Parapneumonic effusion, Empyema
Clin Chest Med 2006;27:253-66 Chest 2009;136:Issue 4, Oct.
肺炎随伴性胸水
肺炎に随伴する胸水
肺炎の20-57%で胸水を認める.
滲出性胸水の1/3が肺炎に付随するもの.
滲出性胸水の1/3が肺炎に付随するもの.
その内1-5%が膿胸へ進展する.
3段階で進行する
Exudative Stage; 肺炎から胸膜に炎症が波及. 炎症性サイトカインにより血管透過性が亢進し, 胸水が貯留
Fibrinopurulent Stage; 細菌が胸水内へ浸潤し, Fibrin clots, Fibrin隔壁が形成. Capsulateされた胸水貯留を認める
Organizatioal Stage; Fibroblast proliferation, 胸膜肥厚が起こる. 拘束性肺障害を合併.
膿胸
小児, 高齢者で多く, Risk FactorとしてDM, アルコール中毒, GERD, IV drug user, 誤嚥性肺炎がある.
ここ20年間で頻度は上昇傾向.
1/3は明らかなRisk Factorが無くても生じる
胸腔穿刺に合併するケースが2%を占める
外傷後, 食道破裂, 外科手術, 腹腔内感染に続発するケースもある (腹腔内感染, SBPから続発するケースは1%程度)
外傷後, 食道破裂, 外科手術, 腹腔内感染に続発するケースもある (腹腔内感染, SBPから続発するケースは1%程度)
肺炎随伴性胸水, 膿胸の分類
ACCP’s consensus statement (Respiration 2008;75:241-50)
分類 |
Pleural space anatomy |
Chemistry |
Bacteriology |
Poor Outcome |
Drainage |
1
|
少量胸水 (<10mm) |
pH不明 |
グラム染色 培養結果不明 |
Very low |
不必要 |
2
|
少量-中等量 (10mm-胸郭の半分) |
pH >=7.20 Glu>=60 |
グラム染色 培養結果 Neg |
Low |
不必要 |
3
|
大量(胸郭半分以上) Loculated, 胸膜肥厚 |
pH <7.20 Glu<60 |
グラム染色 培養 Positive |
Moderate |
必要 |
4
|
膿胸 |
|
Pus |
High |
必要 |
Classification (Tuberkuloz ve Toraks Dergisi 2008;56:113-20)
Class |
pH, Glu, LDH |
Gram, 培養 |
Loculation |
治療 |
|
1 |
Nonsignificant Pleural Effusion |
|
|
|
抗生剤 |
2 |
Typical Parapneumonic PE |
pH>7.2, Glu >40, LDH <3ULN |
Neg |
No |
抗生剤 |
3 |
Borderline Complicated PE |
pH<7.2, Glu >40, LDH >3ULN |
Neg |
No |
胸腔穿刺 |
4 |
Simple Complicated PE |
pH<7.0, Glu <40 |
Pos |
No |
+ドレナージ |
5 |
Complex Complicated PE |
pH<7.0, Glu <40 |
Pos |
Multiple |
+外科手術 |
6 |
Simple empyema |
pH<7.0 |
Frank pus |
Single |
+ドレナージ |
7 |
Complex empyema |
pH<7.0 |
Frank pus |
Multiple |
+外科手術 |
肺炎随伴性胸水か, 膿胸かは胸水の性状, pH, LDH, Glu, グラム染色, 画像所見で決まる.
原因菌頻度 Clin Chest Med 2006;27:253-66
胸腔内感染症の内, 66%で原因菌が同定できる
市中感染ではGPCが64%を占め, 嫌気性菌は16%.
院内感染ではMRSAが28%, 緑膿菌も5%で認められる
院内感染ではMRSAが28%, 緑膿菌も5%で認められる
⇒ 市中感染では市中肺炎と同等と考えるが, 院内感染ではBroad Spectrumで対応する必要あり
血液培養は12%で陽性となる
臨床所見: 重要なのは胸水pH<7.20
臨床症状は肺炎と同様の所見をとる.
胸膜痛(-)は膿胸, 胸膜炎を否定する証拠とはならない.
胸膜痛(-)は膿胸, 胸膜炎を否定する証拠とはならない.
抗生剤で改善しない, 改善が乏しい肺炎では膿胸, 胸膜炎を疑うべき
胸水検査
pH<7.20では多隔壁性の胸水貯留, 膿胸Riskが高くなるため, ドレナージが必須となる.
胸水の酸性化は 胸水中Lacの上昇, 細菌代謝によるCO2上昇が理由.
