Otolaryngologic clinics of North America 2010;43:441-53
J Clin Endocrinol Metab 2001;86:485-93
J Clin Endocrinol Metab 2001;86:485-93
稀な内分泌系の悪性腫瘍.
緩徐に進行する経過をとり, 隣接したリンパ節(30%), 肺(40%)への転移が多い.
少ないが, 肝転移(10%), 骨転移の報告もある.
少ないが, 肝転移(10%), 骨転移の報告もある.
腫瘍の大半が機能性, PTHを産生し, 血清Caは高値を示す.
非機能性の場合はMass effectによる症状が主であり, 発見時には進行しており, 手遅れな場合が多い.
非機能性の場合はMass effectによる症状が主であり, 発見時には進行しており, 手遅れな場合が多い.
Parathyroid Carcinomaは, PHPTの<1%を占める.
日本, 西欧諸国からは報告例が多く, 5%を占める.
最も頻度が少ない内分泌系の悪性腫瘍. 全悪性腫瘍中0.005%.
USでは年間30例の発症報告しかない.
男女差は無く, 後発年齢は40〜50中盤. PHPTよりも10yr程度若い.
USでは年間30例の発症報告しかない.
男女差は無く, 後発年齢は40〜50中盤. PHPTよりも10yr程度若い.
HPT-JT(Hyperparathyroidism-jaw tumor), MEN-1,2A, FHHに随伴するものも.
PHPT vs Carcinoma
プレゼンテーションは類似しており, よく間違えられる.
|
Carcinoma |
PHPT |
発症年齢, 男女比 |
48yr, 1:1 |
55yr, 3.5:1 |
無症候性 |
<5% |
>80% |
触知可能な頸部腫瘤 |
30-76% |
1% |
血清Ca値 |
>14mg/dL, +3-4mg/dL |
ULN+1-2mg/dL |
PTH |
2-10倍 |
2倍程度 |
ALP |
高値となりやすい |
|
腎病変(結石, 石灰化, GFR低下) |
結石32%, 腎不全84% |
<20% |
レントゲンでの骨病変 |
44-91% |
10% |
また, Carcinomaでは膵炎, 消化性潰瘍, 貧血, 他臓器障害合併頻度も高い.
上記特徴はCarcinomaに特異的とは言えず, 結局診断は組織となる.
術前の予測因子として上記特徴を押さえるのは重要.
術前の予測因子として上記特徴を押さえるのは重要.
*骨病変; Osteitis fibrosa cystica, lamina dura消失, Diffuse spinal osteopenia
Subperiosteal bone resorption, salt-and-pepper skull.
Subperiosteal bone resorption, salt-and-pepper skull.
副腎癌の68%がPTH >5ULNを満たす.
Caは10-25mg/dLと幅広いが, 著明高値も来し得る. World J. Surg. 15, 738-744, 1991
Caは10-25mg/dLと幅広いが, 著明高値も来し得る. World J. Surg. 15, 738-744, 1991
41名の副甲状腺癌のRetrospective study
原発性副甲状腺腺腫との比較 The American Journal of Surgery (2011) 202, 590–597
副甲状腺癌ではよりPTH, Ca値が有意に高値となる.
血清Ca値とPTH値. 副甲状腺癌に対する感度, 特異度.
癌 or 腺腫の判別は手術所見でのみ可能であり, Ca値, PTH値が異常高値の場合はその可能性があることを念頭において手術に望む必要がある.
副甲状腺癌 70例の解析 Cancer 1973;3:600-4
40年間でParathyroid Carcinoma 70例
平均年齢は44.3yr[13-84], 男女差無し.
初診時の症状, 所見では, 骨病変が62%と最多.
頸部腫瘤触知が31%, 尿路結石が30%, 腎実質障害が21%. 膵炎10%, 脱力 8%, 消化性潰瘍 8%, 悪心,嘔吐 5%.
頸部腫瘤触知が31%, 尿路結石が30%, 腎実質障害が21%. 膵炎10%, 脱力 8%, 消化性潰瘍 8%, 悪心,嘔吐 5%.
初期の血清Ca濃度は15.2mg/dL.
62%が>14mg/dLを満たし, <13mg/dLなのは22%のみ.
