一部の患者で腸内に常在しており, 腸内細菌叢の変化に伴いトキシン産生株が増加し, 腸炎を発症する.
入院患者や施設入所者ではどの程度C. difficileが常在しているか?
入院患者における無症候性キャリアの割合
2010-2011年にBarnes-Jewish Hospitalに入院した, 下痢を認めない患者 259例で, 便培養, Toxinをチェック.
・78.8%[73.4-83.3]がCD陰性,
15.4%[11.6-20.3]がToxigenic CD陽性 (無症候性キャリア)
5.8%[3.5-9.3]がNontoxigenic CD陽性であった.
・無症候性キャリア vs CD陰性群の比較では, 年齢, 入院理由, CDIの既往濃霧, 施設入所の有無すべて有意差無し.
・無症候性キャリア 40例中1例のみその後CDIと診断された
(Clinical Infectious Diseases 2014;59(2):216–22)
149例の入院患者の評価では, トキシン産生株の無症候性キャリアは12%で認めた.
・無症候性キャリアの皮膚や周辺環境の汚染率は17%と症候性CDI患者と比較して有意に低い(83%)が, リスクはある.
(Journal of Hospital Infection 85 (2013) 155-158 )
カナダのケベック州における新規入院患者5232例の評価
・入院時の評価において, 無症候性のキャリアは4.05%で認められた.
・無症候性キャリアのリスク因子は,
12ヶ月以内の入院歴, ステロイド使用中, CDIの既往歴, トキシンBに対する抗体陽性例
(American Journal of Infection Control 43 (2015) 248-53)
2015年のReviewによるまとめでは,
・入院時におけるCD陽性率は7-14%, 無症候性キャリアは4-10%程度
・入院中にCD陽性となるのは6-21%, 無症候性キャリアは3-14%程度
(Infect Dis Clin N Am 29 (2015) 13–28)
長期施設入所者における無症候性キャリアの割合
長期施設入所者におけるトキシン産生株キャリアを9 trialsのMeta-analysisにて評価
・無症候キャリアのリスクは14.8%[7.6-24.0].
・以前にアウトブレイク歴がある施設ではリスクが高い(30.1% vs 6.5%)
・キャリアのリスク因子は
CDIの既往 OR 6.07[2.06-17.88]
入院歴あり OR 2.11[1.08-4.13]
抗生剤使用歴 OR 3.68[2.04-6.62]
(PLoS One. 2015 Feb 23;10(2):e0117195.)
無症候性キャリアでも周囲環境や皮膚への汚染リスクはある
CDI症例と無症候性キャリア患者における皮膚, 周囲環境への汚染率
・無症候性でもCDI患者と同等の汚染リスクはある.
(Infect Dis Clin N Am 29 (2015) 13–28)
CDI感染 >> 治療 >> 無症候性キャリアへの流れ
(Infect Dis Clin N Am 29 (2015) 13–28)
・CDIは菌量と毒素の量により発症するため, 治療で菌量, 毒素量が低下すればそれで治癒という判断となる. 除菌したわけでは無い.
・CDIの治療後, 約半数が無症候性キャリアへ移行する
・その後長期間かけて菌が消滅することもある.
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・入院患者の10%程度はCDキャリアの可能性がある.
・そしてその患者群の皮膚や周囲環境の汚染リスクは症候性CDIと同じくらいかも.
・CDI治療というのは菌量を減らすことであり, 除菌では無い.
治療後も無症候性キャリアのリスクが高く, 周囲の汚染リスクはあると考えるべき
ということを意識すると, ちょっとは手洗いの励行になりませんかね。