Glu低下, LDH上昇も認めるが, pH<7.20は単一で予後を規定する
Glu<35mg/dL, LDH>1000IU/LはpH<7.20に匹敵する因子となる
胸水中のpHをCheckするには, ヘパリンを加えて血ガス機にかける
pH>7.20では抗生剤単独に反応する可能性が高いが, 経過中に胸水検査を繰り返し, 度々フォローする必要がある.
同一の患者でも, 多房性の胸水貯留の場合, 穿刺部位によりpHは異なる(6.3-7.24, 6.84-7.27)為, 注意が必要. (Chest 2004;126:2022-4)
Proteus mirabilisによる膿胸では, アルカリ性の膿胸となる可能性があり, 注意が必要.
pHは7.8-8.0台となることもあり, 臨床症状, 胸水の性状, LDH, Gluも評価し, 怪しければドレナージ.
血液pHよりも高値な場合も注意すべき. (Chest 1983;84:109-11)
他に胸水を酸性化する病態としては悪性腫瘍, リウマチ性疾患, SLE, 結核があり, 鑑別も重要.
胸水中TNF-α
Complicated parapneumonic effusion(23名), 膿胸(22名), Uncomplicated parapneumonic effusion(35名)で調査したStudyでは
TNF-α >80pg/mLはSn78%, Sp89%でParapneumonic effusuionを示唆 (Chest 2004;125:160-4)
TNF-α >80pg/mLはSn78%, Sp89%でParapneumonic effusuionを示唆 (Chest 2004;125:160-4)
胸水-血清TNF-αの差 >=9.0pg/mLはSn96.7%, Sp98%
Nonpurulent CPPEに対するTNF-αのCutoffと検査特性
TNF-α |
Sn(%) |
Sp(%) |
LR(+) |
LR(-) |
>=60pg/mL |
91[78-100] |
69[52-85] |
2.9[1.8-4.8] |
0.13[0.03-0.49] |
>=70pg/mL |
83[65-100] |
77[62-92] |
3.6[1.9-6.8] |
0.23[0.09-0.56] |
>=80pg/mL |
78[59-97] |
89[77-100] |
6.8[2.7-17.7] |
0.25[0.11-0.54] |
>=90pg/mL |
74[54-94] |
89[77-100] |
6.5[2.5-16.8] |
0.29[0.15-0.59] |
>=100pg/mL |
65[44-87] |
89[77-100] |
5.7[2.2-15.0] |
0.39[0.22-0.70] |
画像所見
胸部レントゲンで膿胸, 肺膿瘍を区別するには, Fluid level, 胸膜との接し方があるが, 感度は低い.
USで胸水中に隔壁を認めたり, 造影CTで胸膜肥厚を認めれば, 膿胸を強く示唆する.
Split Pleura Sign (Radiology 2007;243:297-8)
造影CTの所見で, 膿を囲む臓側, 壁側胸膜の肥厚と造影(+).
Split pleuraは膿胸患者の68%で認められ, 胸膜の造影効果増強は86%で認められる.
胸膜の肥厚+造影は滲出性胸水患者の61%で陽性だが, 漏出性胸水患者では0%と特異性も高い.
膿胸では, 胸膜外, 肋骨下組織の腫脹を伴うことも多い(60%)
胸膜外の脂肪組織の混濁も34%で認められる.
胸膜外の脂肪組織の混濁も34%で認められる.
治療: 抗生剤
治療の中心は 栄養, 抗生剤, ドレナージ(外科手術)
胸水量 <10mmは抗生剤のみでOK
少量ならば経験的に抗生剤のみで治療は可能.
抗生剤投与中に増悪している場合は少量でもドレナージの適応
高齢者, 合併症(+), Risk(+)患者では, ドレナージ閾値は低く.
抗生剤は市中感染症ならば肺炎と同じ
Atypical Pneumonia(レジオネラ, マイコプラズマ)では胸膜炎, 膿胸を来すことは稀であり, 通常カバーは不要
院内感染症では, MRSA, 緑膿菌を含んだBroad Spectrumを.
アミノグリコシドは胸膜移行性が低く, 酸性環境下では不活化されるため, 基本膿胸には使用しない
抗生剤投与期間は決まっていないが, 経験的に3週間は投与する.
ドレナージが効けばもっと短くてもOK.
経静脈的投与は1週間以上は行う.
ドレナージが効けばもっと短くてもOK.
経静脈的投与は1週間以上は行う.
