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2014年1月24日金曜日

腹膜垂炎

40歳台女性, 主訴は3日前からの腹痛.

3日前より特に誘因無く左下腹部痛を自覚. 持続痛で圧迫すると強い痛みがある.
下痢や食欲不振無し. 排便習慣問題無し. 便秘無し.
月経は不順で最終月経は2週間前. 量は少なめ.

発熱は無し.
診察すると, 左下腹部の深い部位に圧痛を認める.
後腹膜に近い部位で5cm程ずらすと圧痛は無く, 限局した後腹膜付近の圧痛と言える.
反跳痛や筋性防御は無し.

ちなみに体格は肥満体型.
既往歴無し.

このキーワードから想定する疾患は?
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腹膜垂炎 Acute Epiploic Appendages
Epiploic Appendages 腹膜垂; 結腸のみに認められる, 漿膜にかこまれた嚢状の構造物. 結腸ヒモの近位部にある.
 0.5-5cm程度の長さで, 脂肪組織と血管組織を含む.
 全体で100箇所程あり, S状結腸付近が最も大きい. また直腸付近には無し.
RadioGraphics 2005; 25:1521–1534 

Acute Epiploic Appendagitis; 腹膜垂炎
 腹膜垂の捻転により虚血を生じ, その結果炎症が生じる病態を腹膜垂炎と呼ぶ.
 197例の腹膜垂炎の解析では, 捻転が73%, ヘルニア嵌頓が18%, 腸閉塞が8%, Intraperitoneal loose bodyが<1%認められた.
 腹膜垂炎は肥満, ヘルニア, 慣れない運動との関連性もあり. 発熱や白血球上昇は認められないことが多い.
 腹膜垂炎の好発部位はS状結腸, 下行結腸, 右半結腸が多い. 通常自然に改善するが, 一部で癒着や腸重積, 腸閉塞, 腹膜炎等を来す.

J Korean Soc Coloproctol 2011;27(3):114-121
韓国での腹膜垂炎 31例の解析;

腹膜垂炎の画像; RadioGraphics 2005; 25:1521–1534 
 腹膜垂は結腸ヒモに隣接しており, 従って結腸の前面, 後面に認める卵円状の嚢状の病変として認められる. 直径は1.5-3.5cmで5cmを超えない程度. 内部は脂肪組織.
嚢の内部のHighな部位は静脈血栓を示しており, 腹膜垂炎に特異的な所見. 
周囲の腹膜は炎症で肥厚する. 結腸壁の腫大は少ない.

腹膜垂炎 vs 憩室炎 World J Gastroenterol 2013 October 28; 19(40): 6842-6848
 腹膜垂炎と所見, 病態が類似している疾患として憩室炎が挙げられる.
 前者では抗生剤は必要なく, 経過観察のみで改善する一方, 後者では抗生剤, 入院が必要であり, その2つを鑑別するのは重要である.

左下腹部痛で来院し, CT評価にて腹膜垂炎 or 憩室炎と診断された患者群をRetrospectiveに比較.
 腹膜垂炎 28例, 憩室炎 25例を比較. 
 腹膜垂炎の方がやや若い. 症状は発熱が7.1% vs 40%とPEAで少ない.
 腹部の圧痛では, PEA(腹膜垂炎)でより局所的な圧痛(85.7%)
 びまん性の圧痛は憩室炎で52%と多い. 反跳痛も憩室炎で多い.

PEAと憩室炎症例の比較 (韓国のStudy) J Korean Soc Coloproctol 2011;27(3):114-121
 PEAはより若年で肥満に多い. 発熱やWBC上昇は伴わない.
 限局性の圧痛はPEA症例の全例で認められた. 

12例の腹膜垂捻転例の解析では,  その全例に局在がはっきりとした限局性の圧痛を認めており腹部圧痛の部位, 深部の評価がより診断に重要と考えられる.
The American Journal of Surgery (2010) 199, 453–458

腹膜垂炎の治療
抗炎症薬のみで治療可能であり, 抗生剤は必要ないことが多い.
大半の患者が10日以内に改善する.
憩室炎と誤診すると, 不必要な入院や抗生剤投与がされてしまう. 
憩室炎と診断された内の2%が後の評価で腹膜垂炎であったとの報告あり.
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この患者さんも腹膜垂炎の疑いでCT評価し, キレイな卵円形の腹膜垂とその中央に静脈血栓と考えられる部位を認めました.

"Well localized tenderness" と呼ばれるかなり限局した圧痛、それは広さの範囲のみならず, 深さの範囲で評価し, 下行結腸の一部に限局的に圧痛がある、という認識をすることが大事と思います. そういう診察ができるとより外来診療も面白くなりますね。

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