中年女性, 2ヶ月前からの手指関節痛, 腫脹, 手指の強張りがあり, 近医にて抗CCP抗体が強陽性(>100), RFも陽性(>150)であり, 関節リウマチですのでお願いしますとの紹介.
よくあるパターン.
ただ, 診察すると手関節の腫脹はあるが, 指は全体的に浮腫状.
MPやPIP関節の腫脹は目立たず, 指炎のような様相.
そして, 爪周囲に軽度発赤, 手も荒れている感じ.
「水仕事おおいですから〜」 という, よく聞くフレーズ. 迷う.
(同様のフレーズに, 「飲食店でアルコールたくさん使っています」 とかも最近増えてきた・・・)
ただ, これも数ヶ月で増悪しているとのことで, おそらくRAじゃなくて, 自己免疫性筋症. 特に抗ARS症候群と思われる.
Nail-fold capillaryをみると, ループの拡張, 蛇行がある.
膝関節の疼痛はあるとのことだが, 膝関節自体には異常所見はなく, 大体四頭筋をムンずと掴むと「痛ー」との声. 間違いない.
という流れの症例.
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抗CCP抗体(ACPA)陽性だからとは言え, RAとは限らない.
これは前にブログでも書いた
抗CCP抗体が陽性となる疾患
上記のエントリーでは, 自己免疫性炎症性筋症は原因としては入っているが, 報告数はそんな多くない.
実際どの程度の頻度なのだろうか?
ベルギーの大学病院で, 2009-2016年に診断したIIM症例121例において, RFとACPAの陽性率を評価
(RMD Open 2018;4:e000661. doi:10.1136/rmdopen-2018-000661)
・PMが30例, DMが41例, ASSが37例. IBMが1例, 壊死性筋症が5例.
・RF陽性例が11例(9.09%), ACPA陽性例が6例(4.96%)であった.
RFとACPA双方陽性例が3例(2.48%)
しかしながら, 双方ともHigh titerであったのは1例のみ
(ちなみに健常人におけるRFの陽性率は5%程度, ACPAは2%未満)
・RF and/or ACPA陽性の14例.
・診断はDMが4例(9.8%), ASSが5例(13.5%), PMが4例(13.3%).
ASSでは4例がJo-1抗体陽性
関節痛や関節炎は10例で認められる.
・RF, ACPA陽性 vs 陰性の比較では, IIMの臨床像はこれら因子で変わるものは認められなかった.
他の報告では, 国内のMDA5抗体陽性のCADM症例24例のうち, ACPA陽性例が5例(21%) との報告がある.
(Respir Med. 2018 Jul;140:1-5. doi: 10.1016/j.rmed.2018.05.010.)
フランスの9施設におけるcohortでは, ASS患者284例中, ACPA陽性例が7例(2.5%)
(Medicine 94(20):e523)(Autoimmunity Reviews 12 (2012) 210–217)
ASSにおける ACPA陽性の17例と 陰性の34例の比較
(Medicine 94(20):e523)
・Jo-1, PL-12, PL-7の 頻度に差はない
・関節炎や関節の障害が有意にACPA陽性群で多い.
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自己免疫性炎症性筋症におけるACPA陽性率はそれなりにある可能性.
報告ではACPA陽性例ではRA様の骨びらん, 関節破壊リスクが高い可能性がある.
また, ACPA陽性の関節痛だからといって安易にRAに飛びつくなかれという罠は定期的にあるよね