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2014年9月5日金曜日

腸重積 小児と成人例 Intussusception

腸重積 Intussusception
American Journal of Emergency Medicine (2012) 30, 426431

典型例は小児における腹痛, 胆汁性嘔吐, イチゴゼリー状便.
 好発年齢は2mo-6yr, 特に5-12moで多い疾患.
 90%が小児例であり, 成人例は僅か5-10%のみとされている.
0-36moの腸重積例のRetrospective study.
 腸重積疑いで画像検査された201名中, 124名が腸重積(+)
腸重積を示唆する所見として, 嘔吐, 腹痛, 鮮血便がある
腸重積の症状頻度(過去の症例データを含む頻度)
 潜血便を伴う腸重積は症状出現から平均24hr経過している.
 一方, 潜血便(-)群では発症から平均11hrと短い.
 発症短時間では潜血便陰性例が多いと言える.

腸重積に対する所見, 検査の感度, 特異度
 特異性が高い所見はRUQの腫瘤. 感度が高い所見は血便.
 診断にはエコーが感度, 特異度共に優秀と言える.

小児の回腸〜結腸腸重積例におけるエコーの感度, 特異度はこちらを参照

成人の腸重積 Postgrad Med J 2005;81:174-77

 成人の腸重積は稀; 2-3/1,000,000/year
 成人入院の0.1%
 60-70%が腫瘍に合併する
 腫瘍性の内, 70%が悪性腫瘍
(Am J Surg 1976;131:758-61)
 小腸重積の場合, 57%が腫瘍性, 内30%が悪性腫瘍, とやや低く転移性腫瘍が多い
 大腸, 肛門重積の50%に悪性腫瘍を合併, 残りは良性腫瘍

腸重積のタイプと頻度 J Am Coll Surg 1999;188:390-5
 Enteroenteric ⇒ Jejunojejunal, ileoilealなど
 Colocolic ⇒ Colocolic, Sigmoidorectal
 Enterocolic
⇒ Ileocolic type; ileocecal Valveを脱出し, 上行結腸内へ. 盲腸, Valveは元の位置のまま
⇒ Ileocecal type; ileocecal Valve, もしくは盲腸内へ重積する
タイプ別の頻度は
 Enteroenteric 39%
 Ileocolic 13%
 Ileocecal 17%
 Colocolic 17%
 Appendicocecal 4%
 胃, 十二指腸 6%
 ストーマ 4%

非腫瘍性腸重積 Postgrad Med J 2005;81:174-77, Radiol Clin N Am 2003;41:1137-51
 Idiopathicは小腸性で16%, 大腸性で5%
 Colonic Intussusceptionの30%は非腫瘍性腸重積
  術後癒着, Meckel憩室が2大原因
  他は大腸, 虫垂の炎症, リンパ節腫脹, 術後腸管吻合が原因となる
 非腫瘍性小腸重積はやや稀な病態
  リンパ節腫脹, Scleroderma, Cystic fibrosis, Celiac disease, Henoch-Schonlein purpura, Ilieal duplicaiton, 腹部外傷, 膵炎が原因となる.

AIDS関連の腸重積の報告が増えてきている
 リンパ腫, Kaposi肉腫, リンパ腫大, CMV腸炎, カンピロ腸炎など
熱帯では, 腸重積の2/3が非腫瘍性 ⇒ 下痢, 腸炎由来が多い
クローン病由来の腸重積では一過性の場合が多い

臨床症状 Postgrad Med J 2005;81:174-77
 腹痛が最も多く 71-90%
 下血, 嘔吐は次に多い
 腹部腫瘤は24-42%で認める

 発症~診断までの平均期間は37.4D(1-365D)
 悪性腫瘍由来, 大腸重積のほうが期間は短い傾向にある

CT所見の評価 AJR Am J Roentgenol 2001;176:1167-71
CT所見によるStage分類(Plane CT)
 ① 重積した腸管壁のLow density像 (Edema) 
 ② 重積部位の内腔 Fluid貯留
 ③ 重積部位より口側のAir貯留 (Obstruction)

Stage 1; 上記①~③を認めない ⇒ 血流障害はほぼ無し
Stage 2; ①のみ認める ⇒ 腸管浮腫はあるが, 外科切除が必要なほど重症でもない
Stage 3; ①+②を認める ⇒ 虚血の可能性あり, 外科切除必要の可能性
Stage 4; ①~③全て認める ⇒ 腸管壊死の可能性

腫瘍性腸重積を示唆する所見として, 造影CTが有用
Neoplastic vs Non-neoplastic
 長軸; 10.8cm vs 4cm
 径; 4cm  vs 3cm
 腸閉塞(+) 50% vs 4.3%

大きくて閉塞が強い物は腫瘍性の可能性が高いと言える

治療
 小児と違い, 成人例で症状持続する場合は手術適応
 器質的異常を伴うことが多く, 悪性腫瘍の可能性もあるため (特に大腸) 術前に高圧浣腸, Airでの整復は推奨されない 
 ⇒ 術前の整復は切除域の縮小という利点はあるが感染, 穿孔, 腫瘍による静脈塞栓のRiskがある
 ⇒ 腫瘍性腸重積でないのならば整復を考慮して良い

成人例と小児例の違い Postgrad Med J 2005;81:174-77

小児
成人
全体で占める割合
95%
5%
腸管閉塞合併
多い
(<5%)
原因
90% 特発性
50%
Peyer板の腫大を認める
70-90%
原因が明らか
臨床症状*
良く認められる
15-20%程度
治療
非外科治療が主
外科治療が主

1999-2008年にMaine Medical CenterのERを受診した, 腸重積例のRetrospective study.
American Journal of Emergency Medicine (2011) 29, 523527
 0-6yr(T), 6-18yr(N), >18yr(A)の3群に分類し, 比較.
 95例の腸重積が診断. >>(T) 61例(64%),(N) 12例(13%),(A) 22(23%).

全体
0-6yr (64%)
6-18yr (13%)
>18yr (23%)
年齢

1.7y[0.2-5.9]
12.6y[8.8-17]
48y[21-91]
腹痛
79%
74%
92%
86%
中等度〜重度腹痛
71%
72%
83%
59%
嘔吐
62%
61%
91%
52%
血便

16%
0%
4%
 腹痛の80%が間欠性の腹痛.
 下痢は25%で特に3群で有意差無し.

重積の部位

全体
0-6yr (64%)
6-18yr (13%)
>18yr (23%)
Ileocolic
72%
93%
50%
27%
Small bowel
16%
0
33%
50%
Large bowel
12%
7%
17%
23%

重積の原因

全体
0-6yr (64%)
6-18yr (13%)
>18yr (23%)
Adenitis
16%
20%
8%
5%
Meckel憩室
8%
8%
26%
0
Peutz-Jeghers polyp
7%
2%
50%
0
悪性腫瘍
8%
0
8%
32%
非特異的炎症
48%
68%
8%
13%
その他
13%
2%
0
50%