62%が>14mg/dLを満たし, <13mg/dLなのは22%のみ.
腫瘤の大きさは平均3.3cm[1.3-6.2], 重量は12.0g[0.8-42.4]
5年間で30%が遠隔転移; リンパ節(9/18), 肺(7/18), 肝(5/18), 骨(5/18), その他
副甲状腺癌の手術所見 Otolaryngologic clinics of North America 2010;43:441-53
悪性腫瘍の術中所見は様々であるが, PHPTとは明らかに異なる.
AdenomaならばRed/brown, 柔らかく, 周辺組織との癒着は少ない.
一方Carcinomaでは固く, 分葉した線維性組織病変. 色は黒色〜灰色.
周辺組織(甲状腺, 筋組織, 反回神経)への癒着も強い.
一方Carcinomaでは固く, 分葉した線維性組織病変. 色は黒色〜灰色.
周辺組織(甲状腺, 筋組織, 反回神経)への癒着も強い.
組織所見
Pathologic |
Morphologic |
線維性被膜, 小柱を認める |
小柱状の発育パターン |
小柱, ロゼッタ状の細胞構造 |
線維組織の肥厚 |
細胞分裂像を認める |
腫瘍の骨格筋浸潤を認める |
被膜, 血管浸潤を認める |
血管に触れている腫瘍から血管内への浸潤あり |
|
被膜への突出する様な浸潤パターン |
組織所見だけでは判断は困難であり, 形態的な所見も重要.
被膜への浸潤は92%, 血管浸潤は81%で認められる所見
神経周囲への浸潤は19%.
最も感度の高い所見は線維組織の肥厚.
小柱状増生, 被膜浸潤, 血管浸潤も高感度.
小柱状増生, 被膜浸潤, 血管浸潤も高感度.
腫瘍の大きさは予後に関係しない.
現時点ではStage分類や基準は未だなし.
現時点ではStage分類や基準は未だなし.
免疫染色もCarcinomaでより陽性となる
Ki-67染色は27% vs 2%,
Retinoblastoma(Rb) protein染色はCarcinomaの殆ど全てで陽性となる.
Retinoblastoma(Rb) protein染色はCarcinomaの殆ど全てで陽性となる.
Phenotype |
PHPT |
Carcinoma |
p27(+) bcl-2(-) Ki-67(-) mdm2(+) |
76% |
0% |
p27(+) bcl-2(-) Ki-67(+) mdm2(-) |
0 |
9% |
p27(-) bcl-2(-) Ki-67(-) mdm2(-) |
0 |
27% |
p27(-) bcl-2(+) Ki-67(+) mdm2(-) |
0 |
18% |
遺伝子異常
様々な遺伝子異常との関連が示唆.
特にHRPT2 mutationは15-100%に認められるとの報告あり.
特にHRPT2 mutationは15-100%に認められるとの報告あり.
画像所見
Technetium-99m, 201ThaliumはPHPT, Carcinoma双方に集積する.
Tc99 sestamibiシンチはSn84.4%, Sp95.9%で部位診断に有効.
Tc99 sestamibiシンチはSn84.4%, Sp95.9%で部位診断に有効.
エコー状, Length/width比 >1はCarcinomaの94%で認められる所見. Adenomaでは5%のみであり, 鑑別に有効かもしれない.
また, エコーにて分葉した像, 不均一な像はCarcinomaを示唆する.
治療とアウトカム
治療は外科切除が一般的
可能であれば部分切除とし, 血清Ca, iPTH値で再発をフォローする.
PTHは3mo毎のフォローが推奨.
PTHは3mo毎のフォローが推奨.
腫瘍切除 + 周辺組織の切除を行えば治癒する可能性も高く, 術前に “悪性腫瘍ではないか?” との疑いをもって手術に臨むのが大事.
頸部リンパ節転移は14-17%で認められ, リンパ節郭清も重要である.
頸部リンパ節転移は14-17%で認められ, リンパ節郭清も重要である.
放射線療法の効果は低く, 通常行わない.
化学療法もNが少なく, Regimenも不明, 有効性がはっきりしない.
化学療法もNが少なく, Regimenも不明, 有効性がはっきりしない.