治療: ドレナージ
pH<7.20はドレナージを行う
膿胸, 隔壁形成Riskが高く, ドレナージが必須.
pH>7.20では抗生剤のみで治療可能であることが多いが, 治療中に度々胸水検査フォローを行い, pHをCheckする必要がある
pH>7.30では胸水量に関わらず, 抗生剤投与のみでOK
胸水量<10mmではそもそもドレナージ必要ないため, pHをCheckする必要も無し.
ドレナージチューブの選択
通常28-36Fを使用する.
6-14Fの細いものを使用する際は, 20cmH2Oの陰圧をかけ, 6hr毎にFlushすると詰まりにくくて良い
細いチューブでは粘性の高い胸水の排液効率は低下.
でも, 70-100%でドレナージ成功との報告もあり.
またまた, 最初に細いチューブを用いると6-20%で外科的ドレナージを必要とするとの報告もあり.
Evidence Levelの高いStudyは無く, 一致した見解無し.
細いチューブはCT Guide下で, 太いのはCT or US Guide下でOK.
Chest tubeのサイズで胸膜感染症のアウトカムは変わらない
Chest 2010;137:Issue 3. March.
The Relationship Between Chest Tube Size and Clinical Outcome in Pleural Infection
405名の胸膜感染症のProspective cohort (MIST1 trial)
Fibrinolytics療法のStudyにおいて, Chest tubeの大きさと死亡, 外科手術, 肺機能予後の関連を評価.
<10Fr 58例, 10-14Fr 208例, 15-20Fr 70例, >20Fr 69例.
Outcome
挿入手技(Seldinger vs Blunt dissection), Tubeの大きさで, 死亡, 外科手術, 入院期間, 肺機能に有意差無し.
ただし, 細いTubeでは陰圧をかける, もしくは1日に数回のFlushが必要.
又, 血腫を認める場合, 出血を認める場合は太いTubeが良いという意見もある.
ドレーン抜去のタイミングは不定; Evidenceなし
臨床的改善, CRPを指標とする意見
排液量 <150ml/dを指標とする意見
排液量 <50ml/d, 排液が透明になることを指標とする意見と様々
(Tuberkuloz ve Toraks Dergisi 2008;56:113-20)
排液量 <150ml/dを指標とする意見
排液量 <50ml/d, 排液が透明になることを指標とする意見と様々
(Tuberkuloz ve Toraks Dergisi 2008;56:113-20)
治療: Fibrinolytics
胸腔内にFibrinolyticsを投与
Fibrinopurulent Stageにて, Fibrin隔壁の形成を阻害, 破壊する目的
複数のRCT, Cohortがあるが, 小規模であり, Evidence不十分.
適応に関してはControversialであるが, Routineでは行わず, 外科手術が出来ない例で試すとのスタンスが主.
適応に関してはControversialであるが, Routineでは行わず, 外科手術が出来ない例で試すとのスタンスが主.
Meta-analysisでは, 死亡率, 外科的ドレナージ適応例の有意な低下は認めないものの, 減少傾向は認められる. (Chest 2006;129:783-90)
Fibrinolyticsの胸腔内投与は安全であるため, 効果不明確でも行ってもよいとする意見もある
Fibrinolytics |
Dose |
Instillation |
Duration |
Streptokinase |
250,000 IU |
100-200ml NS |
Daily for ~7d |
Urokinase |
100,000 IU |
100ml NS |
Daily for ~3d |
tPA |
10-25 mg |
100ml NS |
Twice daily for ~3d |
Streptokinase胸腔内投与
MIST1 (NEJM 2005;352:865-74)
454名の胸腔内感染症患者(pH<7.20, 細菌検査陽性)のDB, RCT
454名の胸腔内感染症患者(pH<7.20, 細菌検査陽性)のDB, RCT
SK 250,000IU twice for 3 d vs Placebo
3か月後のOutcome評価では,
死亡, 外科手術適応例は有意差無し(31% vs 27% RR1.14[0.85-1.54])
死亡例(16% vs 14% RR1.14[0.72-1.81])
外科手術適応例(16% vs 14% RR1.07[0.68-1.69])
死亡, 外科手術適応例は有意差無し(31% vs 27% RR1.14[0.85-1.54])
死亡例(16% vs 14% RR1.14[0.72-1.81])
外科手術適応例(16% vs 14% RR1.07[0.68-1.69])
12か月後の評価も同様に有意差無し.
胸膜肥厚はやや改善傾向を認める.
