2014 Evidence-Based Guideline for the Management of High Blood Pressure inAdults
Report From the Panel Members Appointed to the Eighth Joint National Committee (JNC8) より
高血圧マネージメントのRecommendation
60歳以上の高血圧患者において;
≥60歳の一般患者群(DMもCKDも無し)では, BP≥150/90を治療導入ラインとし, 目標血圧はBP<150/90とすべし(Strong-Grade A)
上記患者群でsBP<140とコントロール良好で, 副作用も特無ければ, 治療を弱くする必要は無い(Expert opinion-Grade E)
<60歳の患者群において;
<60歳での治療開始ラインはsBP≥140 (Expert opinion-Grade E)
≥18歳でCKD(+), DM(+)の場合, 治療開始ラインはsBP≥140, dBP≥90で治療開始(Expert-E)
治療薬の選択について;
非黒人での初期降圧薬選択はサイアザイド系, CCB, ACEi, ARBsのいずれかで開始すべき(Moderate recommendation-Grade B)
黒人での初期降圧薬選択はサイアザイド系, CCBのどちらかで開始すべきである(Moderate recommendation-Grade C)
≥18歳でCKD(+)の場合, 降圧薬にはACEiかARBsを含むべき. これは人種, DMの有無に関係しない(Moderate-Grade B)
高血圧の主な治療は正常血圧を維持することであり, 治療開始後1ヶ月間で血圧安定化が困難な場合,増量するか, 他の薬剤を追加すべきである.
その場合選択すべきはサイアザイド, CCB, ACEi, ARBsのどれか. 併用でもコントロール困難な場合はさらに追加するが,ACEiとARBの併用は避けるべきである.
上記に挙げた薬剤を使用してもコントロール困難な場合,もしくは副作用で使用できない場合,β阻害薬やα阻害薬といった他の薬剤を考慮する.(Expert Opinion-Grade E)
今回のガイドラインでは, DMもCKDも無い≥60yでは治療開始ラインを≥150/90に引き上げたのが新しい点.
また, β阻害薬の推奨も下がった.
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この60歳以上における高血圧治療開始ラインを下げた根拠に2つの文献を引用している. 双方とも日本国内からのOpen-label RCTであり, 紹介すると,
Hypertension. 2010;56:196-202.
VALISH trial; 日本国内において, 70-84歳で, 高血圧のみの3260例を対象としたopen-label RCT
高血圧はsBP >160, dBP <90で定義.二次性高血圧, 悪性高血圧, sBP≥200, dBP≥90, 6m以内の脳血管イベント, MIの既往, 開始の6m前後にAngioplastyを施行された患者, NYHA III以上の心不全, 重度AS, 弁膜症, Af, flutter, 重度の不整脈, Cre≥2.0mg/dLのCKD,valsartanへのアレルギーのある患者は除外
上記患者群を厳密なBPコントロール群(sBP<140)
vs. 緩徐なコントロール群(sBP 140-150)に割り付け, 心血管予後を比較.
降圧はValsartanを使用し, 増量でもコントロール困難ならば他の薬剤を追加する方法.
母集団と使用薬剤
アウトカム
3.07年フォローにて, 心血管イベント, 死亡, 腎不全特に有意差無し.
Sub解析でも有意差認める項目無し.
Hypertens Res 2008; 31: 2115–2127
JATOS trial; 日本国内において, 65-85歳のsBP>160を満たす本態性高血圧患者4418例を対象としたopen-label RCT.
dBP≥120, 二次性高血圧, 6m以内のStroke, 6m以内のMI, angioplasty, 入院が必要な狭心症, NYHA≥IIの心不全, Af等の持続性不整脈, 大動脈解離, 閉塞性動脈疾患, 高血圧性網膜症, 肝酵素≥2ULN,コントロール不良なDM(HbA1c ≥8%), Cre≥1.5mg/dLのCKD, 悪性腫瘍, 膠原病は除外.
上記患者群をsBP<140でコントロールする群
vs sBP 140-160で維持する群に割り付け, 心血管予後を比較
治療はCCBを主に使用し, コントロール困難な場合, 他の薬剤を使う方法
心血管, 脳血管, 腎不全全て両者で優位差無し.
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これらの結果から, 65歳を超える, DMやCKDや心不全はあっても軽度(Cre<1.5~2.0, NYHA II-III程度まで)の高血圧患者では, sBP<140を厳密に行うよりは140-150, <160程度を維持しても予後は変わらない可能性がある.
ただし, 10-20年フォローしてようやく結論がでる分野でもあり, 楽観視はできない.
従って, これをこのまま臨床に適応するより,
さらにリスクが低い群(CKD, DMが無い)で, sBP<150とするマネージメント推奨は理解できる.
現に高齢者では低血圧による弊害も多いので, これはやり易くて良い感じ。