外傷後頭痛 post-traumatic headache
(Handb Clin Neurol. 2015;128:567-78.)
頭部外傷, 軽度の脳挫傷後に出現する頭痛で, 脳振盪後症候群の1症状
・脳振盪後症候群は頭部外傷後に集中力の低下や悪心嘔吐, めまい, 抑うつ気分などが持続する病態. 頭痛も症状としてあり, 最も長く持続する症状が頭痛と言われている.
・外傷性脳損傷後の57.8%[55.5-60.2]に慢性頭痛を伴う
軽症頭部外傷で75.3%[72.7-77.9],
中等症, 重症頭部外傷で32.1%[29.3-34.9]で頭痛を合併する報告もあり (JAMA 2008;300:711-9)
・様々な報告をまとめると, 外傷後頭痛は軽症頭部外傷の30-90%, 中等症〜重症頭部外傷の33%程度で合併する.
軽症頭部外傷: GCS 13-15で, 意識障害が30分未満, 脳振盪の症状がある
重症頭部外傷: GCS <13, 意識障害が30分以上, 48時間以上持続する健忘, 画像所見で以上を認める患者群と定義される.
・軽症頭部外傷の方が合併リスクが高い.
外傷後頭痛の定義では頭部外傷後7日以内に生じる頭痛と定義されている
・さらに 3ヶ月程度で改善する急性経過, 3ヶ月以上持続する慢性経過に分類される.
・しかしながら軽症の頭部外傷の小児例を前向きにフォローした研究では, 外傷後頭痛は14%で認められ, 受傷〜発症までは15.8日±11.6であった.
3ヶ月以上持続した慢性経過症例はその半数の8%程度. (Dev Med Child Neurol. 2013 Jul;55(7):636-41.)
外傷後頭痛の機序は未だはっきりしていない
・頸部へのダメージによる神経の炎症
・外傷に伴う部分的な過敏症
・PTSDに伴う精神的な疼痛 など予測されている.
(J Man Manip Ther. 2014 Feb;22(1):36-44.)
外傷後頭痛のタイプ
・外傷後頭痛は片頭痛様や緊張性頭痛様, 群発頭痛様, 頸性頭痛様と様々な一次頭痛の様相をとる.
(J Man Manip Ther. 2014 Feb;22(1):36-44.)
・頭痛の部位は側頭部, 前頭部, 頸部で特に多い (慢性経過例)
(J Man Manip Ther. 2014 Feb;22(1):36-44.)
外傷後頭痛の治療
・頭痛の急性期治療はタイプに応じて決める
緊張性や片頭痛タイプではNSAID.
片頭痛タイプはトリプタン製剤やメトクロプラミドも試される.
(Handb Clin Neurol. 2015;128:567-78.)
・薬剤誘発性頭痛を避けるために, NSAIDやトリプタン製剤の頻用は避ける.
(Dev Med Child Neurol. 2013 Jul;55(7):636-41.)
・脳振盪後症候群が3ヶ月以上持続すれば, 軽度の運動療法が推奨
・頭痛の予防治療は患者の状態に合わせて考慮
・不眠があればメラトニンやアミトリプチリンを試す
メラトニンは3mgより開始し, 最大10mgまで増量
アミトリプチリンは5mgより開始し, 1mg/kgまで増量
・肥満があり, 脳挫傷による認知障害があればトピラマート
・片頭痛タイプならばバルプロ酸やガバペンチンなど片頭痛の予防薬を試す.
・薬剤は頭痛が改善してから3ヶ月間は継続しその後徐々に減量