数日の経過で全身性の膿疱が出現, 拡大し紹介となった患者さん.
膿疱は体幹, 四肢に広がり, それぞれの膿疱は数mm, 癒合性はなく, 膿疱周囲には軽度紅斑あり.
紅斑自体は膿疱に合わせて認められる程度で, 紅皮症のようにびまん性に広がっていない.
38度台の発熱と軽度のCRP上昇を認めるのみ.
薬剤使用歴はなし.
全身性の膿疱の鑑別はどのようなものを考えるべきだろうか?
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ここで押さえておきたい疾患は, AGEPとAGPB, GPP, PPPの4つ.
AGEP: 急性汎発性発疹性膿皮症
AGPB: 急性汎発性嚢胞性細菌疹
GPP: 汎発性膿疱性乾癬
PPP: 掌蹠膿疱症
| AGPB | AGEP | GPP 汎発性膿疱性乾癬 | PPP 掌蹠膿疱症 |
年齢 | 小児, 成人 | 成人 | 成人 | 成人 |
原因 | 溶連菌感染 | 薬剤, Enterovirus | 上気道感染など | 上気道感染など |
臨床的特徴 | 四肢優位に分布する散在性の膿疱. 紅斑のHaloを伴う. 皮膚は正常 | びまん性に発赤した皮膚上に癒合性の膿疱を認める | 鱗屑状, 発赤した皮膚に癒合性の膿疱を認める | 手掌や足裏の紅斑や鱗屑を伴う皮膚に生じる小水疱, 深在性の膿疱 |
ASO | 上昇 | 不明 | 上昇もある | 不明 |
発熱 | 様々 | あり | 遷延性の発熱 | なし |
白血球上昇 | あり | あり | あり | 不明 |
経過 | Self-limiting | Self-limiting | 再発性 | 遷延性 |
病理 | 角質下の海綿状膿疱 ± 白血球破砕性血管炎 | 角質下の海綿状膿疱 ± 白血球破砕性血管炎 ± 好酸球浸潤 | 角質下の海綿状膿疱 ± 尋常性乾癬 | 角質下の海綿状膿疱 + 好中球浸潤 + 膿内に多核球や上皮細胞の残滓を伴う |
(The Journal of Dermatology Vol. 30: 141–145, 2003)
AGEP: Acute Generalized Exanthematous Pustulosis.
急性汎発性発疹性膿皮症
(J Am Acad Dermatol 2015;73:843-8.)
・薬剤による急性の非毛包性の無菌性膿疱を伴う紅斑所見
・主に抗菌薬が原因として多く, 使用後48時間以内に急性に出現し,
発熱や白血球増多を伴うことが多い
薬疹として, TEN/SJS, DIHSと並んで押さえておくことが大事な皮疹
・重症例では粘膜障害や臓器障害を伴う(20%程度)
AGEPの診断スコア(EuroSCAR Study)
他の重症薬疹との比較
AGEP 58例の解析(EuroSCSR>4で定義)
(British Journal of Dermatology (2013) 169, pp1223–1232)
・臓器障害を呈したのは10例(17%)
AGEPは薬剤以外に感染症でも生じる報告がある
・マイコプラズマ感染症に伴うAGEPの症例報告が数例.
Arch Dermatol. 2009 Jul;145(7):848-9. J Dermatol. 2016 Jan;43(1):113-4. Rev Chilena Infectol. 2016 Feb;33(1):66-70.
・Parvovirus B19感染症によるAGEP
Journal of Dermatology 2007; 34: 121–123
・他に連鎖球菌, EBV, CMV, アデノウイルスによる報告がある.
感染症は特に小児例で多い
Pediatr Dermatol. 2021 Mar;38(2):424-430.
AGPB: Acute Generalized Pustular Bacterid.
急性汎発性膿疱性細菌疹
(J Investig Allergol Clin Immunol 2019; Vol. 29(5): 403-404)
・細菌感染症に伴う全身性の膿疱を呈する病態.
・局所の感染症状が先行(咽頭炎や扁桃炎など)する.
β溶連菌による報告が多く, SuperantigenやToxinがTNFαやINF-γを誘導し, C3, C5aカスケードを活性化させ, 表皮への好中球の集簇を促す.
・無菌性の膿疱で, 各膿疱は癒合せず, 大きさは数mm.
紅斑によるHaloを伴う.
・発熱や炎症反応の亢進を伴う.
β溶連菌の関連がある場合はASOの上昇も認められる.
・大半は積極的な治療なしでも, 12日以内に改善を認める.(7-14日)
・治療は経過観察や抗菌薬治療, ステロイドが試されるが,
ステロイドの有用性は議論がある.
抗菌薬は使用されることが多い.
・一部症例では糸球体腎炎や関節痛, 強直性脊椎炎の合併も報告あり.
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