VEXAS症候群
(N Engl J Med 2020;383:2628-38.)
・X染色体上に存在するUBA1遺伝子の変異による 成人発症の自己炎症性疾患.
・ユビキチン化を開始する主要なE1酵素である, UBA1のメチオニン-41が影響される
・VEXAS: vacuoles, E1 enzyme, X-linked, autoinflammatory, somatic.
・中年〜高齢発症の,
治療抵抗性の発熱,
血球減少(骨髄, 赤芽球系の前駆細胞に空包変性を伴う), 骨髄異形成,
好中球の皮膚, 肺浸潤,
軟骨炎, 血管炎などを呈する.
>> RP, Sweet症候群, PAN, GCAといった自己免疫性疾患や, MDS, MMといった血液疾患として発症する.
・UBA1モザイク変異は造血幹細胞や多能性前駆細胞, 顆粒球・単球前駆細胞, 巨核球・赤芽球前駆細胞, リンパ系前駆細胞に多く認められるが, 末梢血では骨髄系細胞にのみ残存し, 成熟リンパ節に変異は認められない.
変異リンパ球が増殖しなかったか, 除去された可能性が示唆される
線維芽細胞にも認められないことが確認されている
VEXAS syndrome 25例 (N Engl J Med 2020;383:2628-38.)
・X染色体上の遺伝子変異であり, 男性が100%
・発症年齢は64歳[45-80]
・症状は発熱, 皮疹, 肺病変, 耳・鼻の軟骨炎 静脈血栓症.
・血液障害では大球性貧血, 骨髄細胞の空胞変性の頻度が高い
・疾患としては, RP, Sweet症候群, MDS, MM/MGUS, PAN, GCAの基準を満たす患者が多い
VEXAS syndromeと診断された12例
(J Allergy Clin Immunol. 2021 May 25;S0091-6749(21)00819-8.)
・発症年齢 67歳[47-79]
・症状, 臓器障害は 発熱 100%,
皮膚症状 10/12, 肺病変 8/12, リンパ節腫大 7/12,
心臓・血管 6/12, 軟骨炎 6/12,
関節 4/12, 神経 4/12, 泌尿生殖器 4/12,
消化管 3/12, 眼 3/12, 腎臓 2/12
・発熱+大球性貧血を認める例が大半
・骨髄所見は大半が異形性, 空包変性を認めるが, MDSの基準を満たすのは4例 血球貪食の所見は2例で認められた
横浜市立大学からの報告.
(Ann Rheum Dis. 2021 Mar 31;annrheumdis-2021-220089. doi: 10.1136/annrheumdis-2021-220089.)
・RP 13例(男性11例, 女性2例)の末梢血, 骨髄組織由来のゲノムDNAを用いてUBA1遺伝子変異を評価した報告
・男性例11例中, 8例でUBA1遺伝子変異を認めた.
UBA1遺伝子変異例では, MDS, 血管炎, 皮疹, 発熱などを伴い, 骨髄所見では空包変性が認められる例が多い
・また, 女性例1例の血液で低頻度のUBA1遺伝子の体細胞遺伝子変異が検出された
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新しく発見された中年〜高齢発症の自己炎症性疾患.
中高年男性, 血球減少(特に大球性貧血), 自己免疫を疑わせる兆候ではVEXASを考慮.