Single center, RCT (Am J Respir Crit Care Med 2004;170:49-53)
53名の膿胸(+)患者でSK 250,000IU once for 4.5±2d vs NSで比較
53名の膿胸(+)患者でSK 250,000IU once for 4.5±2d vs NSで比較
3日経過時では両者に有意差認めないが,
7日後では有意にClinical success rateは改善(82% vs 48%),
外科手術適応例も有意に低下(9% vs 45%)
7日後では有意にClinical success rateは改善(82% vs 48%),
外科手術適応例も有意に低下(9% vs 45%)
Urokinaseの胸腔内投与
UKに関してはRCTが少なく, 1つのみ
31名のMultiloculated pleural effusion(+)患者のDB, RCT
UK 100,000IU/100ml vs NS 100ml for 3d
UK 100,000IU/100ml vs NS 100ml for 3d
3日間での排液量は970ml(75) vs 280ml(55)とUK群で多く, 完全に排液を達成できたのは86.5% vs 25%とUK群で有意に多かった.
(Am J Respir Crit Care Med 1999;159:37-42)
(Am J Respir Crit Care Med 1999;159:37-42)
t-PAの胸腔内投与
膿胸52名, 複雑性胸水41名, 血胸10名, 癌性胸水17名の計120名.
ドレナージ, 内科治療でコントロール困難な上記120名において, t-PAを胸腔内投与施行したObservational cohort. American Journal of Therapeutics 2007;14:341-5
投与量は10-100mg/d, 大半の患者で3-4回施行している.(D 1,2,3, その後は2d毎)(膿胸, 複雑性胸水では50-100mg/d, それ以外では10-25mg/d)
NS100mlに溶解し, bolus投与. その後30-50mlでフラッシュ.
投与後は対側臥位となって20分間安静. ドレーンは1hrクランプし, その後解放.
NS100mlに溶解し, bolus投与. その後30-50mlでフラッシュ.
投与後は対側臥位となって20分間安静. ドレーンは1hrクランプし, その後解放.
Outcome; 102/120(85%)がComplete response.(膿胸でも85%.)
Partial responseは10/120(8%). 反応無しが8名(7%).
Partial responseは10/120(8%). 反応無しが8名(7%).
反応のない8名中5名が膿胸. 1名が中皮腫, 2名が肺膿瘍.
副作用;
Dose |
10mg |
25mg |
50mg |
100mg |
投与回数 |
30 |
220 |
77 |
18 |
胸痛 |
2 |
4 |
0 |
0 |
重度の胸痛 |
0 |
1 |
0 |
0 |
出血 |
0 |
1 |
1 |
0 |
MIST2 trial; 胸膜炎210名の2x2 RCT. N Engl J Med 2011;365:518-26.
t-PA胸腔内投与 10mg 2回/d 3d,
DNase胸腔内投与 5mg 2回/d 3d,
Placeboの組み合わせで4群に割り付け, 比較.
薬剤投与後は1時間のクランプ後, 開放している.
DNase胸腔内投与 5mg 2回/d 3d,
Placeboの組み合わせで4群に割り付け, 比較.
薬剤投与後は1時間のクランプ後, 開放している.
Outcome; Day 1-7の胸部正面XPで評価した胸水量(面積)
外科手術適応例, 胸水ドレナージ量を評価.
外科手術適応例, 胸水ドレナージ量を評価.
t-PAの胸腔内投与では, 胸水ドレナージ量, 外科手術適応症例の改善には有意差無し.
DNase併用では外科手術例減少効果があるものの, DNase単独では外科手術例増加するため, t-PAの胸腔内投与を判断するにはもっと大規模なStudyが必要.
MIST1ではOutcomeに有意差無しとの結果であったが 3, 12か月フォローは長すぎるとの意見が多い.
他のStudyでは3日~7日間での評価であり, Fibrinolyticの胸腔内投与は短期的なドレナージ促進効果が期待できるかもしれない.
外傷による胸腔ドレナージ患者を対象としたStudyでは, 外科的ドレナージの適応例の減少効果が示されている.
(J trauma 2004;57:1178-83)
線溶療法の禁忌: Curr Opin Pulm Med 2006;12:205-11
絶対禁忌 |
相対禁忌 |
アレルギーの既往 気管胸腔瘻 48hr以内の手術, 外傷 |
2wk以内のMajor thoracic, abdominal surgery 脳出血, SAHの既往 2wk以内の頭部の手術, 外傷 凝固欠損症 |
治療: 外科手術
日経過しても改善を認めない, 改善が乏しい場合は外科適応となる.
約30%の症例が外科手術適応となる.
1st ChoiceはVATSであり, 86.3%の成功率を示す