最近出版されたMayo Clin Procに薬剤性肝炎というReviewがあり読んでみると, アセトアミノフェンが原因ではない急性肝障害でもNAC投与をすべきであるとの意見があった.
(Mayo Clin Proc. 2014;89(1):95-106)
そこでその根拠を勉強してみた.
Gastroenterology. 2009 September ; 137(3): 856–864
アセトアミノフェンによらないALI患者を対象としたDB-RCT
18歳以上で急性肝障害患者(肝性脳症+で, INR≥1.5を満たす)患者群.
アセトアミノフェン中毒, 虚血性肝炎, 妊娠関連, 腫瘍関連, 敗血症性ショック, 不応性低血圧, 移植適応外症例は除外.
上記を満たす173例を, NAC vs Placeboに割り付け, 予後を比較.
NACは150mg/kg/hで1時間, その後12.5mg/kg/hを4時間, 6.25mg/kg/hを67時間継続, 合計72時間投与.
母集団は肝性脳症のGrade I-II, III-IVで分けて, 両群に割り付けられた.
母集団データ;
アウトカム;
両者で, 21日死亡率は有意差無し. 1年予後も有意差認めなかった.
肝性脳症 I-IIの群では肝移植Free生存率が有意にNAC群で良好. 肝移植率も有意に低いという結果であった.
この文献を元に, Grade I-IIの急性肝炎ではNACを投与すべきであるとの記載がされていた.
特に移植が容易にできない国, 環境では重要な結果と考えられる.
これ以外に同様のRCTは小児例を対象とした1つのみ.
HEPATOLOGY 2013;57:1542-1549
小児の非アセトアミノフェンALI患者におけるNACを評価したDB-RCT
成人と小児ではALIの原因は大きく異なる. そこで, 生後〜17歳までの非アセトアミノフェンALI症例184例でNAC vs Placebo群に割り付け, 予後を比較.
NACは150mg/kg/dを7日間 経静脈投与.
患者群は凝固障害を伴う急性肝障害で, 慢性肝障害が無い患者. APTT 15-19.9sec もしくはINR 1.5-1.9ならば肝性脳症合併が必須で, APTT 20sec以上, もしくはINR 2.0以上ならば肝性脳症は問わない.
アセトアミノフェン中毒, 妊娠, 腫瘍, 敗血症, 脳ヘルニア, 昇圧剤を必要とする低血圧は除外.
母集団と急性肝障害の原因;
アウトカム;
1年生存率は両者有意差ないが, 肝移植Free生存率はNACで有意に低い結果.
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2013年の時点でRCTは成人例, 小児例の2つのみ
成人例ではGrade I-IIの肝性脳症を認める急性肝炎ではNACにて移植率が低下するとの結果,
小児例では有意差は認められなかった. むしろNAC投与群で移植Free生存率が低下する結果.
今後のStudyでいくらでも結論は変わる可能性があり, 飛びつかない方が無難.
ただし, NAC自体は副作用もあまりなく, 安全に使用できる薬剤であるため, 成人例では使ってみる分には良いのかもしれない…
あ、というか日本には経口薬のみでしたね(笑)
まぁ、試しに経鼻胃管から使ってみてもいいかな、安いし。