術後の再発は33-78%と多い
術後から再発までの期間は様々で, 1mo-20yrと幅広い. 2-5yrが最も多い.
5年生存率はは20-90%, 10年生存率は42-86%とこれも様々な結果.
再手術ではシンチによる部位同定を行うことが勧められる.
術中のPTH評価は手術の成功を予測する因子となる
術後1hrで, PTH<15pg/mLならば, 手術成功を強く示唆する (PHPTの場合) J Am Coll Surg 2010;211:49–54
PTHの血中半減期は20分であり, 副甲状腺癌でPTHが異常高値であっても, 術後早期での評価は手術の成功 or NOTを推定するのに有効と言える.
術後管理; Hungry Bone Syndrome Current Opinion in Otolaryngology & Head and Neck Surgery 2004, 12:93–97
高値であったPTHが正常化することで, 骨からのCa放出が低下, 逆に骨へのCa吸収が亢進し, 低Ca血症を来す.
甲状腺術後, 副甲状腺腺腫, 癌切除後, 二次性副甲状腺機能亢進症術後全てで生じ得る病態.
低Caだけでなく, 低P, Mg, Kも合併し得る.
術後2-4dでNadirとなることが多い.
PHPTの術後では13%で術後低Ca血症 or 低P血症を認め, Secondary HPTの術後では約20%で低Caを認めた (UpToDate)
Caの補正とVit D投与が必須.
Ca濃度が下がらない場合, 腫瘍の残存の可能性があるため, 注意.
Hungry Bone Syndromeの予防
術前からのVit D製剤, Ca製剤投与は術後の低Caの程度を軽くする
術前3-5日前からのCalcitriol 2µg/d投与は骨リモデリングを抑制し, 腸管Ca吸収を亢進するため, 術後の低Ca予防効果あり.
術前2日前からの経口Ca 2-3g/d投与も併用する.
術前BisphosphonateもCase Reportレベルで予防効果が認められているが, Evidenceは確立されていない.
また低Caとなる危険性もあり, 一般的に勧められるものではまだない.
術後のCa補正
腎不全に伴う二次性副甲状腺機能亢進症で副甲状腺切除した36名の解析
Ann Acad Med Singapore 2009;38:1074-80
低Ca血症となるタイミングは術後2日目がピーク.
25%が一過性で, 11%が持続性の低Ca血症を示した.
25%が一過性で, 11%が持続性の低Ca血症を示した.
IV Ca治療Regimen ; 10%グルコン酸Caを使用.
Ca<2mmol/Lで4.5mL/hより開始. Caが低下し続ければ6.5~9mL/hrに増量.
Caは6hr毎に測定するが, 投与速度が速い場合は4hr毎.
Ca<2mmol/Lで4.5mL/hより開始. Caが低下し続ければ6.5~9mL/hrに増量.
Caは6hr毎に測定するが, 投与速度が速い場合は4hr毎.
術後4日目でも低Caとならなければモニタリングは中止可能.
術後6日以降も低Caが遷延した場合は, 一旦補正を中止し, 24hrモニタリング.
術後6日以降も低Caが遷延した場合は, 一旦補正を中止し, 24hrモニタリング.
術後は2-4回/dの頻度でCa濃度をフォローする
経口摂取が可能となればすぐに2-4g/dのCa内服を開始.
空腹時投与を行い, なるべく吸収率を上げるように投与.
空腹時投与を行い, なるべく吸収率を上げるように投与.
術前, 術後のVit D製剤投与も推奨される(Calcitriol 4µg/d)
急速なCa低下, 低Ca症状が出現するようならばDIV治療を.
血清Ca<7.5mg/dLとなるようならばDIV治療を選択する.
有症状時はCaのSlow IVを行う; グルコン酸Ca 1-2A (78.5-157mg)を5%TZ 50mlに溶解し, 10-20minでDIV.
持続注射では, 血清Caを正常下限に維持する様に投与.
Ca量 0.5-1.5mg/kg/hrとなることが多い.
8.5%グルコン酸Ca 7A(550mg)を5%TZ 500mlに溶解(0.96mg/ml). 40ml/hr(38.4mg/hr)より開始し, 調節する.
塩化Ca 20mEq注(20mlで400mgのCaを含有)で作成しても良い.
