Dupuytren拘縮は手掌腱膜や皮膚が肥厚, 退縮し, 指が屈曲拘縮を生じる病態.
・手掌に生じる線維性疾患の1つで, 一般人口の4-7%で認められる. また高齢者で多い(西欧諸国では, 55歳の12%, 75歳の29%で認める)
・遺伝性の要素が強く, 80%で遺伝が関与している.
遺伝的要因以外には, 外傷, 長期間の高血糖, 微小血管障害, 虚血など多因子が関連している.
・特に糖尿病患者における合併は多く, Dupuytren拘縮を認める患者におけるDMの頻度は13-39%であり, Dupuytren拘縮では必ずDMを評価することが重要.
・非DM患者では男性で多く, 第5指で生じやすい.
・DM患者における頻度は16-42%. 高齢者, 長期罹患がリスクとなる.
・手掌の索状腫瘤は手指の屈曲変形を引き起こす.
現在の治療では, 指関節が30度に屈曲し, 手指の機能障害が出現した場合, 外科的に切除するか, Collagenaseや針を用いて索状組織を破壊する方法がとられる. しかしながら再発率も高く, 外科治療群の21%, 針による筋膜切除群の85%が5年以内に再発する.
・ステロイドの局所注射や放射線治療も索状腫瘤の軟化効果が認められるが, エビデンスは不十分な状態.
・初期のDupuytren拘縮は局所的な炎症性の病態であり, TNF受容体と局所M2マクロファージ, マスト細胞より分泌されるTNFが関連していることがわかっており, TNF阻害薬が病態の改善や進行の予防に使用可能な可能性が示唆されている.
(Lancet Rheumatol 2022; 4: e407–16)(Medicine 94(41):e1575)
RIDD(phase 2): 早期のDupuytren拘縮患者を対象とし, TNF-α阻害薬(ADA) vs NSの局所注射を比較したDB-RCT
・早期Dupuytren拘縮はMP関節, PIPの進展障害が30度以下で定義.
成人患者で, 過去6ヶ月間に臨床的に明確な結節が認められ, 病状の進行(結節の増大, 疼痛, 圧痛, 掻痒)が認めるものを導入.
・また, 他にDupuytren拘縮の治療歴がある患者, HIV, TB, HBV, HCV, 重大な肝障害や腎障害, 全身性炎症性疾患, 中等度以上の心不全, 脱髄疾患, 繰り返す感染症既往, ワーファリンの使用などは除外.
・上記を満たす患者群において,
ADA 40mg/0.4mLを結節内に局所注射, 3ヶ月毎に4回行う群と
NSを用いて同様に注射を行う群に割り付け, 12ヶ月継続.
12ヶ月後の結節の硬さ(Durometerを用いて測定)や大きさ(エコーを用いて測定)を比較した.
患者群
アウトカム
・結節のサイズや硬さは有意にADA群で減少.
・自覚症状やは有意差なし
・受動的進展障害はADA群で進行は緩徐となる (しかしながら増悪はする)
・より長期間の経過フォローが必要である.