疼痛で体動ができない, という主訴で外来を受診した患者さん.
前額部の丘疹, 前頚部〜シャツの襟元までの丘疹
爪周囲紅斑, そして肘伸側の丘疹があり, これは皮膚筋炎だなぁ、という症例.
掌を見ると, 手掌指節関節屈側に丘疹を認めた. これは逆ゴットロン徴候! ということで, 抗MDA5抗体陽性DMを疑った.
後に評価したCTでは軽度のGGO, Consolidationを認め, ILD合併と判断, 早々に治療を開始した.
そういえばこの逆ゴットロン徴候って文献的にどうなんだろう?と思い調べてみた次第.
--------------------------
逆ゴットロン徴候: Inverse Gottron's sign/papule
・手掌側の指節関節, 手掌の襞に生じるGottron徴候様の皮疹.
丘疹や落屑を伴う角化病変となる.
・頻度は低いものの, 皮膚筋炎に対する特異性が高い所見と考えられ, 特に抗MDA5抗体陽性例での報告例が散見される (J Clin Rheumatol. 2016 Aug;22(5):274-5.)
抗MDA-5抗体陽性DMにおける粘膜皮膚所見の頻度のまとめ
(J Am Acad Dermatol 2018;78:776-85.)
・このまとめでは, 抗MDA-5抗体陽性DMにおけるPalmar papule(= Inverse Gottron's)の頻度は20-60%で認められる. 他に皮膚潰瘍の頻度も高い.
抗体と皮膚所見の関係
(Clin Rev Allergy Immunol. 2016 Dec;51(3):293-302.)
・毛髪や口腔内病変, 有痛性のInverse Gottron, 皮膚潰瘍は抗MDA-5抗体で目立つ.
・無痛性/非紅斑性のInverse Gottronは抗TIF1抗体で認められる
77例のDM症例の皮膚粘膜所見を解析(このうち10例で抗MDA5抗体陽性)
(J Am Acad Dermatol. 2011 July ; 65(1): 25–34.)
・手の腫脹や, 関節痛/炎, 皮膚潰瘍, 手掌の丘疹, 機械工の手は抗MDA5抗体陽性例で多い
・特に手掌の丘疹所見は非抗MDA5抗体陽性例では1例のみと特異的な可能性がある
・手掌の丘疹は圧痛を伴う例が多く, 組織的にはInterface dermatitisは少なく, 皮膚のムチンの増加と血管壁へのリンパ球浸潤が認められる. 一部で血栓閉塞もあり.
所見の例
手掌の丘疹(Inverse Gottron's)
他, 抗MDA-5抗体陽性例に関連する皮膚所見
(J Am Acad Dermatol 2018;78:776-85.)