自分の周りで、製薬会社 シオ◯ギ製薬のCMが商売根性丸出しでやり過ぎだろう、という批判が多いので, 今まで溜め込んだ抗インフルエンザ薬の文献記載を気ままに載せます。
去年までの文献が多いっす。
タミフルとリレンザ
Oseltamivir; タミフル®, Zanamivir; リレンザ®
Neuraminidase阻害薬であり, インフルエンザに対する治療薬として有名
効果は, 症状持続期間を半日~1日短縮する
症状改善までの期間短縮(日)
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小児
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成人
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老年
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タミフル®
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0.9[0.3-1.5]
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0.9[0.3-1.4]
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0.4[-0.7~1.4]
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リレンザ®
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1.0[0.5-1.5]
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0.8[0.3-1.3]
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0.9[-0.05~1.5]
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また, インフルエンザ患者との接触がある場合, 発症予防効果も期待できる
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Flu発症予防 *1
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家族内発症予防*2
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タミフル®
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0.26[0.08-0.84]
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0.10[0.04-0.29]
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†
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0.39[0.18-0.85]
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リレンザ®
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0.31[0.14-0.64]
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0.19[0.09-0.38]
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†
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0.41[0.25-0.65]
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流行季節における予防 *1
家族内で発症者(+)の場合のPost-exposure prophylaxis *2
タミフル 1cp 7-10日間
BMJ 2003;326:1235-42 †BMJ 2009;339:b5106
ただし, 予防投与を濫用するとその分耐性化のリスクも上昇するため,
予防投与自体は一般人口群には推奨されない.
感染した場合重症化しやすい患者群や、介護者や医療者で、その人が感染することでさらに広げる可能性がある群に限るべきである。
627名の発熱+上気道症状(<36hr)患者(内374名, 59.3%がインフルエンザ)を3群に割り付け, 比較したRCT JAMA 2000;283:1016-24
Oseltamivir 75mg bid, 150mg bid, Placebo
Outcome; (Oseltamivir 75mg, 150mg群では有意差無し)
Outcome
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インフルエンザ患者(374)
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母集団全体(627)
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Placebo
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Oseltamivir 75mg
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Placebo
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Oseltamivir 75mg
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症状改善までの時間(hr)
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103.3[92.6-118.7]
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71.5 [60.0-93.2]
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97.0[86.3-113.6]
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76.3[66.3-89.2]
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咳嗽改善(hr)
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55[36-73]
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31[24-42]
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筋肉痛改善(hr)
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28[24-36]
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16[10-20]
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鼻閉改善(hr)
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43[31-64]
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33[25-43]
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咽頭痛改善(hr)
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21[8-29]
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10[4-19]
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倦怠感改善(hr)
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41[26-50]
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24[19-34]
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頭痛改善(hr)
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14[8-23]
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8[6-15]
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熱感改善(hr)
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23[16-29]
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10[8-14]
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Placebo
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タミフル®
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副鼻腔炎
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8.5%
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4.1%
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気管支炎
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6.2%
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3.3%
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肺炎
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0.78%
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0
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2次合併症
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15%
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7%
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抗生剤使用
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11%
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4.9%
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嘔気
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7.4%
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18%
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嘔吐
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3.4%
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14%
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抗インフルエンザ薬は、症状持続期間を1日程度短縮するのは確かだが,
その分悪心、嘔吐といった消化管症状を1-2割に人に引き起こす副作用もある.
抗インフルエンザ薬のMeta-analysis Ann Intern Med. 2012;156:512-524.
Oseltamivir, Zanamivir vs Placeboを比較した74 RCTsのMeta
Oseltamivir vs No treatmentの比較
Outcome
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Evidence level (n/N; Control vs Oseltamivir)
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>48hrで内服
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死亡リスク
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Low(59/242 vs 31/439)
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OR 0.23[0.13-0.43]
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OR 0.33[0.12-0.86]
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入院率
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Low(1238/100585 vs 431/50125)
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OR 0.75[0.66-0.89]
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OR 0.52[0.33-0.81]
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肺炎合併
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Very Low(2111/100449 vs 647/50017)
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OR 0.83[0.59-1.16]
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OR 0.22[0.15-0.33]
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中耳炎
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Low(546/40022 vs 285/38385)
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OR 0.75[0.64-0.87]
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心血管イベント
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Low
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OR 0.58[0.31-1.10]
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致命的な副作用
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Low
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RR 0.76[0.70-0.81]
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Zanamivir vs No treatmentの比較
Outcome
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Evidence level (n/N; Control vs Zanamivir)
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死亡リスク
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Very Low(5/74 vs 0/13)
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OR 0.47[0.02-8.97]
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入院率
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Very Low(69/2411 vs 22/2350)
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OR 0.66[0.37-1.18]
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肺炎合併
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Very Low(263/2337 vs 301/2337)
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OR 1.17[0.98-1.39]
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中耳炎
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Very Low(21/2337 vs 25/2337)
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OR 1.19[0.67-2.14]
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Oseltamivir vs Zanamivir
RCTは全てLow quality evidence levelのみ.
Oseltamivirには症状持続期間, 重症度を緩和させる効果がある.
Zanamivirにもあると考えられる. OseltamivirとZanamivirには効果に差は無し.
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まとめると, 確かに抗ウイルス薬は重症度や症状を緩和し、1日程度早く改善させる効果があるが, ほっておいても勝手に治る.
それよりも濫用による耐性化の方が今後、問題となる可能性があり、必要ない患者には必要ない。例えば、元々健康な人がインフルになった所で、家で寝ていたっていっこうに構わないと言うことである。
逆に普通の風邪なのに、「インフルエンザかもしれない」という不安にかられ(TV CMを見て)病院を受診。長ーい時間待たされ、その間に待合室で感染しちゃいました、なんてことは笑い事ではなく、本当に多い。困った物だ。
海外において、抗インフルエンザ薬を考慮すべき人々は以下の通りである
CID 2009;48:1003-32
- 12-24ヶ月の乳幼児
- 喘息, COPD, Cystic fibrosisを基礎疾患に持つ患者
- 血行動態不安定な心疾患を持つ患者
- 免疫不全患者
- HIV感染患者
- 鎌状血球症, 他のヘモグロビン症を有する患者
- RAや川崎病などで長期のアスピリン内服が必要とされる患者
- 慢性腎障害
- 悪性腫瘍
- DMなど慢性の内分泌疾患を有する患者
- 神経筋疾患, 痙攣, 認知障害, 喀痰排泄能力が落ちている患者
- >65yrの高齢者
- 施設入所者, 長期入院患者
そうでない人は正直家で寝ているか、ドラッグストアで対症療法の薬剤でも買ってください、というのが医師の本音であったりする。
(注; かなり私見が入った意見です)