DAPA-HF: NYHA II-IV, LVEF≤40%を満たす心不全患者を対象とし, Dapagliflozin 10mg vs Placeboに割付け比較したDB-RCT.
・患者は≥18歳, NYHA II-IV, LVEF≤40%を満たし, さらにNT-proBNP≥600pg/mL(12M以内のHF入院歴がある場合は≥400pg/mL, Af/AFが認められる場合は≥900pg/mL)を満たす.
・患者は通常のHF治療(デバイス, 薬剤)が行われ, 背景に2型DMがある場合は血糖降下薬は基本継続, 血糖に応じて調節.
SU剤やインスリン使用患者は基本減量を推奨(HbA1c<7%の場合)
・除外項目: SGLT2阻害薬による重大な副作用がある, 1型DM, 低血糖症状, sBP<95mmHg, eGFR<30mL/min/1.73m2
上記患者群を, Dapagliflozin 10mg/d vs Placeboに割付け, 心不全増悪, 死亡リスクを比較した.
・DKA発症した場合や妊娠した場合は5mg/dに減量して継続.
・脱水や低血圧, 腎機能の低下時は一時的な中断も可とした.
母集団
・対象は4744例. DM患者は42%. 新規にDMを診断されたのが3%
・両群のBMIは28 ± 6程度と肥満患者が多い.
・死亡以外で薬剤を中止されたのが其々249例, 258例
アウトカム
・24ヶ月のフォローにおいて,
心不全の増悪, 入院リスクは有意にDapagliflozin群で低下.
さらに心血管死亡リスクも有意に低下する.
全死亡リスクも低下.
・NT-proBNP値も有意に低下.
体重もDapagliflozinで低下する
サブ解析
・DMの有無や人種, 年齢別の評価でもアウトカムに影響はない
・NYHA IIの群の方がよりSGLT-2阻害薬の恩恵は大きいかもしれない
(2020/9/13 UpDate)
EMPEROR-Reduced: NYHA II-IV, EF≤40%の心不全症例 3730例を対象としたDB-RCT.
(N Engl J Med. 2020 Aug 29. doi: 10.1056/NEJMoa2022190.)
・通常の心不全治療に加えて, Empagliflozin 10mg/d vs Placebo群に割り付け, 心血管アウトカムを比較した
・より心血管イベント高リスク群を導入するため, EF >30%の患者群は過去12カ月以内の心不全による入院歴がある患者, またはNT-proBNP高値の患者に限定(EF 31-35%では≥1000pg/mL, 36-40%では≥2500pg/mL, ≤30%の群では≥600pg/mL, さらにAfがある場合はNT-proBNPカットオフは2倍とした)
母集団
・BMIは28前後.
・EF≤30%が7割を占める
アウトカム
・心不全による入院リスクは有意に低下: HR 0.69[0.59-0.81]
・心血管死亡リスクは有意差なし.
・eGFRの低下はEmpagliflozin群で緩徐となる
Sub解析
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DMの有無にかかわらず, SGLT-2阻害薬は心不全の予後を改善させる
利尿作用以外に, 心筋の代謝, イオントランスポーター, 線維化, Adipokine, 血管への作用が指摘されている.
DAPA-HFに続いて, EMPEROR-Reducedが発表.
後者の論文では心血管死亡リスクは改善させなかった.
心不全増悪や入院リスクを改善させる結果は同じ.
Sub解析ではどの群もNYHA IIで恩恵が大きい様子. 後者ではさらにEF≤30%で恩恵が大きい可能性が示唆.
双方のStudyともやはり海外らしく肥満患者が多い.
ルーチンの使用ではなく, 適応を吟味して使用すべき薬剤と言えるかもしれない.