Ca量 0.5-1.5mg/kg/hrとなることが多い.
8.5%グルコン酸Ca 7A(550mg)を5%TZ 500mlに溶解(0.96mg/ml). 40ml/hr(38.4mg/hr)より開始し, 調節する.
塩化Ca 20mEq注(20mlで400mgのCaを含有)で作成しても良い.
例; Wt 60kgの患者. 副甲状腺切除後のCa補正量を計算
目標投与速度は30mg-90mg/hr.
グルコン酸Ca 7A + 5%TZ 500mlを使用すると, 時間30-90ml/hrで持続投与
塩化Ca 20mEq注を使用すると(1A=20mL=400mg),
1A + 5%TZ 500mlで400mg/520mL = 0.77mg/mL.
グルコン酸Caメニューの1.3倍量投与にて同程度のCa量補正となり, 40-120ml/hr投与で補正する方法もあり.(後者の方が簡便).
1A + 5%TZ 500mlで400mg/520mL = 0.77mg/mL.
グルコン酸Caメニューの1.3倍量投与にて同程度のCa量補正となり, 40-120ml/hr投与で補正する方法もあり.(後者の方が簡便).
術後のP, Mg, K補正
術後のMg, P, Kのフォローも同時に行うべき
低Mgは低Caを助長し, 治療反応性を低下させるため, 早期に補正すべき.
しかしながら, 低Pの補正は避ける必要がある
Hungry bone syndromeでは低Pの補正は避ける.
Pの投与はCaと結合し, さらに血清Caを低下させる危険性があるため, 重度の低P血症(<1mg/dL)で無い限り, Pの補正は術後急性期では避ける.
低Kはすぐに補正すべき.
PHPT患者で副甲状腺切除された6000名 J Am Coll Surg 2010;211:49–54
術後2.5hr以内に退院し, 主に外来フォローとなっている患者を, プロトコールに則りCa製剤を内服投与.
|
術前平均Ca濃度 |
術日のDose |
術後1wk |
術後2wk |
維持量 |
Adenoma |
10.0-11.9mg/dL |
4 |
4 |
3 |
2 |
|
12.0-12.5 |
5 |
6 |
4 |
2 |
|
12.6-13.0 |
6 |
7 |
4 |
2 |
|
13.1-14.0 |
7 |
8 |
5 |
3 |
|
>14 |
8 |
10 |
6 |
3 |
Hyperplasia |
10.0-11.9 |
4 |
5-6 |
4 |
2 |
Norman Postoperative Ca Protocol
1錠あたり, Ca citrate 315mg, Vit D-3 200U含有
1錠あたり, Ca citrate 315mg, Vit D-3 200U含有
低Ca症状を来したのは7.7%であり, ER受診し, IV Caを必要としたのは0.1%のみ.
Ca補正はNorman Postoperative Ca Protocolを使用.
術前平均Ca濃度は術前1-3moのCa濃度を使用.
初回Doseは術後3hr以内に内服.
術前平均Ca濃度は術前1-3moのCa濃度を使用.
初回Doseは術後3hr以内に内服.
低Caの症状としては,
手のしびれ感 |
81% |
口周囲のヒリヒリ感 |
39% |
意識混濁 |
35% |
手のこむら返り |
4.1% |
術前平均Caが高値なほど低Caのリスクが高い.
|
術前 平均Ca濃度 |
術後 低Ca症状 |
術後 〜症状出現 |
IV Caを 必要とした例 |
Adenoma |
10.0-11.9mg/dL |
2% |
3d |
0 |
|
12.0-12.5 |
12% |
3d |
0 |
|
12.6-13.0 |
21% |
2-3d |
0 |
|
13.1-14.0 |
31% |
1-2d |
0 |
|
>14 |
35% |
2-3d |
5% |
Hyperplasia |
10.0-11.9 |
16% |
2-3d |
3.5% |
術前のCa濃度, Adenoma or Hyperplasia, 腺腫の数, 切除した副甲状腺の数は術後低Ca発症リスクに関連性あり
骨密度 T score <-3, 肥満も低Caのリスクファクターとなり, 上記を認める場合は補正量を多く設定する.
術前のPTH値は術後のCa補正量に関係しない.