いたが, 動注療法でACSが予防できるならばやる価値はあると思われる. 誰かその視点でStudyを組んでいただけると興味深い.

急性膵炎に対するERCP
ERCPの適応
 胆石性膵炎の場合, 70%が自然排石される → 基本的に適応外
 胆管炎の合併, 閉塞性黄疸などあれば適応
 総胆管結石の部位は膵胆管合流部よりも通常上部 → 膵胆管合流部の結石は自然落下が多い
 CTにて残存結石の有無も評価する 
 3つのRCT(n=511)では, 入院24-72hrでERCPを施行することで, 膵炎に由来する合併症Riskが低下することが示されている OR 0.27[0.14-0.53] (NEJM 2006;354:2142-50)
死亡Riskも減少するが, Subgroup解析を行うと, 
 Mild biliary APでは死亡率, 合併症率はERCPの有無で有意差無し中等度以上のAPで早期ERCPが適応となる (Ann Surg 2006;243:154-68)

Severe ABP(Acute biliary pancreatitis)に対する発症72hr以内のERCPのProspective cohort study(Ann Surg 2009;250:68-75)
 Severe ABP患者153名を前向きに追跡.
 Early ERCP施行群, 非施行群でOutcomeを比較.
 Severe AP; APACHE-II >=8 or Imrie >=3 or CRP >15mg/dL
 ABP; US, CTで胆石, 胆泥(+) or CBDの拡張(+) or Bil, 胆道系酵素上昇

上記患者群をERCP施行前にさらに2群に分類し, それぞれで評価.
 Cholestasis群(78名); Bil>2.3mg/dL, CBD拡張, BT<38.6
その内, Early ERCP施行が52名, Conservative群が26名
 No Cholestasis(73名) ; Early ERCP施行が29名, Conservative群が46名

Outcome: 右がCholestasis群, 左がNo Cholestasis群
Outcome
Early ERCP
Conservative
P
Early ERCP
Conservative
P
全合併症
25%
54%
0.020
45%
41%
0.814
膵壊死
17%
38%
0.076
36%
30%
0.796
死亡率
6%
15%
0.213
14%
17%
0.754
合併症はCholestasis(+)のEarly ERCP群で有意に低いが, 他の壊死, 感染, 死亡, ドレナージ適応などは有意差無し.
そもそも,  “早期にERCPができると思われる”ほど状態が良いというBiasがあると予測できる. 

急性膵炎におけるERCPの適応の推奨 N Engl J Med 2014;370:150-7.


その他の対応
潰瘍予防H2 blockerが第1選択. PPIでも可.
 適応は以下の通り.
 人工呼吸器管理, ARDS, ICU入室患者には全例適応
 非人工呼吸器管理, 食事経口摂取可能患者は非適応
 誤嚥性肺炎のリスクがある患者に関しては要検討(StudyではそれでもH2 blockerを投与すべきとの結論)

Octeotide(サンドスタチン®)
 生命予後改善, 外科適応例の低下効果は示唆されているものの, Evidence Levelは低く, 推奨されない.
 Clinical Trialでの使用のみ考えても良い

膵分泌阻害 → 有効ではない
 セクレチンはHCO3, H2O, Ionの分泌を調節するので無意味

血小板活性化因子
 Laxipafant: 発症0hr ~ 36hrでは臓器不全予防効果があるとの報告

Abdominal Compartment Syndromeについては以下を参照

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