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2021年7月20日火曜日

自己免疫性筋症における抗CCP抗体陽性率

中年女性, 2ヶ月前からの手指関節痛, 腫脹, 手指の強張りがあり, 近医にて抗CCP抗体が強陽性(>100), RFも陽性(>150)であり, 関節リウマチですのでお願いしますとの紹介.

よくあるパターン.


ただ, 診察すると手関節の腫脹はあるが, 指は全体的に浮腫状. 

MPやPIP関節の腫脹は目立たず, 指炎のような様相.

そして, 爪周囲に軽度発赤, 手も荒れている感じ.


「水仕事おおいですから〜」 という, よく聞くフレーズ. 迷う.

(同様のフレーズに, 「飲食店でアルコールたくさん使っています」 とかも最近増えてきた・・・)

ただ, これも数ヶ月で増悪しているとのことで, おそらくRAじゃなくて, 自己免疫性筋症. 特に抗ARS症候群と思われる.

Nail-fold capillaryをみると, ループの拡張, 蛇行がある.

膝関節の疼痛はあるとのことだが, 膝関節自体には異常所見はなく, 大体四頭筋をムンずと掴むと「痛ー」との声. 間違いない.


という流れの症例.

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抗CCP抗体(ACPA)陽性だからとは言え, RAとは限らない.

これは前にブログでも書いた

抗CCP抗体が陽性となる疾患

上記のエントリーでは, 自己免疫性炎症性筋症は原因としては入っているが, 報告数はそんな多くない.

実際どの程度の頻度なのだろうか?


ベルギーの大学病院で, 2009-2016年に診断したIIM症例121例において, RFとACPAの陽性率を評価

(RMD Open 2018;4:e000661. doi:10.1136/rmdopen-2018-000661)

・PMが30例, DMが41例, ASSが37例.
IBMが1例, 壊死性筋症が5例.

RF陽性例が11例(9.09%), ACPA陽性例が6例(4.96%)であった.


 RFとACPA双方陽性例が3例(2.48%)


 しかしながら, 双方ともHigh titerであったのは1例のみ

(ちなみに健常人におけるRFの陽性率は5%程度, ACPAは2%未満)


・RF and/or ACPA陽性の14例.

・診断はDMが4例(9.8%), ASSが5例(13.5%), PMが4例(13.3%). 

 ASSでは4例がJo-1抗体陽性


 関節痛や関節炎は10例で認められる.

・RF, ACPA陽性 vs 陰性の比較では, IIMの臨床像はこれら因子で変わるものは認められなかった.


他の報告では,
国内のMDA5抗体陽性のCADM症例24例のうち,
ACPA陽性例が5例(21%) との報告がある.

(Respir Med. 2018 Jul;140:1-5. doi: 10.1016/j.rmed.2018.05.010.)

フランスの9施設におけるcohortでは,
ASS患者284例中, ACPA陽性例が7例(2.5%)

(Medicine 94(20):e523)(Autoimmunity Reviews 12 (2012) 210–217)


ASSにおける
ACPA陽性の17例と
陰性の34例の比較

(Medicine 94(20):e523)

・Jo-1, PL-12, PL-7の
頻度に差はない

・関節炎や関節の障害が有意にACPA陽性群で多い.

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自己免疫性炎症性筋症におけるACPA陽性率はそれなりにある可能性.

報告ではACPA陽性例ではRA様の骨びらん, 関節破壊リスクが高い可能性がある.

また, ACPA陽性の関節痛だからといって安易にRAに飛びつくなかれという罠は定期的にあるよね