BelimumabはB-lymphocyte stimulator(BLyS)に対するモノクローナル抗体.
・SLEではB cell過活動, 自己抗体, BLySの上昇が認められ, BLySに対するBelimumabによる治療効果が期待されている.
・これまでSLE全体に対してのBelimumabの効果を評価したRCTが複数発表されており, SELENA-SLEDAIの低下効果や急性増悪リスクの低下, ステロイド投与量の減少効果が示されてきた.
・ただし, 重度のLupus腎炎やCNSループス症例は母集団から除外されており, 重症例での使用については不明確の状態(CNS, 腎臓, 肺, 心臓など).
(Lancet 2011; 377: 721–31)(ARTHRITIS & RHEUMATISM Vol. 63, No. 12, December 2011, pp 3918–3930)Ann Rheum Dis 2018;77:355–363.)
2017年のReview文献における, Belimumabの利点, 欠点のまとめ
(Ther Adv Musculoskelet Dis. 2017 Mar;9(3):75-85.)
今回, Lupus腎炎症例におけるBelimumabのPhase 3 trialが発表: BLISS-LN
(N Engl J Med 2020;383:1117-28.)
活動性のLupus腎炎で通常の治療(MMF, CY+AZA)に加えて, Belimumab 10mg/kg投与群 vs Placebo群に割り付け, 104wk継続. *Renal response, Complete renal responseを評価した報告
*Renal responseは尿蛋白/Cr比≤0.7, eGFRの増悪が20%以下または≥60mL/min/1.73m2, rescue治療使用なしで定義
*Complete Renal responseは尿蛋白/Cr比≤0.5, eGFRの増悪が10%以下または≥90mL/min/1.73m2, rescue治療使用なしで定義
・患者は18歳以上, ANA/dsDNA抗体陽性で, 1982年のACR分類基準を満たす群. さらにスクリーニングにおいて, 尿蛋白/Cr比≥1, 腎生検で6ヶ月以内にLupus腎炎と診断された患者(III, IV, V)を対象.
・寛解導入療法はランダム化の60日以内に施行されている
・除外基準: 1年以内の維持透析, eGFR<30mL/min/1.73m2, 以前にMMF, CY双方による寛解導入を失敗している, 3ヶ月以内にCYによる寛解導入療法を施行されている, 1年以内にB細胞標的療法(Belimumab含む)を施行されている群
・Belimumabは10mg/kg 経静脈投与を, Day 1, 15, 29, 以後28日毎に100wk継続する.
・寛解導入療法はDay 1以前60日以内に施行されており, CY 500mg q2wkを6回もしくはMMF 目標3g/dで行う.
・寛解維持療法はCY-AZAでは, CYの最終投与後2wkからAZA 2mg/kg/dを開始し, MMFでは1-3g/dを, 双方ともStudy終了まで継続
・治療医の判断で寛解導入時にmPSLパルス, その後PSL 0.5-1.0mg/kg/dは投与可能
・ACEまたはARB, HCQ投与は推奨される.
母集団 アジア人が半数を占める
アウトカム
・104wkにおけるRenal responseは43% vs 32%. OR 1.6[1.0-2.3], NNT 9と有意にBelimumabで良好.
・52wkにおいても, 同様にNNT 9でBelimumabで良好となる.
・Complete renal responseは30% vs 20%. OR 1.7[1.1-2.7], NNT 10
・8wkから差が認められ始めている.
・死亡リスクや, ESKDリスクは同等だが, 蛋白尿の増悪, 腎機能低下リスクは有意に低下する.
副作用リスク
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ループス腎炎に対するBelimumabは有意にRenal response, CRRを改善させる.
そもそも20-30%でしかRenal response, CRRを達成できない状況で, +10%は大きい.
腎炎の有効な治療法の一つとなる