尿中排泄が良好で, 尿中濃度を高く維持可能であり, また多剤耐性菌やESBLにも感受性を示すことがあり, それらが原因の単純性尿路感染症に対して選択肢の1つとなる薬剤.
多剤耐性の腸内細菌に対するFosfomycinの感受性を評価したMeta-analysis
(Lancet Infect Dis 2010;10:43-50)
多剤耐性は5057例, 内4448例はESBL.
Fosfomycin感受性を示す(MIC ≤64µg/mL)のは90%以上.
ESBL E coli 1657例中, 1604例(96.8%)はFosfomycin感受性あり.
ESBL Klebsiella pneumoniaeでは608/748(81.3%)で感受性あり.
ESBL産生菌によるLower UTIならばホスミシン内服で治療可能かも.
2つのホスミシン感受性(+) ESBL E coliによるLower UTIのStudyでは, ホスミシン内服にて93.8%が臨床的に改善あり.(細菌学的には78.8%)
ホスミシンは3gを2日毎に内服, 6d. 膀胱炎ならば3gを1回のみも可能.
(投与方法は3g/d ~ 3g/2-3dまで様々, 国内では3g/dで保険適応あり)
--------------------------
ということで, 耐性菌の単純性UTIではFosfomycinはとても良い薬剤. 自分もしばしば使います.
では複雑性や前立腺炎に対してはどうか? というと, ここで濃度の問題がでてくる.
血中濃度, 尿中濃度, 前立腺組織内濃度を評価したStudy
Clinical Infectious Diseases 2014;58(4):e101–5
健常人でBPHに対して前立腺切除術(TURP)を予定している26名を対象としたProspective study.
切除術の17時間以内にFosfomycin 3gを経口投与し, 切除した時点での血中濃度, 尿中濃度, 前立腺組織内濃度を評価.
eGFR<40mL/min, 悪性腫瘍が疑われる患者は除外.
対象の平均年齢68±9歳, 体重86.2±13kg, GFR 67±12mL/min
各濃度は以下の通り;
測定までの時間
|
濃度
|
|
血中
|
565±149min
|
11.42±7.6µg/mL
|
尿中
|
581±150min
|
570.57±418µg/mL
|
前立腺(TZ)
|
598±152min
|
8.30±6.63µg/g
|
前立腺(PZ)
|
608±155min
|
4.42±4.10µg/g
|
前立腺全体
|
603±153min
|
6.50±4.93µg/g
|
前立腺/血中 比
|
0.67±0.57
|
TZ; Transitional zone, PZ; peripheral zone
尿中濃度は血中濃度の50倍もの濃度となり, 確かにUTIでは有効な可能性が高い.
従って, Fosfomycinの耐性MIC値は >64 もしくは >32µg/mLとしている.
前立腺組織濃度は4-6µg/gとなることが多く, ≥4µg/gは70%で達成. ≤1µg/gは1例のみであった. しかもこれは非炎症組織での濃度であり, 前立腺炎の際はもっと移行性は良くなると予測される.
ちなみに細菌別のFosfomycinのMIC値の分布は,
EUCASTより
前立腺濃度が4-6µg/gであることから, MIC ≤4µg/mLでラインを引くと,
前立腺炎や菌血症, 複雑型UTIにおいて, 効果が期待できない菌種はEnterococcus.
E coli, Hemophilus, Klebisiella, Proteus, Pseudomonas, Serratia, MRSAは効果は期待できる可能性はある. が, 確実とも言い難い.
結論;
FOMは使いやすいが, 血中, 組織濃度は尿中よりも低く, UTIとして評価した 『S』か『R』かは, MIC値が高く設定されているため, 単純性UTI以外にはアテにならない点に注意すべき.
その点に注意し, MIC値が≤4µg/mLならば組織移行性はそれなりに良好であり, 前立腺炎や複雑型UTIにも使用可能かもしれない.